夏の関西名物「冷やしあめ」の味わい
注文するとお爺ちゃんがこうやって柄杓にすくって入れてくれる。その場で一気に飲み干そう。
駄菓子屋や小さな商店に「冷やしあめ、あります」という文字がかかり始めると、関西の人間は「ああ、もう夏やなあ」と思う。
「冷やしあめ」とは麦芽飴にショウガを加え水で溶いた、レトロな味わいの飲み物のことだ。

飲んだ瞬間は甘く、飲むとショウガの風味だけが口に残る。
夏になるとあちらこちらの店先で販売が始まり、四角い冷蔵の機械で冷やされる琥珀色の液体が何とも涼しげだ。
しかしこの「冷やしあめ」、なぜか関西地方でしか見かけない飲み物なのだとか。

販売しているお店の人にその理由を伺ったところ「関西は蒸し暑いから、ショウガでサッパリするんちがうかなあ」と何とも要点を得ない答えが返ってきた。
さらに「ものすごく美味しい飲み物でもないが、夏になるとつい買ってしまう人が多い」とのこと。確かにお値段も100円前後とお手軽だし、暑い日にはついつい買ってしまうことも多い。


ちなみに関西の夏向けドリンクは「冷やしあめ」だけではない。
「冷えたもんあります」の看板がかかった駄菓子屋で、人気の冷たい飲み物を聞いてみると、「冷やしコーヒーに冷たいミルクセーキに冷やしあめ」という答えが返ってきた。
ちなみにこの「冷やしコーヒー」とは、コーヒー味のコッテリ甘い飲み物の事で、関西人が「レイコー」と呼ぶアイスコーヒーとは少し違う。
コーヒーの元は冷蔵庫に半分凍った状態で保存してあり、注文すると柄杓でコップに注いで出してくれるのだ。
子供だけではなく会社員や主婦なども立ち寄って購入していくということで、「冷たく甘い」飲み物は関西の夏の定番となっているらしい。

ところが小さな駄菓子屋では後を継ぐ人がおらず、お店を畳んでしまう事も多い。

今回話を伺ったお店も店主が88歳を迎えるということで、「来年の夏には店じまいやなあ」と寂しそうに語っていた。もし店がどんどんと閉まってしまうと、夏にこの味を楽しめなくなってしまう。
「冷えたもん」の味を守るためにも、お店の方にはぜひ頑張っていただきたいと願うばかりである。
(のなかなおみ)