虫を食べる植物が群生している場所へ
こんなにのどかな風景なのに…。
子供のころ、図鑑を眺めていて、「虫を食べる植物がいる」ということに戦慄しました。
おとなしく物言わぬ草花が、実はひそかに牙を剥き、ハエやカを食べてしまうなんて。
しかも、まるで怪獣のような風貌で、口をぱっくり開けていたり、むき出しの胃袋のような形をして、そこに誘い込み、ゆっくりと溶かして食べてしまうとか……。
いや、でもきっとそれは、私のよく知らないジャングルとか、そんな遠いところに生息しているに違いない。

ところが。

私が住んでいる千葉県に「食虫植物群生地」がある、というではありませんか。
ちょっと怯えつつも、私は車を走らせて、そこに向かいました。

目印となる「成東駅」から案内に沿って細い路地を進みます。すると、ぱっと視界が開け、広々とした湿地が見えてきました。「成東・東金食虫植物群生地」と看板が立っています。どうやらここのようです。
ここは、大正九年とかなり早い時期に、国の天然記念物に指定されています。その理由は、「珍奇なる植物の所在地及び固有なる原野植物群」であるからだそうで。うひゃー「珍奇」だって。


おそるおそる通路に足を踏み入れます。しかし、見渡す限り、背が低く可愛らしい植物ばかり。中には可憐な花を咲かせているものもあります。なあんだ、怖くないじゃない。「ミミカキグサ」だって。なになに? 「湿地に生える多年草の食虫植物。地下茎が伸びていてまばらに虫を捕らえる袋がある」
……えっ、この草が食虫するの!?
花が咲いた後にガクが大きくなって、耳掻きのように見えることから名づけられたのだそうで。ほかにも、「コモウセンゴケ」や「ナガバノイシモチソウ」という葉の表面にたくさんの腺毛があり、ぺたぺたと粘液で虫をくっつけて食べるやつが、夏の今の時期には生息していました。確かに見たことないような、ぺとぺとしていそうな葉を持っていますが、小さく可愛い植物たち。そんな恐ろしげな感じではありませんでした。
ここには、まだまだほかの種類の食虫植物も生息していて、季節によってその姿を入れ替わりで見ることができます。

調べてみると、日本にも食虫植物が生息している地域というのはたくさんあるんですね。
そしてその種類もたくさんあり、虫の「食べ方」もそれぞれです。
今まで遠い存在だと思っていた食虫植物は実は身近にいたんです。

ぐるっと湿原を一回り。おっかないと思っていた食虫植物って案外可愛いんだなと思って帰ってきてみると、マムシに注意という看板が。
……さすがに、マムシは食べてはくれないのですね。って、当たり前だ。(谷和原のぞみ/お気楽ステーション)
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