「おとなの知らないベストセラー」に迫る
(上2枚)「若おかみは小学生」(写真は「PART 5」)……扉部分に着せ替えの付録が。いつの瞬間でも楽しんでもらいたい、ということから本によってはこういう付録もついているのだそうです。<br>(下2枚)「青い鳥文庫シリーズ」……表紙の絵やイラストは本によって漫画チックなもの、乙女チックなものもあったりとさまざま
先日、新聞を片付けていると「おとなの知らないベストセラーがたくさん」というキャッチがついた広告が目に入った。
それは株式会社講談社の児童向け図書「青い鳥文庫」の新刊の広告だった。

子どもが身近にいないとなかなか目にすることもない児童図書。
「パスワード忍びの里」「黒魔女さんが通る!!」といったタイトルが並ぶ中、ひときわ目を引いたのが「若おかみは小学生」というもの。
サブタイトルに“花の温泉ストーリー”とあるように、小学6年生の女の子が祖母の経営する温泉旅館で若おかみとして修行するというもの。「若おかみは小学生」……昔の児童書だったら絶対ありえないであろうこのタイトルにこのストーリー。でも、正直大人ながらこれには惹かれてしまいます。

それにしても「おとなの知らないベストセラー」とはよく言ったもの。確かに子どもが好んで読んでいる本というのは大人は知らない。身近に子どもがいなければなおさらだ。これは気になる、気になります。
ということで(株)講談社へ問い合わせをしてみることにした。

「青い鳥文庫の創刊は1980年で今年で27年目になります。もともとは名作児童文学のロングセラーを考えて、低価格で本を提供できるようにと文庫化したのが最初です。
クレヨン王国などファンタジーは創刊当時からありますが、『パスワードシリーズ』、『夢水清志郎(ゆめみずきよしろう)』シリーズなど書下ろしのミステリーが始まったのは1990年代の中ごろからです。今では新刊は8対2の割合で書き下ろしが多いですね」と児童図書第二出版部の高島さん。

確かに、昔の児童書は子どものお小遣いで買うにはちょっと高かった気がする。私は親が選んで買ってもらったものを読んだ記憶はあるが、読みたいなと思ったものを自分で買ったことはない。でも今の時代、500円台、600円台だったら子どものお小遣いで買えそうだ。
高島さんによると、青い鳥文庫は1980年の刊行以来、今までに約650タイトル出版され総数で約2800万部が売れているのだそう。
気になるベストセラーは
第3位 「名探偵夢水清志郎シリーズ」 13タイトル 約210万部
第2位 「パスワードシリーズ」 18タイトル 約260万部
第1位 「クレヨン王国シリーズ」 47タイトル 約500万部
となっている。
気になる「若おかみは小学生」だが、こちらは2003年4月に「PART 1」が出版され、2007年1月に「PART 9」が発売されたばかりだが何と4年弱で90万部を突破しているという。
「『若おかみは小学生』は今最も勢いがありますね。夏には『PART 10』が出る予定です」と高島さん。

実は私は(株)講談社に問い合わせをする前に図書館で青い鳥文庫を見てきたのだが「若おかみは小学生」などは2カ所の図書館で全て貸し出し中。ようやく1カ所で5巻一冊だけ借りることができた。
「黒魔女さんが通る!!」に至っては3カ所で全てが貸し出し中だった。実際、本当に子どもに人気のようだ。
またさらに、図書館で私好みのタイトルを発見。「お局さまは名探偵」「うつけ者は名探偵」とある。“お局さま”に“うつけ者”である。どちらもタイムスリップ探偵団なる子どもたちが歴史上の人物の生きている時代にタイムスリップする物語。
みなさんは“うつけ者”の意味するところわかりますか ?

「児童文学は時代の変化にも敏感です。青い鳥文庫の書き下ろしは、今生きている作家が生きている子どもたちを見て書いているというのが特徴です。名作にしても時代にあわせてそのメッセージやおもしろさが伝わりやすいように挿絵の衣装などにもこだわります」と高島さん。

さらに青い鳥文庫編集部では2000年からファンクラブを作り読者への情報発信や交流も行っている。現在会員は約3700人。昨年4月からはジュニア編集者を募り、発売前のゲラを読んで感想を書いてもらったり、誤字、脱字をチェックしてもらったり、さらには帯のキャッチコピーなどを考えてもらったりしているんだそうだ。

発売前の本のゲラが読める、誤字脱字のチェックなんてまるで本物の編集員のよう。本好きの子にとっては夢のような話じゃありませんか。
「子どもたちはかなりの読解力がありますよ。どう面白かったのかなどきちんと深く読んでの感想も多いです。これから『かつてジュニア編集員でした』という人たちが入社してくれるのを期待しています(笑)」と高島さん。

「今時の子どもは本を読まない」なんて言われているけれど、どうやらそんなことはないようです。
ちなみに、青い鳥文庫では書き下ろしシリーズの人気が高い一方で単品の作品では名作といわれる作品が人気で夏目漱石の「坊ちゃん」は30万部を売り上げているのだそうです。
(こや)

「(株)講談社 青い鳥文庫」HP
・エキサイトブックス検索
『若おかみは小学生シリーズ』
『クレヨン王国シリーズ』
『パスワードシリーズ』
『名探偵夢水清志郎シリーズ』
『黒魔女さんが通る!!シリーズ』
『お局さまは名探偵!―紫式部と清少納言とタイムスリップ探偵団』
『うつけ者は名探偵!―織田信長とタイムスリップ探偵団』
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