CDプレーヤーのリモコンの謎
CDプレーヤーのリモコン、「open/close」ボタンはなぜ付いているのか……
世の中、これはいらないんじゃないか、そう思うものに出会うことがある。
以前、中途視覚障害者の歩行訓練をしている人に聞いた話だが、駅の階段の昇り口の手摺に、点字で「昇り」と書かれたものがあったらしい。
彼は「手摺が上向いていれば、書かなくたって昇りだって分かるんだよ。意味がないね」と話していた。言われてみれば、確かにそのとおりである。

さて、こんなふうに「なくてもいいんじゃないか」と、筆者が思い続けてきたものがある。それは、AV機器のCDプレーヤーのリモコンに付いている「open/close」のボタン。トレーを開閉するボタンだが、CDを交換するためには、イヤでもCDプレーヤー本体のそばまで行かなくちゃならない。
リモコンのボタンをいくら押したって、CDが自動で飛び出たりはしないのだ。意味がないじゃないか。CDプレーヤーの発売から二十余年、ずっと謎だったこと。これを機会にメーカーに尋ねてみることにした。

まずは、「デノン」のお客様相談センターから。
「利便性を考えて付けています。
行く前にトレーを開けることもできますし、棚の下の方にプレーヤーを置いている場合、(本体の)ボタンが押しにくかったりするのです。また、リモコンを使い慣れているお客様もいますので」
押しにくいのなら、使いやすい場所に置けばいいじゃないか、と思ったりもしたが、狭い日本の住宅事情では仕方がないのかも。続いて、「ヤマハ」の広報部に聞いてみた。
「単純な利便性のためです。基本的な機能はすべてリモコンに持たせるようにしていまして、トレー開閉ボタンを付けたからといって、コストアップになるほどではないのです」
でも、私、使わないんですが。
「私は半々くらいですねえ」

だんだん分が悪くなってきた。
友人たちに聞いたところ、何人かはリモコンを使っていると答えた。中には、「電池代を節約するために、リモコンで本体のボタンを押している」なんてのもいたが……それならただの棒でいいだろうが。いずれにせよ、リモコンを使う人は少なくないらしい。いらない、というのは筆者の思い込みだったようだ。最後に、CDを米国フィリップス社と共同開発した「ソニー」に尋ねてみた。
「時間短縮のためです。
リモコンでトレーを開けてから行くといいです。特に最近のDVDは開閉に時間がかかるから」
筆者宅で測ってみたが、せいぜい2秒くらい。ホンマかいな。

そんなわけで、いらないと思っていたもの、実はいろんな理由で使われていたのでした。
(R&S)