あちこちのおみくじの「文体」を比べてみた
運勢の比率や、書いてある文や、いろいろあるからまた、ひくのが楽しみになるのかもしれません。
おみくじは、ときどき身もフタもないことを告げてくれる。

以前、結婚願望の強い友人と一緒におみくじをひいたとき、「今年こそ結婚するぞ!」と意気込む彼女のひいたおみくじは「凶」で、「待ち人きたらず」とあった。

気を悪くした彼女、別のお寺で引き直したが、またしても「凶」。で、さらに出た言葉はコレ。
「待ち人こない。待つな」
「なぜ命令? 待つぐらい勝手じゃん……」と落胆する友人を見ながら、いくら何でもこの言い方はないだろうと思ったものだ。

思えば、寺、神社によって、おみくじの文体というかテンションはかなり異なる気がする。
そこで、明治神宮、浅草寺、湯島天満宮の3カ所で、それぞれおみくじを引き、比べてみた(罰当たりです。
ごめんなさい)。

まずいちばん「大人」な印象なのは、明治神宮である。
「大御心」として、昭憲皇太后か明治天皇の歌が綴られているのだが、大吉・中吉などのランク分けがないのだ。
たとえば、「ならび行く人にはよしやおくるとも ただしき道をふみなたがへそ」(多くの人々と並んで行く世の中で、たとえ、他の人々にはおくれることがあっても、あまり急いで、正しい道をふみあやまらないでほしいものです)と、もっともな言葉が綴られている。
喜びも悲しみもない。

対して、浅草寺は「凶」に関しては「ぐわんもう叶ひがたし 病人おぼつかなし うせものいでがたし まち人きたらず やづくり、ひきこし、わろし たびだちわろし よめとり、むことり、人をかかへるわろし」と、ことごとく悪いことのオンパレード。
これでもかこれでもかと「わろし」を繰り返される。

あんまりひどい言われようなので、「大吉が出るまで」と引いていくうち、うっかり26回も引いてしまった。
凶が12枚、小吉2枚、吉が9枚、末吉と半吉と大吉が1枚ずつ。

ちなみに、以前ダンナが某週刊誌の取材で同じように浅草寺のおみくじを30回ジャラジャラやったときの結果も、「大吉×4、小吉×1、吉×9、半吉×1、末吉×1、末小吉×1、凶×13」と、凶が4割超えの驚愕の数字をたたき出していた。
それにしても、なんという凶の多さ! 文体以前に、ヘコみます……。

で、最後は、湯島天満宮。
菅原道真公の歌が書かれ、5回引いてみたが、大吉1枚、中吉と末吉2枚ずつという、まずまずの好成績(?)。
しかも、内容も「争事 相手が女なら負」「縁談 あせれば女は不利 落着くべし」「出産 安し。女児なり」「縁談 必ずまとまる」と、非常に具体的で心強いものばかり。なぜ「女」ネタばかり?という感はあるけれど……。
おまけに、「待人 音信あり。おくれて来るが怒るな」と、日ごろの自分の短気ぶりまで見抜かれているようなアドバイスもあった。


ここまでいろいろ引きまくると、正直、意味は全然ないのだけれど、たかがおみくじ、されどおみくじ。
どうせなら、今度は「凶」ばかり引く友人を、湯島天満宮に連れて行ってあげたいと思った。
(田幸和歌子)