
100円で手に入れた中古ビデオ「江戸川乱歩原作 怪人二十面相」。なんと1954年! の作品
最近の映像ソフトはほとんどがDVD。そのため、レンタルショップなどでは中古のビデオソフトを安値で売っていたりする。
話題作だったりテレビの連続ものなどがあったりするのだが、そんな中ちょっと目を引いた作品があった。
「江戸川乱歩原作 怪人二十面相」(1954年作品 松竹 監督:弓削進)である。スタッフ、キャストを見る限り大変失礼であるけれども私が知っている名前はほとんどない。脚色:小川正、監督:弓削進、キャスト:若杉英二、藤乃高子、草間百合子、沼尾釣、須賀不二夫、山形勲、日守真一……。唯一名前と顔が一致するのは「山形勲」。
作品はメジャーな少年探偵団ものなのに……? ということでさっそく鑑賞してみることにした。
ストーリーを簡単に言うと、少年探偵団の一人、壮二君の父親で超原子力の研究者でもある羽柴博士の超原子力設計図を怪人二十面相が狙うというもの。作品は1話が40分ちょっとの長さの3部構成でこれで1つの事件が解決するつくりになっている。第一部「人か魔か?」、第二部「巨人対怪人」、第三部「怪人粉砕」とタイトルからしてかなりすごい、ストレートです。ちなみに山形勲は羽柴博士役。明智小五郎役は若杉英二で助手の高安令子役は藤乃高子。そしておそらく怪人二十面相役は須賀不二夫。
映画はモノクロなのでもう画面からしてすでにおどろおどろしい。そしてさらに奥村一氏の音楽がいかにもという感じでそれを煽る。少年探偵団と言えば条件反射のように「ぼ、ぼ、僕らは……」で有名なあの「少年探偵団の歌」が思い浮かぶが、あの歌はテレビ版の主題歌なのでこの作品では当然のこと使われていない。
オープニングからかなりのアップテンポでどんどん話は進むのだが、やはり1954年という時代のせいか、セリフが妙に堅苦しく、子どものセリフもこまっしゃくれているのがご愛嬌か。怪人二十面相は痩せぎすのサラリーマン風で全然怪人らしくない。チンピラ風の手下に「親分」と呼ばれ、「てやんでぇ」とか時代劇調の言葉を吐いたりするし、筆を使ってちゃちゃっと変装していたりする。怪人二十面相ってこんなだったか? と自分の記憶を疑ってしまいそうになる。
そして、少年たちに向って平気で銃を向けてケガをさせるという容赦のなさ。なんだかすごい怪人二十面相だ。明智小五郎役の若杉英二も目立った活躍はせず、子どもたちに助けられ、そして危険な仕事は子どもたちにさせっぱなしだし。
もともと江戸川乱歩の作品も少年向けのものだし、この映画も少年向けとして作られているので、リアリティーがどうのこうのというものではないのだが、つっこみどころ満載でなかなか楽しめる。
でも作品が作られた年代を考えるとやはり感慨深い。
少年探偵団の一員が号外を配っていたり、偵察する際に靴磨きをしちゃったりするところなども、まだ少し戦後を引きずっている感があって、近年のものより江戸川乱歩作品の雰囲気が出ているような気がする。小道具も電報だったりモールス信号でなくちゃなんだかしっくりこない。
この翌年、松竹でもう一作品怪人二十面相もので「青銅の魔人」という作品が作られている。監督は弓削進から保積利昌に代わっているものの、若杉英二、須賀不二夫は続行。そのほか、多々良純、桂小金治が出演。この2作品は松竹銀幕パックシリーズ10『怪人二十面相/青銅の魔人』(2本組)として現在も販売されている。1956年からは東映でも少年探偵団と怪人二十面相シリーズが作られているが、こちらの方の出演者は南原伸二、中原ひとみ、岡田英治と若い人でもその名を知っている人が多いと思われる俳優さんの名前が並んでいる。また東映版では後年、日本のおじいちゃんと言われた加藤嘉が怪人二十面相を演じている作品もあるので機会があればぜひ見てみたい。
(こや)
*松竹版、東映版ともにDVDは発売されておりません
話題作だったりテレビの連続ものなどがあったりするのだが、そんな中ちょっと目を引いた作品があった。
「江戸川乱歩原作 怪人二十面相」(1954年作品 松竹 監督:弓削進)である。スタッフ、キャストを見る限り大変失礼であるけれども私が知っている名前はほとんどない。脚色:小川正、監督:弓削進、キャスト:若杉英二、藤乃高子、草間百合子、沼尾釣、須賀不二夫、山形勲、日守真一……。唯一名前と顔が一致するのは「山形勲」。
作品はメジャーな少年探偵団ものなのに……? ということでさっそく鑑賞してみることにした。
ストーリーを簡単に言うと、少年探偵団の一人、壮二君の父親で超原子力の研究者でもある羽柴博士の超原子力設計図を怪人二十面相が狙うというもの。作品は1話が40分ちょっとの長さの3部構成でこれで1つの事件が解決するつくりになっている。第一部「人か魔か?」、第二部「巨人対怪人」、第三部「怪人粉砕」とタイトルからしてかなりすごい、ストレートです。ちなみに山形勲は羽柴博士役。明智小五郎役は若杉英二で助手の高安令子役は藤乃高子。そしておそらく怪人二十面相役は須賀不二夫。
俳優さんの名前と役名が一緒に出ていないので、配列からして推測。
映画はモノクロなのでもう画面からしてすでにおどろおどろしい。そしてさらに奥村一氏の音楽がいかにもという感じでそれを煽る。少年探偵団と言えば条件反射のように「ぼ、ぼ、僕らは……」で有名なあの「少年探偵団の歌」が思い浮かぶが、あの歌はテレビ版の主題歌なのでこの作品では当然のこと使われていない。
オープニングからかなりのアップテンポでどんどん話は進むのだが、やはり1954年という時代のせいか、セリフが妙に堅苦しく、子どものセリフもこまっしゃくれているのがご愛嬌か。怪人二十面相は痩せぎすのサラリーマン風で全然怪人らしくない。チンピラ風の手下に「親分」と呼ばれ、「てやんでぇ」とか時代劇調の言葉を吐いたりするし、筆を使ってちゃちゃっと変装していたりする。怪人二十面相ってこんなだったか? と自分の記憶を疑ってしまいそうになる。
そして、少年たちに向って平気で銃を向けてケガをさせるという容赦のなさ。なんだかすごい怪人二十面相だ。明智小五郎役の若杉英二も目立った活躍はせず、子どもたちに助けられ、そして危険な仕事は子どもたちにさせっぱなしだし。
もともと江戸川乱歩の作品も少年向けのものだし、この映画も少年向けとして作られているので、リアリティーがどうのこうのというものではないのだが、つっこみどころ満載でなかなか楽しめる。
でも作品が作られた年代を考えるとやはり感慨深い。
少年探偵団の一員が号外を配っていたり、偵察する際に靴磨きをしちゃったりするところなども、まだ少し戦後を引きずっている感があって、近年のものより江戸川乱歩作品の雰囲気が出ているような気がする。小道具も電報だったりモールス信号でなくちゃなんだかしっくりこない。
この翌年、松竹でもう一作品怪人二十面相もので「青銅の魔人」という作品が作られている。監督は弓削進から保積利昌に代わっているものの、若杉英二、須賀不二夫は続行。そのほか、多々良純、桂小金治が出演。この2作品は松竹銀幕パックシリーズ10『怪人二十面相/青銅の魔人』(2本組)として現在も販売されている。1956年からは東映でも少年探偵団と怪人二十面相シリーズが作られているが、こちらの方の出演者は南原伸二、中原ひとみ、岡田英治と若い人でもその名を知っている人が多いと思われる俳優さんの名前が並んでいる。また東映版では後年、日本のおじいちゃんと言われた加藤嘉が怪人二十面相を演じている作品もあるので機会があればぜひ見てみたい。
(こや)
*松竹版、東映版ともにDVDは発売されておりません
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