日清カップヌードルの独特のエビって、何のエビ?
フタを開けた瞬間にあらわれる、小さなオレンジ色の丸いヤツ。なんだか嬉しくなります。
永遠のド定番、「日清カップヌードル」のなかでも、ひときわ大きな存在感を誇る、エビ。
フタをあけた瞬間に、思わず、コイツの数を気にしてしまったりする人、けっこういるのではないでしょうか。


それにしても、まるでカップヌードル用に作られたかのような、おあつらえむきの小さなサイズ、ギュッとしまった食感、キレイなオレンジ色は独特で、ファンも多いけど、いったいどういう品種のエビなのだろうか。

スーパーでは似たようなエビは全然見ないし、他の食品でもなかなかめぐり合わない気がするけど、日本では獲れないエビだったりする?

日清食品株式会社に聞いてみると、
「これはインド西海岸の一部の海域だけで獲れる『プーバラン』という品種なんですよ」
と、広報担当者が教えてくれた。
はるばるインドからやってくる「選ばれしエビ」だったとは!

それにしても、なんでインドから? 
「カップヌードルは世界初のカップめんなので、具材についてもいちから開発しました。カップヌードルにエビを入れたことは、カップヌードルの開発者であり、当社の創業者である安藤百福が『エビは高級感があり、めでたい。日本人はみんな大好きなので、エビが入れば必ず売れる』と、エビを具として使うことを決めました。エビの選定にはまず、色どり、豪華な感じ、実際の味わいといった条件をかなえるよう、かなりの時間を費やし、カップに入るよう小型で味の良いエビを世界から選び出しました」
実際、「候補」として集められた品種は、中国、台湾、タイ、インド、アフリカ、さらに北洋産など、60種類以上だったとか。


さらに、具材加工には、色、味、食感、形態が損なわれず、栄養素の変化も少ないという理由から、当時、“夢の乾燥法”といわれたフリーズドライ加工が決定していたのだそうだ。
「世界中から集められたエビを実際にフリーズドライ加工し、お湯で戻して試食……を繰り返しました。最後まで残った6種類のエビは、実際にカップに入れて密閉し、約1週間後に開封したときの食感や形態をもとに選定しました」
なかには、味わいは極上ながら、運搬試験でこなごなに砕けてしまう残念なエビもあったそうで、そんななか、最後に残ったのが、この「インドから来たエビ」だったという。

このプーバラン、乾燥用小エビとしては最高級品で、47年ごろの原価は1キログラム4500円ほどだったそうだが、現在、どのくらいの匹数が日本で食べられているのか? また、他の場所でめぐり合うことはできないのでしょうか?
「量については当社ではわかりかねますが、ピラフやエビシュウマイなどで、このエビはよく使われていると思いますよ」

はるばるやってきて、60種以上から選ばれた「特別なエビ」は、日本人の生活のなかで、いつの間にかなじみの存在になっていったようです。
(田幸和歌子)