「きんぴら」といえば……
きんぴらはレンコンも人気もの
以前、テレビのトーク番組に出ていた吹石一恵が「きんぴらといえばレンコンが当り前」という話をしていたことがある。そして、それを受けたアナウンサーが「えー、きんぴらはゴボウでしょう!」といって驚いていた。
それを見ていた私も一緒になって驚いた。

たしかに自分も、最近はレンコンのきんぴらをよく食べるようになっていて、正直、レンコンの方が好きだったりする。しかし、きんぴらといえば、真っ先に浮ぶのはやはりゴボウだ。「きんぴら=レンコン」となるのはちょっと不思議な感じがした。

吹石一恵は出身が大阪なので、もしかしたら地域に関係あるのかもしれない。そう思って、まわりに聞いてみることにした。


すると、「きんぴらといえば……」という問いに対してはほぼ全員がまず「ゴボウ」と答えた。ただし、真っ先にゴボウと答えた人の中にも、「思い浮かぶのはゴボウだけど、好きなのはレンコン」という人もけっこういたし、「実家ではゴボウしか作っていなかったけど、ひとり暮らしをはじめてレンコンを作るようになって好きになった」という人もいて、やはりレンコンも同じくらい話に出てきた。

聞いた人たちの出身地は東京、埼玉、神奈川、愛知、新潟、愛媛、大分、熊本とさまざま。大阪出身者も3人はいたけれど、みんな実家で食べていたのはゴボウ、という人ばかりだったので、地域差というより、家庭によっての違いが大きいのかもしれない。

というように、だいたい予想していた結果ではあったのだが、聞いていく中で「そもそも『きんぴら』って一体なんなんだ?」という疑問が浮上。

そういえば、きんぴらと聞いて「甘辛く煮る」という調理方法と、その料理のイメージはすぐに浮かぶけれど、実際のところ、どんな意味があるのかわからなかった。
すると2人から「金比羅山が関係しているかも?」という意見があがったのだが、どうなのだろう?

そこでさっそく広辞苑で調べてみると、「きんぴら」だけでなく、「金平牛蒡(きんぴらごぼう)」としても、別にちゃんと紹介されているのだった。そう、もはや「きんぴらごぼう」という固有名詞があるわけだから、きんぴらといえば、ゴボウと答える人がほとんどなのも当り前か。

その意味にはこうあった。「繊切り、あるいは笹がきにした牛蒡をごま油で炒め、唐辛子を加えて醤油と砂糖とで調和した料理。強精作用があると考えられて、怪力金平の名がつけられた」

怪力金平?!

誰のことかと思いきや、『金太郎』として知られている坂田金時の息子、金平という人物のことだという。そして、Wikipediaでも調べてみると、「日本食の惣菜の一つ。
繊切りにした材料を砂糖・醤油を用い甘辛く炒めたもの」とあり、さらに「金平という名前は金太郎としても知られる坂田金時の息子・金平から名付けられたという。江戸時代はゴボウは精の付く食べ物と考えられていたため、強力の伝説で知られていた金平に仮託したもの」とあった。

まさかあの「きんぴら」が人名に由来していたとは、これまた驚きである。

と、「きんぴらといえば何か?」から、「きんぴらって何?」に、途中でお題がすり変わってしまったが、調べていく中でもうひとつ面白かったことが、「栗原はるみ」の名前が複数から出てきたこと。

私は栗原はるみのおやつの本しか持っていないため、よく知らなかったのだが、栗原はるみはやたらいろんなもので「きんぴら」を作るらしく、当然のことながら、どれも美味しいのだそうで、今回はそんな栗原はるみの影響により、「きんぴら大根」をよく作るようになったという人、中でも美味しかった「ブロッコリーの茎のきんぴら」をよく作るという人などがいた。

ようするに、「きんぴらゴボウ」は古くから存在していて、徐々にレンコンをはじめ、さまざまな野菜で作る人が出てきたということ。
そして栗原はるみは料理研究家として、それに一役かっているのだろう。

それにしても、「きんぴら」についてこんなにも深く考えたのは生まれてはじめて。同時に、身近なことでもまだまだ知らないことがたくさんあるんだなあ、と思い知ったのでした。
(田辺 香)