
『墓場鬼太郎』は、「ダークな鬼太郎」として話題になっているが、原作を読んでみると、鬼太郎のキャラデザインももちろんだが、薄気味悪く「ケケケ」と笑うところ、ゴミをあさって食べるところなど、多くの人がイメージする「優等生の鬼太郎」とは異なる面が多い。
さらに驚くのは、鬼太郎が実はけっこうやられまくりだということ。
自宅にある『貸本まんが復刻版 墓場鬼太郎1〜6』(角川書店)、『少年マガジン/オリジナル版 ゲゲゲの鬼太郎1〜5』(講談社漫画文庫)から、その衝撃的なやられっぷりをピックアップしてみたいと思う。
まず『墓場鬼太郎4』で、「霧の中のジョニー」につかまったとき。肉体をとかす注射液を打たれると、ねばねばする水になってしまった鬼太郎は、ねずみ男にスポイトでカメに移され、ご親切にもぼうふ剤を入れて持ち歩かれる。
『少年マガジン/オリジナル版 ゲゲゲの鬼太郎1』では、吸血木にやられて木になってしまうが、その木に大きな実をつけ、実から鬼太郎が生まれて復活している。
同じく1巻の「墓場の鬼太郎 大海獣」では、島でサラマンドラの毒にやられ、さらに山田少年に大海獣の血を注射されて、自ら大海獣になってしまうし、2巻「墓場の鬼太郎 妖怪獣の巻」では、「かなめ石」に触れ、石になってしまうなど、さんざんだ。
また、3巻「ゲゲゲの鬼太郎 さざえ鬼」では、しびれ薬を飲まされ、岩にはさまれてプレスされた後、「まるで生のビフテキを食べるようだ」とフォークとナイフで食べられる。ところが、さざえ鬼の毛穴から少しずつ抜け出て合体するという荒業で、倒している。
そして、極めつけは、5巻の「かまぼこ」。なんと半漁人の子分・大いかに食べられ、自ら大いかになってしまい、もとの姿に戻してもらうために、魚を運ぶ仕事をさせられる。挙句、ダイナマイトで爆発させられ、かまぼこにされてしまうのだが、そのかまぼこの模様は、しましま。律儀にも、「ちゃんちゃんこカラー」であるのが悲しみを誘う。
もちろんアニメでおなじみの鬼太郎だって、数多のピンチにあっているが、そんなときは、リモコンげたをカッコよくとばしたり、髪の毛針で攻撃したりするのが定番だ。
でも、原作においては、髪の毛で攻撃→ツルツルの頭になることはあっても、リモコンげたの攻撃はほとんど見られない。
食べられたときなども、「鬼太郎の膨大なエネルギーが勝った」として、敵のおなかが破裂→復活という展開が多い。言ってみれば、鬼太郎は生まれついてのエリートで、小技など必要ないということだろうか。
対して、原作上で大活躍なのは、目玉おやじ。彼の年の功を感じさせる知識量と、豊かな知恵に比べると、鬼太郎はまだまだ「ひよっこ」のようです。
(田幸和歌子)
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