この時期、先生たちの頭を悩ませるもの
ちゃんと勉強してますか? ちなみに、東京は2学期制が多いので、通知表をもらうのも、秋だったりします。
一学期も終盤にさしかかってくるこの時期、教育関係者たちと話をするたびに、耳にするのが、「通知表をつけるのが本当に大変!」という話題だ。

通知表をつけるという仕事は、昔から先生たちがずっとやってきたことなのに、なぜそんなにも?……と思うが、評価の仕方が変わったせいで、仕事がかなり煩雑になっているのだという。


2002年度から学習指導要領が改訂され、評価方法が大きく変わったことはご存知の人も多いかもしれない。
具体的にいうと、それは、集団の中でどのくらいの位置にいるかを示す「相対評価」から、個人が学習内容をどの程度達成できたかを示す「絶対評価」に変わったということ。
これには成績を輪切りで評価されない、個人の頑張りを見てもらえるというメリットがある一方で、「内申点のインフレ化が進んで5段階評定の5が急増した」「差がつきにくく、内申書軽視になる」などの反対の声もけっこうあるわけだが、実際、評価する教員たちの作業量にも大きな影響が出ているのだという。

「絶対評価に変わったことで、成績処理がものすごく大変になりました」というのは、都内の中学校の教諭。
「これまでは上位○%が5で、△%が4で……と決まっていたので、処理が楽だったけど、絶対評価の場合は全員5でも良いわけですから」
そのどこが大変なのかと言うと……。
「通知表の評価は入試にも使うものなので、当然、単純にみんな5というわけにはいきませんよね? でも、『絶対評価』が導入されたことによって、『なんでですか?』『どこが足りないんですか?』『自分は頑張ったのに』など、本人や保護者からいちいち問い合わせがくるんです。教師には成績の『説明責任』がありますから、これにすべて対応していかないといけないんですよ」

また、別の中学校教諭も言う。
「絶対評価は達成度に対してのものだけに、『全員5でも良い』と保護者も思っているので、5じゃないというだけで文句がきます。自分の子どもが努力しているかどうかは棚に上げて、説明を求めてくるんですよ」

さらに、これまでは教師がもっているだけだった「観点別評価」を、保護者に渡す通知表に記すようになったことも、煩雑さにつながっていると言う教諭もいる。
「たとえば、国語だったら、『読む』『書く』『聞く』『話す』のそれぞれの観点別に、A、B、Cを出すようになっています。それも、事前に説明しないと後で苦情が来るので、『この作文を提出したら10点』など、評価の対象になるものをすべて知らせておくんですよ。子どもたちもそれにあわせて、点数稼ぎだけするようになるし……嫌になってきます」

もうしばらくするとやってくる夏休み。
でも、その前にやってくる「通知表」、先生にとっても子どもたちにとっても、かなり頭痛の種になっていることは間違いないようです。
(田幸和歌子)
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