映画って観客がいなくても最後まで上映されるの?
ガランとした映画館もなかなかいいもんです
先日、仕事と仕事の間にぽっかり時間が空いたので、映画でも見ようと映画館に入ると、平日の午前中ということもあってか客席には10人程度。前方に誰も座っていなかったので、さながら『ニュー・シネマ・パラダイス』のラスト・シーンのように、まったり映画を楽しんでいた。

だがここで“観客がもし誰もいなくても、映画は上映するのか?”というギモンが沸いてくる。しかも、完全入替制のシネコンだったら? 人気映画を多く取り扱い、独自の割引サービスも充実しているシネコンで、客がゼロなんてことはあり得ないだろう……と思いつつ、おそるおそる都内のシネコンの広報に話を聞いてみた。

すると「平日でも日によっては各種サービスの対象日となっているので、あまりそういったケースはないですが、チケットの売れ行きを確認し、上映開始後30分たってもお客様が誰もいらっしゃらない場合は、上映を止めます」との回答が。でも、この“上映を止める”というのは、イコール映写機を止めるということではないらしい。
「原則として、一度フィルムを映写機にかけたら止めることができないんですよ。通常、映画は7、8本に分かれたフィルムを1つにつなぎ合わせ、円板から円板へ巻き取る形で上映しています。機械の構造上、途中で止めたものを、次の上映のために先頭まで戻すには、すべて手動で行わなければいけないんです」

なるほど、巻き戻しボタンがあるわけじゃないんですね……。
「フィルムはホコリも付きやすく繊細なものなので、観客がいなくても止めたり巻き戻したりせず、映写機は動かしたまま。その代わり、映写用のランプだけを消すので、スクリーンには何も映らないわけです」。

大きなスクリーンを前に、観客は自分ひとりだけ。こんなドラマチックなシチュエーションに憧れる人は多いだろう。一方で、観客が誰もいなくても、カタカタと音を立てて働き続ける映写機。
何かステキなドラマになりそうな気が……しないでもない。
(平井万里子)
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