今年の海外メジャー第2戦「全米プロゴルフ選手権」がいよいよ17日に開幕する。会場となるキアワ・アイランド・ゴルフリゾート オーシャンコース(サウスカロライナ州)は、2012年にも全米プロが開催され、そのときはローリー・マキロイ(北アイルランド)が2位に8打差をつけるトータル13アンダーで優勝している。
丸山茂樹のキャディとして、同コースで行われた03年の「ワールドカップ」でバッグを担ぎ、今回TV中継の現地リポーターを務める“スギちゃん”こと杉澤伸章氏に、全米一難しいともいわれるコースの特徴を聞いた。
■風によって平均スコアが5打変わる
杉澤氏がまずポイントに挙げるのは、海沿いのリンクスコースに吹く海風だ。今回と同じパー72の設定で行われた12年の初日の平均スコアは「73.294」で、ベストスコアはカール・ペターソン(スウェーデン)の「66」だった。ところが2日目の平均スコアは「78.086」と5打近くも増え、60台で回ったのは「69」を出したビジェイ・シン(フィジー)ただ一人。優勝したマキロイでさえ2日目には「75」を叩いた。
「なぜ5打も平均スコアが?と聞かれれば、理由は強い海風しかない。
ひとたび風が吹いたらコースはかなり変わるんです。その2日目に、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンは『71』で回ってきている。強い選手はみんなが落としているときに落とさないですよね」と杉澤氏は語る。
■名匠ピート・ダイの設計で、パー3を境に風が入れ替わる
コースの設計は鬼才と呼ばれた名匠ピート・ダイ。「ザ・プレーヤーズ選手権」が行われるTPCソーグラス スタジアムコースを設計したことでも有名だ。「ピート・ダイの設計で面白いと思ったのは、コースが1番から18番に戻ってくる間に8を横にした形になっているんですよ」。

杉澤氏がいうように、1番から4番ホールまでは西から東に向かってコースが続いていく。そして5番ホールで折り返すと、13番ホールまでの9ホールは東に向かって進む。14番から18番までの上がり4ホールはまた東に。それをなぞっていくと、8の字を横にした∞の形になる。
「もし西から風が吹いていたら、5番から13番まで9ホールずっとアゲンストなんです。これがとてもやっかいで、心が折れてしまう。
さらにいうと、折り返す両サイドのホールが5番と14番で、どちらもパー3。ここがピート・ダイだなぁと感じます。ものすごいアゲインストやフォローで打っていたのが、同じ距離でも3番手とか4番手変わってくるわけです。風向きはわかっても、番手がわからなくなりますよね。
当然、フォローとアゲンストの打ち方は違いますから、フォローでは風に乗せて打っていたのが、アゲンストでは球を抑えたりしなくてはいけない。左右の風でも入れ替わるので、それまで左からの風で引っ張って打っていたのが、右からの風では押し出すように打つとか変わってくる。
そういう舞台作りはさすがピート・ダイだなと思います」
リンクスコースでアップダウンはないが、フェアウェイには傾斜がつけられている。「フェアウェイの傾斜と、風の向きとグリーンの傾斜を読んで、球筋を作らないといけない。グリーンでボールを止めるために、どんな球を打つのかに着目すると面白い。左に曲がりやすいツマ先が上がりの傾斜で右から風が吹いたとき、フックを打っていくのか、それともカットを打つのか、そうやって見るとショットのすごさが伝わってくると思います」
■すべてのパー3が難易度が高い
この折り返しの5番と14番を含めて、パー3のすべてが難しいと杉澤氏はいう。「パー3は5、8、14、17番。難易度でいうと、難しいほうからベスト7に4つ全部入ってきます。
そんなかでは14番(238ヤード)が一番難しいといわれています。そのくらいパー3をどうしのぐかが肝になってきますね」
上がりの16、17、18番はザ・プレーヤーズ選手権と同じでパー5、パー3、パー4になっているので、スコアはいくらでも動く。16番パー5はマストでバーディを獲らないといけなくて、17番パー3と18番パー4で耐える。前回はマキロイが圧勝していますが、ドラマチックな展開も期待できると思います」。
■杉澤伸章
すぎさわ・のぶあき 75年生まれ。愛知県出身。
21歳のときに横田真一の専属キャディとしてキャリアをスタート。2002年には米国男子ツアーで戦っていた丸山茂樹と契約し、米ツアー2勝をサポート。その後は、宮里優作の初優勝したときにバッグを担いだり、松山英樹のバッグを担いだことも。現在はゴルフ中継の解説者としても活躍している。今回の全米プロでは現地リポーターを務める。