<マイナビABCチャンピオンシップ 初日◇4日◇ABCゴルフ倶楽部(兵庫県)◇7217ヤード・パー72>
今年で50回目の記念大会となる「マイナビABCチャンピオンシップ」が開幕。練習日の時点で13フィートを超える高速グリーンに対し、選手たちはどんなプレーをすればスコアを作れるのか。
1995年大会でツアー初優勝を飾り、今大会のコースセッティングアドバイザーを務める田中秀道に攻略法を聞いた。
50回大会を記念して、青木功会長が記念の盾を贈呈【大会フォト】
「今年も例年どおり速いグリーンに仕上げていただいています。13フィートを超えるスピードでも芝が薄くて横に滑っていくような状態ではなくて、ボールが本当にきれいにロールしながら13フィート出る。海外メジャー級の最高の仕上がりになっています」と田中。プロとして今大会に初めて出場する金谷拓実は「とにかくグリーンが速くてきれい」、前週初優勝を挙げたばかりの池村寛世は「間違えるとグリーンを出て行っちゃう」と、プロたちも高速グリーンを警戒する。
その上でスコアを出すためには、「ただ同じ面に乗せるだけではダメ」と田中はいう。
「同じ面に乗せるのは当然、真っすぐにしっかり打っていけるラインに乗せることが大事。下からの3メートルと斜め上からの2メートルでは、下の3メートルにつけたほうが入りやすい。アイアンの精度が非常に試されます。どこに乗せるかまで、はっきりイメージできている選手が強いのではないでしょうか」。
グリーンが速いため、傾斜の上や横につけると短い距離でも油断はできない。難しいラインばかり打っていると、リズムにもなかなか乗りにくい。
さらに、「そこに乗せるためにはどこから打てばいいのか、ティショットのクラブ選択にもつながる。乗せる場所から逆算できるか。14本のゴルフ脳を試されるという意味では最高のコースです」。
そう田中がいうように、このABCゴルフ倶楽部はドッグレッグホールが多いため、ティショットでは、ただドライバーで飛ばせばいいわけではない。「例えば11番パー4は3番ウッドで球を上手に操らないといけない。パー3でもいろんな番手を使うことが多い。
僕が勝ったときはドローだけでなんとかできましたけど、いまの仕上がったグリーンではショット、パットともにいろんな球種やテクニックが必要になる」と、ゴルフの総合力を強調する。
そんなコースを象徴するのが、15番パー5、16番パー3、17番パー4、18番パー5の上がり4ホールとなる。「15番でしっかり2オンできるか、16番のハードなパー3ではロングアイアンでどうグリーンをとらえていくのか、17番では左からの風でどうフェアウェイに置くか。パーの設定も違うし、風の角度も全部違う。ずっと同じ流れで打てないんですよね。3、4つの選択肢を考えて答えを出していかないといけない。
その瞬間の対応力も含めて、上がり4ホールはキーポイントになります」。
15番、18番は2オンも可能なパー5だけに、イーグル2つで大逆転という展開も考えられる。さらに18番では、2008年に石川遼がウォーターショットを成功させて、プロ初優勝を挙げるなど様々なドラマを生んできた。
2000年代には世界最高峰の米ツアーに参戦していた田中。今大会のティの位置やピンポジションから、若手に世界で戦うためのレベルを感じてほしいと考えている。
「左から3ヤードとか端にピンを切った場合でも、8番アイアンや9番アイアンで狭いところに打てば上りの真っすぐだよ、広いところに打っていくと長くて曲がるラインになっちゃうからねっていうメッセージは入れていくつもりです。
200ヤードを超えるパー3でも面が広くないところにピンを切るけど、世界的には4番アイアインでピタッとくるんだよと伝えたい」
金谷、池村など「世界で戦いたい」と公言する若手は増えてきた。そのためには日本でも高い技術を持って戦えるコースセッティングを、と田中は考えているのだ。「金谷君なんかはゴルフ場を上から見えている選手だと思う。彼はどこにピンを切っても、メッセージにちゃんとしっかり答えてくれるんだろうなって。池村君や比嘉(一貴)君、片岡(尚之)君も含めて、もうワンステップ上の大関クラスになっていくために、答えを出してきてほしい」と、若手の奮起に期待する。
また、シード権を目指す選手たちのなかには、出場できる人数が少ない来週の「三井住友VISA太平洋マスターズ」と再来週の「ダンロップフェニックス」に出られない選手もいる。
彼らにとって今シーズンは、今週とダンロップ翌週の「カシオワールドオープン」の残り2試合しか残されていないのだ。「結果を出したいという“情熱”よりも、乗せるところを考える“冷静”のほうが大事。『65』も出るけど、『74』になることもよくある」。田中のメッセージにいい答えを出すのは誰なのか、注目したい。(文・下村耕平)

■マイナビABCチャンピオンシップ 初日の組み合わせ
■ツアーで1、2を争う高速グリーンで、“ノン”インサートの黒いパターが登場
■金谷拓実がアジアアマ優勝を目指す中島啓太にエール
■池村寛世の初優勝をアシストした先輩の即効レッスンと、彼女が描いたボールイラスト
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