ニッポン放送「ザ・フォーカス」(2月11日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。逗子の斜面崩落事故について解説した。
逗子市の道路脇斜面で土砂崩れ 通行人の18歳女性死亡 現場に集まった報道陣=2020年2月5日、神奈川県逗子市 写真提供:産経新聞社
逗子の斜面崩落、女子高生死亡事故~責任問題の所在は
2月5日、神奈川県逗子市で市道沿いの傾斜地の一部が崩落し、土砂の下敷きになった女子高生が死亡した事故。崩落した斜面は県が2011年に土砂災害警戒区域に指定していたが、私有地のため、安全対策などは所有者にあることから、責任の所在の明確化が注目されています。
森田)神奈川県逗子市池子2丁目で道路脇の斜面が崩れて、歩いていた18歳の県立高校の女子生徒が巻き込まれて死亡したというものです。崩れた土砂の量はおよそ68トンです。崩れたのはマンションが建つ土地の脇にある斜面で、高さおよそ16メートルだったということです。斜面は私有地で、神奈川県が2011年に土砂災害警戒区域に指定しているのですが、建築制限はかかっていないということです。現場を訪れて調査した国土交通省の担当者は「崩落の原因は凝灰岩の風化だ」という見方を示しています。
石積み式の擁壁(練り積み造擁壁)- Wikipedia「擁壁」より
民法上の「責任」はマンションの住人
野村)まずは今回、この下敷きになって亡くなってしまった女子高生は本当に可哀想だと思います。何の罪もないのにこのような事故に巻き込まれてしまって。もう二度とこのようなことが起こらないようにしていくのが重要です。そのなかで、責任を負う人がそれにいちばん注意していくべきなので、誰が最終的に責任を負うのかをはっきりとさせることは非常に重要だと思います。驚く方がおられると思いますが、現在の民法の仕組みからいくと、その土地はマンションの住人の人たちの共有地になっているので、マンションの人たちが責任を負うのではないかと思うのです。これは民法のなかに土地、工作物についての責任の規定がありまして、土地に付属している工作物が原因で事故が起きた場合、普通以上に厳しい責任を負わせることになっているのです。まずは、建物や塀などの設置について瑕疵があった場合。
今回については、その土地はマンションの下の部分ですよね。そこには擁壁というものがあって、その上の法面(のりめん)と言われる土地だと思うのですが、これは結局所有者がしっかりと管理していかなければいけないということで、管理に瑕疵があると所有者が無過失で責任を負うということになっているのですよ。これは寝耳に水だと思います。マンションに住んでいる人たちは、そんな責任を自分たちが負っているとは思っていないはずです。
道路の両側に作られた法面(のりめん)- Wikipedia「法面」より
管理業者へ委託しても一次的な責任は負う
森田)でも、マンションは管理組合が所有者みたいな形で、管理組合から管理会社に契約して補修業務を担っていることが多いじゃないですか。そうすると、この管理会社が責任を取るということにはならないのでしょうか。
野村)基本的には、マンションの共有部分はみんなで所有していることになります。賃貸ではなく分譲マンションだった場合、マンションに住んでいる人の土地です。
森田)しかし、こんな土砂崩れが起きそうな場所はたくさんあるということで、神奈川県は事故後に8,700ヵ所くらいを緊急点検したということですから、他にもこういう場所はたくさんあるわけで、これがマンションの所有者の責任だと言われたら困ります。
野村)それを気づかせる必要もあったと思うのです。県はこの場所を土砂災害警戒区域に指定していたわけです。今回は何もしていなかったのに急に崩落してきたのですが、急に災害が起こって大雨になった場合もそういったことが起こるのです。
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