『英語教育論争史』(講談社)著者:江利川 春雄Amazon |honto |その他の書店
英語学習にかけた時間と努力に見合った能力を身に付けたかどうか。おそらくほとんどの日本人はため息すら出ないほど諦念をもっているのではないだろうか。
二、三年英語圏に滞在した人でも、ニュースなら多少は理解できても、映画の場面となると心もとないという程度だろう。

なぜかくも日本人は英語の習得に悩まされてきたのか。そもそも言語構造のまったく異なる英語が必要なのか。それを問うとき、一九六一年、全都道府県において高校入試に英語が課されたことの意味は大きい。

明治の文明開化以来、使える英語をめぐる論争は繰り返されてきた。戦前の英語科廃止論争、戦後の英語義務教育化論争を経て、七四年には、英語教育大論争がもちあがった。
「実用的な技能習得のため」か「知的訓練と潜在力のため」かというもの。大方は前者に傾き、英語教育を実用目的に一元化した観がある。さらに東欧社会主義の体制の崩壊後、グローバル化が進み、「英語帝国主義」への賛否が問われている。

長年にわたって英語教員養成にたずさわってきた著者ならではの感慨は、英語に涙してきた読者に共感をもよおさせるだろう。

【書き手】
本村 凌二
東京大学名誉教授。博士(文学)。
1947年、熊本県生まれ。1973年一橋大学社会学部卒業、1980年東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。東京大学教養学部教授、同大学院総合文化研究科教授を経て、2014年4月~2018年3月まで早稲田大学国際教養学部特任教授。専門は古代ローマ史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。


【初出メディア】
毎日新聞 2022年10月22日

【書誌情報】
英語教育論争史著者:江利川 春雄
出版社:講談社
装丁:単行本(ソフトカバー)(296ページ)
発売日:2022-09-12
ISBN-10:4065293278
ISBN-13:978-4065293270