年齢とともに「階段がきつくなった」「息切れしやすくなった」──。そんな症状を「年齢のせい」で片付けていませんか?
これらの症状は実は心不全の初期症状かもしれません。
あまり知られていませんが、心不全は「がんと同じくらい怖い病気」なのです。
ANGIE編集部は2025年7月30日、大阪・関西万博の英国パビリオンで開催された「心臓フロンティア~心不全ゼロの未来へ~」市民公開講座を取材。専門医が語る心不全の現状と未来の医療についてリポートします。
見逃しやすい心不全の初期症状

心不全診療の第一人者である小室一成先生(国際医療福祉大学・東京大学教授、日本循環器協会代表理事)は、心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」とわかりやすく定義。
同氏の講演では、がんの10年生存率が58.9%に対し、心不全の生存率は55.8%というデータも紹介され、心不全がいかに深刻な病気かが明らかになりました。
特に注意したいのは、心不全の症状が「年齢のせい」と見過ごされやすいことです。主な初期症状は、以下の4つ。
・階段や坂道での息切れ
・下肢のむくみ・体重増加
・寝ていると息苦しくなる
・疲れやすさ
「80歳の人が2~3か月前まで登れた階段が上れなくなったり、食べ過ぎていないのに体重が2~3kg増えたりしたら、それは年齢のせいではない可能性があります」と、小室先生は警鐘を鳴らします。
心不全患者数130万人!日本の深刻な現状

俳優の本田望結さんも参加したこのイベントで明らかになったのは、超高齢社会の日本で急増する心不全の実態と、AIやテクノロジーが切り開く「新しい医療の可能性」でした。
日本の心不全患者数は約130万人にのぼるそう。特に注目すべきは、2025年問題。
心不全が「心不全パンデミック」と呼ばれる所以は、その急激な患者数の増加にあります。高齢化が進む日本では、心不全による救急搬送が心筋梗塞による搬送を大幅に上回っているのが現状です。
AI技術が変える心不全の早期発見

イベントの目玉の一つは、AIやテクノロジーを活用した未来の医療についての解説でした。順天堂大学の鍵山暢之先生は、心エコー(心臓超音波検査)図とAIを組み合わせた研究成果を紹介。
AIが可能にする診断技術
・心電図のみで心不全を99%診断
・スマートウォッチによる心不全モニタリング
・ウェアラブルデバイスからの連続健康監視
「携帯心電計やスマートウォッチなど、技術の進歩は想像を超えるスピードです」と小室先生。
将来的には、自宅にいながら日常生活のデータが自動的に病院に送信され、AIが解析して必要なときだけ受診するという「2040年の医療」が実現する可能性があるそうです。
今日からできる心臓ケア

専門医たちが口をそろえて強調したのは、心不全を「予防」する重要性です。心不全は生活習慣の改善で予防・進行抑制が可能な疾患だからです。
すぐに始められる心臓ケアとして挙げられたのは、以下の4つ。
・禁煙、減塩、節酒
・適度な運動と肥満予防
・毎日の体重、血圧測定
・処方薬の確実な服用
小室先生いわく「心不全は大変怖い病気だけれど、がんと大きく異なるのは予防がとても有効なことです。普段からよい生活習慣を身に着けて、心不全にならない、繰り返さないようにしましょう」とのこと。
本田望結さんも「今日この会場に来る前と後では全然気持ちも違う。私たちの役目は、ここで学んだことを1人だけにでも伝えることだと思います」とコメント。
この機会に、みなさんも自分の心臓の健康について考えてみませんか。