9月16日(金)からNetflix全世界独占配信&日本全国ロードショーされる、スタジオコロリドの長編アニメーション映画第3弾『雨を告げる漂流団地』。同スタジオで『ペンギン・ハイウェイ』(2018)を手がけた石田祐康が監督を務めた本作は、小学6年生の幼馴染である熊谷航祐と兎内夏芽、そしてその仲間たちが入り込んだ取り壊し前の団地が大海原を漂流するという、ひと夏の冒険が描かれていく。

異色のファンタジー作品を牽引するのは、少年少女のリアルな佇まいだ。航祐役・田村睦心さんと夏芽役・瀬戸麻沙美さんに、本作の魅力や演技への取り組みについて伺った。

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――出演が決まった際の率直な感想は?

田村 凄く単純ですが、航祐役が決まったと連絡を戴いた時はとても嬉しかったです。こういうメジャーな作品は俳優さんや子役の方がメインで演じられるのかな、なんて思いながらオーディションを受けさせていただいていたので「やった! でも、私で良いのかな?」って思いました(笑)。

瀬戸 劇場長編アニメなら普段のお仕事とは違う取り組みができる、ということで「ぜひやりたい!」とオーディションに臨んだのですが、どんな夏芽像が求められているのかわからなかったので、自分の想像したイメージを素材としてまとめた感じで、正直手応えと言えるものはその時なかったんです。忘れた頃に合格の連絡を頂いて、しかも田村さんと共演というお話だったので、「台本、いつ届くのかな」と待ち遠しかったです。

『雨を告げる漂流団地』田村睦心&瀬戸麻沙美のお薦めポイントは「全部」

――田村さんとの共演がなぜ楽しみだったんですか。

瀬戸 田村睦心という人はですね……。

田村 何、その言い方!(笑)

瀬戸 むっちゃん(田村睦心)とは、ずっとアニメでもプライベートでもご一緒していて……少年役といえば田村睦心、というイメージがあるじゃないですか。

田村 ありがとうございます!

瀬戸 やっぱりとても素敵じゃないですか。オーディションでキャラを見た時から「これはもうむっちゃんでしょ!」と思ったんですよ。しかも、こうしてむっちゃんとしっかりとぶつかり合ってお芝居するのは初めてで。


田村 そうなんですよ。同じ作品には出演していたのですが、それぞれ違う場所で演じていたりしていたので、絡んだことはなかったよね。

瀬戸 だから「むっちゃんに負けない」というか、どうやったら自分の演技でむっちゃんに「瀬戸ちゃん、やるじゃん!」と思わせることができるか、なんていう作品とは関係ない私自身の下心がありました(笑)。

田村 私だって、一緒に演じていて「やり易いな」「楽しいな」と思ってもらえるように頑張らなきゃ、と思いましたよ。瀬戸ちゃんが凄い声優なのは知っているので、今回の ”活発だけど陰のある女の子” をどう演じるんだろう、というワクワク感があって。実際声を聞いた時、水のような爽やかな感じで耳に入って来て「これかー!」と(笑)。
思わず納得でした。

(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ

――シナリオを読んだ印象はいかがでしたか。

田村 子供たちが思った以上に過酷な状況に置かれていて、最初に読んだ段階でもう泣いていました。私、バカみたいに涙腺が緩いので「アフレコ、大丈夫かな」って(笑)。

瀬戸 初めて会った『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の現場でも、最終回号泣してたよね。
「田村さん、ティッシュです」って渡されてて……。

田村 あの時、私ティッシュボックス買って行ったの(笑)。「これはヤバい」と自分で思ってたから。

瀬戸 私は家でただ読んでいた時は大丈夫でしたけど、家で演技プランを考えながらやっていた一人リハが一番感情がノッて涙が出たので「この感覚を現場でも!」と思って臨んだんですが、まあなかなか上手くいかず……というわけで質問に戻りますと(笑)、夏芽の抱えている悩みが思った以上にあって、自分の経験から引き出せるものがあまりなかったんですね。なので台本読みもじっくり取り組んで「どうして夏芽はこういう行動に出るんだろう」と考えていきました。

第三者的な視点から取り組んだのですが、親のケンカを止める回想シーンを演じていて初めて「あ、夏芽の気持ちが分かった」と感じられたんですね。
自分とは遠い存在だと思っていたんですが、同じような経験をしていたんだと理解出来た時、涙が出ましたね。

――田村さんは役作りで苦しんだ部分はありましたか。

田村 オーディションや家でのリハはそこまで苦しくなかったのですが、今回の作品は同じ場面を違うニュアンスで何度か録り直すことがあったんです。航祐くんってブツクサ怒っているところがあって、リアルだとそこまで大変じゃないと思うのですが、観客にしっかり届く形でブツクサ言うのって、こんなに難しいのか!って。あと、彼のリアクション「あ、別に」みたいな感じで薄いんです。私はそういう感情面を豊かに出しがちなタイプなので「お前の気持ちがわからんよ」と。
もう匙加減が大変でした。

――演技を抑えめにすればよい、ということでもないんですね。

田村 抑えすぎると「ちゃんと伝わっているのかな?」と心配になって。でも、その聴こえるかどうかのブツクサ加減が「察してくれよ!」という彼の気持ちを語っているんですね。そこは新しい発見でしたね。

――本作で注目してほしいポイントをお教えください。

田村 個人的にはアクションシーンです。こんなに綺麗な絵なのに、とってもよく動くんですよ。とても細かい人間描写をしていながら、普通はこんな動きはできないよ!という、リアルとアニメのいいとこ取りをしている感じがする。そうだよね?

瀬戸 実写的なのにちゃんとアニメーションなのが良い。

田村 それ!

瀬戸 あと、音周りの表現がすごいです。劇伴や挿入歌も素晴らしいですけれど、私たちが吹き込んだお芝居や、団地や学校ならではの音の響きや距離感だったり、周りの環境を踏まえての音の変化が素晴らしいと思います。

田村 全部が注目ポイントです!
『雨を告げる漂流団地』田村睦心&瀬戸麻沙美のお薦めポイントは「全部」

左:田村睦心(たむら・むつみ)
6月19日生まれ。東京都出身。主な出演作に「ヨルムンガンド」シリーズ(12)ヨナ役、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」シリーズ(15~20)フィン・ディムナ役、「小林さんちのメイドラゴン」シリーズ(17~21)小林さん役、「映像研には手を出すな!」(20)金森さやか役、「デジモンゴーストゲーム」(21~)天ノ河宙役、「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」(22)エルメェス・コステロ役などがある。

右:瀬戸麻沙美(せと・あさみ)
4月2日生まれ、埼玉県出身。主な出演作に「ちはやふる」シリーズ(11~20)綾瀬千早役、「放浪息子」(11)高槻よしの役、「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」(18)桜島麻衣役、「盾の勇者の成り上がり」シリーズ(19~22)ラフタリア役、「荒野のコトブキ飛行隊」(19)レオナ役、「呪術廻戦」シリーズ(20~)釘崎野薔薇役、「トロピカル~ジュ!プリキュア」(21~22)滝沢あすか/キュアフラミンゴ役などがある。

撮影/荒金大介

(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ