7月9日(日)19時よりBS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉にて放送される『ルパン三世 霧のエリューシヴ』。2007年に初放送されたTVSP第19作はシリーズでは珍しいSF/ファンタジー要素、そして過去作へのオマージュを同時に楽しめる異色作だ。


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『ルパン三世』生誕40周年記念作品として制作された『霧のエリューシヴ』は、何とタイムトラベルをテーマにしたSFタッチの1作として仕上がっている。
ルパンと次元は不二子の頼みを受け、時を貫くお宝「白きたまゆら」の手掛かりを求めて北海道浜中町の霧多布岬近くの海底をサルベージしていた。そこに北海道警を引き連れた銭形警部が登場、待機していた五ェ門も合流してのお馴染みの追いかけっこが始まった。
ところが逃走劇の道中、ルパンたちは対向車の運転手が消えたり、河にかかっていた橋が突然消滅するなど、不可解な現象を目にすることになる。導かれるように灯台へとたどり着いたルパンたちは、そこで魔毛狂介(まもう・きょうすけ)と名乗る男と出会う。
魔毛が放つ不思議な光に包まれたルパンたち、さらにはそれを追って光に飛び込んだ銭形は、気が付くと500年前の世界に連れてこられてしまっていた!?
タイムパラドックスが鍵となる展開や、500年前の世界で出会う不二子によく似た女泥棒など、ストーリーは見どころもたっぷり。
関根麻里、中村獅童ら豪華ゲスト声優にも注目だ。

ルパンとタイムトラベル、と聞けば、熱心なファンの頭にはTVアニメ第1シリーズの第13話「タイムマシンに気をつけろ!」が浮かぶのではないだろうか。こちらはタイムマシンを操る魔毛狂介が、ルパンの末裔に自身の一族を滅ぼされた復讐のため未来より来訪。ルパンという存在そのものを消し去ろうと目論むエピソードだ。
ストーリーに直接の関連性はなく、また登場する魔毛というキャラクターもまったくの別人として描かれているが、本作が「タイムマシンに気をつけろ!」へのオマージュを捧げていることは間違いないだろう。
また本作は珍しく日本が舞台となっているが、登場する北海道浜中町は原作者モンキー・パンチの出身地であり、そういった細かい設定からも原作コミックへのリスペクトを感じることができる。


原作:モンキー・パンチ(C)TMS

さらに本編を細かく観ていくと、冒頭のフィアット500に乗ったルパン一味と銭形のカーチェイスから始まり、全編を通してアニメ過去作を想起させるシーンが描かれていることに気づかされる。
しかも、あからさまな引用やパロディといった形ではなく、シーン全体の雰囲気がどことなく過去作と重なったり、キャラクターの対峙の仕方や表情、細かいポーズといったさりげない描写を重ねることで、視聴者に思い出の名場面を想起させるという演出が実にスマートだ。

わかりやすい例を挙げるなら、終盤でルパンが魔毛に対して「あるアイテム」を突きつけて交渉する場面。そのルパンの表情やポーズからは、映画『ルパン三世 カリオストロの城』のクライマックスで、ルパンが「指輪の謎を教えてやろう」とカリオストロ伯爵に迫るシーンを彷彿させられるはずだ。
ちなみに本作の制作を担当したのは、その『カリオストロの城』やTVアニメ第2シリーズも手掛けたテレコムアニメーションフィルム。過去作をさりげなく取り込む気の利いたオマージュも、テレコムだからこそ可能だったのかもしれない。


そんな数々のオマージュ的要素の中でも特に注目したいのは、TV第1シリーズや『カリオストロの城』でキャラクターデザイン・作画監督を務めるなど、『ルパン三世』といえば決して欠かすことのできないレジェンド・大塚康生氏の ”特別参加” だ。
1995年の劇場版『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』以来12年ぶりに『ルパン三世』に参加することになった大塚氏は、TVSPシリーズに初めて導入されたアイキャッチを担当。「ルパンが車(本作で乗るフィアット500)に飛び乗るも、転げ落ちてズッコケる」という、TV第2シリーズのアイキャッチに目配せした軽妙なアニメーションを見ることができる。

そんな本作の様々なこだわりは、まさしくスタッフの熱い「ルパン愛」の表れと言えるだろう。生誕40周年記念作品ならではの見どころを、ぜひ隅々まで楽しんでもらいたい。

原作:モンキー・パンチ(C)TMS