「パトレイバー」シリーズ35周年とEMOTION レーベル40周年を記念して、8月10日(木)= ”パト(8.10)レイバーの日” に新宿ピカデリーで『機動警察パトレイバー the Movie』の上映会が開催、泉野明役・冨永みーなと篠原遊馬役・古川登志夫が登壇する舞台挨拶が行われ、収録当時のエピソードが語られた。

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『機動警察パトレイバー』は、マンガ家のゆうきまさみ、脚本家の伊藤和典、メカニックデザイナーの出渕裕、キャラクターデザイナーの高田明美、演出家の押井守の5人からなるクリエイター集団《ヘッドギア》によって1988年に全6話のOVAシリーズとしてスタート。

汎用人間型作業機械=レイバーが発達し「レイバー犯罪」と呼ばれる新たな脅威が生み出された20世紀末の東京を舞台に、「イングラム」と呼ばれるレイバーに搭乗し、これに立ち向かう警視庁特車二課の活躍を、時にコメディタッチで、そして時にシリアスに描いていくストーリーにアニメファンは熱狂。
その作品世界はコミック、劇場版、TVアニメ、新作OVA、実写ドラマと様々なフォーマットで展開され、現在も新作アニメ『機動警察パトレイバーEZY』も制作進行中と、時代を超えて数多くのファンに愛さ続けているシリーズである。

今回上映された『機動警察パトレイバー the Movie』は1989年公開の劇場版第1作だ。
何者かが仕掛けたコンピュータウイルスによって都内各所で作業用レイバーが次々と暴走する事態が発生。
泉野明、篠原遊馬ら警視庁特車二課第2小隊の隊員たちは、残された手掛かりを辿りながら姿なき犯人を追いかけていくが、メガロポリスを混乱に陥れたレイバー暴走は、さらなる事件の幕開けに過ぎなかったーー。

ミステリアスに進行するスリリングなストーリーと痛快なアクション、そしてドタバタ劇と衒学的・思索的描写、静かな詩情が共存する押井守監督の演出が見事に融合することで、唯一無二のエンタテインメント映画となった本作は、シリーズの中でも特に評価の高い作品のひとつだ。


冨永と古川は、司会のタレント・天津向の紹介で登壇。冨永は「34年前に公開された作品をお家で何回も観ることはあったとしても、こうしてまたみなさんと劇場で観られるのは奇跡ですね」と感慨深そう。続いて古川が「本当に、『パトレイバーは何回も観ちゃう作品なんですよね。『パト1(本作の通称)』面白いですよね!」と述べると、場内からは大きな賛同の拍手が起こった。

また、冨永が「今日、はじめて『パトレイバー』を観たという方はいらっしゃいますか?」と声を掛けると、客席で何人かの手が上がり、「ありがとうございます! 34年前から好きな方と、今、こういう機会があって初めて観るという方が今、一緒にいらっしゃるってすごいことですね」と作品の確かな力をあらためて実感したようで、嬉しそうな笑顔を見せていた。

(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA

本作も含めた『パトレイバー』シリーズ全体に共通する魅力のひとつが、卓越したキャスト陣による会話劇と、そこから生み出されるキャラクターの個性であることは論を待たないだろう。


そんな『パトレイバー』のアフレコ現場や共演者たちについて、古川は「それぞれ勉強してこられた道筋もみんな違うし、ひとりひとりみんなお芝居や演技論自体がまったく違っているんです。みんさん演技力のある方ばかりで、しかも演技の質がみんな違うというのがすごく印象深くて。後藤隊長の大林(隆介)さんなんか、僕の中には全然ない演技論なんです。普通なら『南雲さん(フラットなイントネーションで)』と呼びかけるところを、『南雲さぁ~ん(独特のイントネーションで)』と言ったりする感覚は僕の中にはないもので。千葉(繁)さんさんもそうだし、みなさん違う演技論で、それを何とか盗みたいなとスタジオで躍起になっていた記憶がありますね」と振り返った。

また、冨永が「私自身、いろいろな作品をやっている中で、泉野明はいちばん自分に近いって思っているんです」と述べると、古川が思わず「同感!」と相づちを打つ場面も。

自身たちのみならずキャスティング全体に「キャラクターとキャストの近さ」があったという印象を二人ともに感じているそうで、
「(OVAで)2~3回録りはじめた段階で ”自分のままで演じていいんだ” ということはみなさんもう気付いていて。いわゆるアニメ声やアニメ的な台詞の言い回しではなく、古川さんが喋っているようにーーつまり ”古川遊馬” か ”篠原登志夫” かにしてください、と(笑)」(古川)
「きっと、他のキャストのみなさんもそう思っていらっしゃると思います。今、観ていただいた特車二課のメンバーと、スタジオの中で声をやっている声優の私たちと、すごく似ているんです。性格が似ているというわけではないですけれど、内面から出てくるものが何となく似ていて。だからみなさん、演技をしているのか、本当にここで(素の)会話をしているのか(わからなくなるような)、とても特殊なスタジオでした」(冨永)
と、それぞれに当時演じていた頃の感覚を語ってくれた。

それぞれに卓越した演技力と個性的な ”演技論” を持つキャスト陣の、等身大で自然体な演技が生み出す会話劇ーー『パトレイバー』シリーズの、時代を超えるキャラの魅力を作り上げた秘密の一端が明かされる、貴重な舞台挨拶となった。


(C)1989 HEADGEAR/BANDAI VISUAL/TOHOKUSHINSHA