約20年の年月を経て、遂に「SEEDシリーズ」完全新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が、全国大ヒット公開中だ。
今回は『ガンダムSEED DESTINY』の主人公であり、『FREEDOM』ではキラの部下としてコンパスに所属、イモータルジャスティスガンダムのパイロットとして活躍するシン・アスカ役の鈴村健一に、本作の感想やシンへの思いなどを語ってもらった。


※本文にはネタバレ要素が多く含まれます。劇場版ご鑑賞前の方はご留意ください。

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──まず本作の制作決定を聞いた時、どう思われましたか?

鈴村 そもそも「劇場作品になる」と聞いたのは20年前なんですけどね(笑)。その時に感じた衝撃と「すごいことが起きそうだ!」と思ったことはよく憶えています。そこから20年が経って「いよいよ」って話が聞こえてきてはいたのですが、「本当にやるんだ」という確信を得たのはアフレコをした後でした。

大ヒット作品のリブートはよくありますが、今回の『FREEDOM』って前作から地続きとなる続編ですからね。
それが遂に公開されるということで、当時のファンはどんな感じで観るんだろう、『SEED』を知らない人が観てくれた時どう思うのか、もしかして親子二世代で観に来てくれるのかな、とかいろんな反応を想像したりしていました。

──鈴村さんにとって『ガンダムSEED』シリーズはどのような存在なのでしょうか。

鈴村 「すごい作品だなぁ」と、20年経った今になって改めて思いますね。「これからどうやって自分が声優の世界で頑張っていけばいいんだろう」と考えていた20代の時にシン・アスカというキャラクターに出会って、あのムーブメントを体験できたのは自分にとって大事な経験になりました。すごく端的な言葉で言うと、一言「感謝」って感じです。

──「SEEDシリーズ」ならではの魅力や面白さというのは、どういう部分に感じられますか。


鈴村 偉大なファーストガンダムを現代の形でリブートした、その一つの答えが「SEEDシリーズ」だった感じがします。中でも魅力的だったのはメロドラマなところですね(笑)。毎回30分に山や谷があって、最後に実に分かりやすく「来週も観てね」という引きがしっかりある。王道のドラマツルギーというか、そういう作り方をしていたところに自分もハマって観ていましたし、今の若い人にとってもきっと色褪せない普遍性のある面白さを持った作品だと思います。

──では、シンというキャラについてはいかがでしょう?

鈴村 当時はとっても難しい役だと思っていました。戦争に巻き込まれ悲惨な形で家族を失ったことから、本来の素直で明るく元気なところがほとんど描かれず、とにかく何かに当たり散らすみたいな子になっていて……そんな面が彼の本質だと思われないように演じないといけない部分があったので、収録はすごく大変でした。

あと『SEED』が大ヒットしていた最中での続編でしたので、「『DESTINY』も当然大ヒットしますよね?」みたいな空気感が現場やお客さんにあって、そんな注目の中で作品に関わるのはものすごいプレッシャーでしたね。

──『FREEDOM』の台本を初めて貰った時の感想をお聞かせください。

鈴村 どんな作品になるのか全く想像できなかったので、ドキドキしながら読ませてもらいました。最初の感想は「シンはとっても分かりやすいな」ってことでしたね。すごく素直な子だっていうことが明確に描かれていて、褒められたら嬉しいし、怒られたら噛みつくし、『DESTINY』の時よりも単純だなって(笑)。でもそんな感じが愛らしくて「可愛いな」って思いました。

あとは後半の戦闘のセリフが「うおー!」とか叫び声ばかりだったんですが、アフレコで絵が入っているのを見たらメチャクチャ活躍していて「こういうことだったんだ」ってビックリしました。

──アフレコの掛け合いなどで思い出に残っていることをお聞かせください。

鈴村 子安さんが休憩時間に「ちゃんとシン・アスカだったね」って言ってくれたのがとても嬉しくて。「20年近く経ってまだこれができるっていうことは、ものすごく良いことだよ。凄いことだよ」って褒めてくれたのでメチャクチャ元気になりました(笑)。

(C)創通・サンライズ

──アフレコ中には、福田監督とどのようなお話をされましたか?

鈴村 子供っぽさみたいなことを大事にして、そんな子供ならではのコミュニケーションで起きるズレや葛藤、悩みを声だけで表現してほしいということを言われました。
「本来実は明るく元気な子なので、そういうものを出してほしい」とか、例えば溜め息も「若い子が『何か俺ってダメだな……』という感じに溜め息をついてほしい」など、そういったオーダーを受けて細かく微調整をしながら収録を進めていった感じです。

──シンはキラにものすごく懐いている様子でしたが、鈴村さんはそんな二人を見てどう思われましたか。

鈴村 やっぱりホッとしましたね。シンがキラをリスペクトしているところから、この映画はスペシャルエディションの最後から繋がる物語だっていうのが明確に分かるんですよ。「キラは頑張りすぎている、自分をもっと頼ってほしい」みたいな思いが感じられて、そこまで二人の距離は近づいたんだって嬉しくなりました。

──演じていて、シンの成長は感じられましたか。


鈴村 いや、成長はしていないんじゃないかな(笑)。相変わらずすごく噛みつくくせに、物事の本質に関しては自分でロックをかけてしまって気持ちを吐露できない思春期炸裂な感じは残っていますので。
でも、距離は縮まった感じがあるのに、どこかすれ違っちゃっているところもあるキラに「よろしく頼む」的なことを言われてシンがやる気を出すスイッチの入り方は、やっぱりメチャクチャ可愛いしカッコ良いですよ。「俺が何とかする」って言って、本当に何とかするあたりはキラ以上に主人公っぽかったです。

──クライマックスはシンがキラ・アスランと共闘していくわけですが、彼らがチームとなって戦う姿をご覧になっての感想はいかがでしたか。

鈴村 「良かったなぁ」って(笑)。キラとアスランって『SEED』ではずっと仲たがいしていて、さらに『DESTINY』ではシンも加わって三人がそれぞれ対立する関係だったので、この3人が一緒に戦うのはやっぱり胸熱な展開だと思いますし、ここにくるまで「20年、長くかかったな」っていうのが正直な感想ですね(笑)。
僕としても嬉しかったし、「こういうのを観たかった!」っていうファンの願いを叶えてくれる「SEEDシリーズ」ならではの王道らしさが『FREEDOM』で描かれたのは素敵でしたね。

──鈴村さんから見た『FREEDOM』のストーリーのポイントや見どころについてお聞かせください。

鈴村 今回の劇場版はキラとラクスの物語だと思うので、やっぱりそこがポイントになってくるかなと思います。作品全体を通して『SEED』ってやっぱりキラの物語なんですよ。その物語がどこにたどり着くかが『FREEDOM』で描かれますし、ファンの皆さんにとっても「二人のことを今まで見てきて良かったな」と思えるお話になっていると思います。
シンに関しては「褒められた!」「やったらぁ!」「ドーン!」みたいにすごく分かりやすいところは勿論のこと(笑)、後半の大活躍なところで彼がこの作品において一番ヒーローっぽいっていうところが見どころになっています。そこはぜひご覧頂きたいですね。

──では最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いいたします。

鈴村 いよいよ約20年の時を経て公開になります。待ちましたよね、皆さん(笑)。でも待った甲斐はあると思います。皆さんが支えてくれたおかげで劇場公開の日を迎えることができたと確信していますし、そんな皆さんの期待に応えられる作品としてお届けできたと思っています。
僕もシン・アスカの声でできることは一生懸命やったつもりではありますので、ぜひ楽しんで観ていただけたなら嬉しいです。

鈴村健一(すずむら・けんいち)
9月12日生まれ。インテンション所属。主な出演作は『銀魂』(沖田総悟)、『銀河英雄伝説 Die Neue These』(ヤン・ウェンリー)、『鬼滅の刃』(伊黒小芭内)、『ドッグシグナル』(丹羽眞一郎)、『勇気爆発バーンブレイバーン』(ブレイバーン)ほか。

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