3月に帝劇で開幕し、6月まで続く国内ツアーを絶賛上演中の舞台『千と千尋の神隠し』による初の海外公演がスタート。5月7日にロンドン・コロシアムで初日となる舞台上演が行われた。
今回は大盛況となった舞台初日の模様や、千尋役を演じた橋本環奈と上白石萌音のコメントをご紹介!

舞台『千と千尋の神隠し』は、10歳の少女千尋が、神々の世界に迷い込み豚の姿に変えられてしまった両親を救う為に懸命に働き、生きる力を呼び醒ます姿を描いた宮﨑駿による大ヒットアニメーション映画を基に、2022年に東宝創立90周年記念公演として初の舞台化がなされた作品。
2024年は3月の東京・帝国劇場を皮切りに、名古屋・御園座、福岡・博多座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、北海道・札幌文化芸術劇場 hitaruで上演が決定。さらにこの全国ツアー公演と並行して、日本人キャストによる日本語での海外上演としては演劇史上最大規模、また東宝株式会社主催公演としても史上初の試みとなる『千と千尋の神隠し』初の海外公演(135公演を予定)が、イギリスのウェストエンド最大級の2300席を客席数を誇るロンドン・コロシアムにて開幕。5月7日の14時公演(千尋役:橋本環奈)、及び18時公演(千尋役:上白石萌音)より初日を迎えることになった。

記念すべき初日の舞台では、冒頭での引っ越しの車中で千尋が「ベー」と舌を出したりといった映画を思い出させる演技などに観客は大喜び。神さま達が油屋を訪れる場面では、グランドサークル(客席内)に設置された提灯が点灯し、会場全体が不思議な街となるといったロンドン公演ならではの光景も。
たくさんの神さまが油屋を訪れる中、カオナシが登場すると観客からは「わぁ」との声があがっていた。またゆっくりのっそり歩くおしらさまが姿を見せると劇場の温度は一気に急上昇。ほかにも湯婆婆の部屋のカーテンから登場した頭(かしら)が、「オイ、オイ」と動いてポーズを決めたりといったシーンなどで大きな笑いが起きていた。

休憩を挟んだ二幕でも客席の興奮はそのままに物語が進行。ハクの名前を思い出す、大きなハク竜と千尋のシーンは映画と同じくクライマックスの象徴的なシーンということもあって、劇場中の観客たちは食い入るように見入っていた。
カーテンコールではスタンディングオベーションが起こり、割れんばかりの拍手と歓声、指笛が鳴り響くなど大盛り上がり。
約3時間の上演時間の間、イギリスの観客たちを終始魅了し続けた、驚きと感動に満ちた舞台となったようだ。

初日公演を迎えた橋本環奈はカーテンコールの熱狂に驚いたようで、「(ロンドンでも)あたたかい歓声で迎えられて本当に嬉しかった」と笑顔でコメント。上白石萌音も観客からのスタンディングオベーションに「浴びたことのない熱気を浴びて、しばらくボーッとしてしまうぐらいビックリした」とのこと。舞台については日本語での演技ありながらちゃんと観客に言葉が伝わっている手応えを感じたようで、セリフのないシーンも含めてキャストと観客が言葉を超えて「一緒に(舞台を)作っているなという感じがしました」と満足そうに語ってくれた。

このロンドン・コロシアムでの上演は5月から8月までの4ヶ月間公演を予定。観客動員は約30万人が見込まれている。
日本から世界への第一歩となるこのロンドン公演の行方を、今後も注目していきたい。

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【橋本環奈(千尋役)コメント】
――日本人俳優として、ロンドン・ウェストエンドで舞台のセンターに立ち、ステンディングオベーションを受けた気持ちはいかがですか
橋本 今日が初日なので、初日の反応であったりとか、どういうふうな感じになるんだろうという、ワクワクが大きいんですけど、プレビューの段階でも日本人のお客様と全然違って、いろんなところで笑いが起こったり、ロンドンの方たちのジブリ好きな気持ちであったり、お酒を飲みながら観ていたり、ポップコーン食べたり、鑑賞スタイルがすごく気楽な部分が、本当に素敵だなと思っています。土曜日とかは小さなお子さんもいらっしゃいました。
そういう方々が見てくださっていることも嬉しいですし、カーテンコールのあの熱狂を感じた時、本当にすごいなと思いました。もちろん日本人の方々の、声には出さないけど、すごく楽しんでくれてる気持ちって、舞台に立っていてすごく伝わるんですね。(ロンドンでも)あれだけあたたかい歓声で迎えられて本当に嬉しいなと思いました。


――カンパニーの皆さんとの生活はいかがですか?
橋本 初演の2年前の時からずっと一緒にいるカンパニーの皆が本当に大好きで、ロンドンに来させて頂いてからも、部屋で皆で集まってご飯を食べながら、しゃべったり、本当に仲良くなれて一緒に舞台に立っているキャストもそうですが演出家のジョン(・ケアード)であったり(今井)麻緒子(共同翻案)さんであったり、トビー(・オリエ パペットデザイン・ディレクション)、サラ(・ライト アソシエイト・パペットディレクター)、ブラッド(・ハーク 音楽スーパーヴァイザー・編曲)達ともたわいもない会話をしたりとか仲間という言葉が本当に適切な表現につながると思えるくらい、心から信頼できる皆とロンドンの舞台に立てて本当に嬉しく思います。

――舞台『千と千尋の神隠し』のどんなところがロンドンで受け入れられたと思うか。
橋本 作品の強さはもちろんですが、ジブリがこれだけ世界に愛されている理由は、本当に様々あると思うんですよね。でもその中の一つを挙げるとしたら雑巾がけのシーンとかも日本ならではだな、という話をしているんですけど、ごめんなさい、と千尋がすごく謝っているような日本人らしいところを、ロンドンでも、日本でやっていた公演から本当に変えていなくて日本の良さやリアルを伝えられる部分はこの演劇ならではだと思いますし、ロンドンの方々から観ても楽しんで受け入れて頂けているのではないかなと思っています。

――ロンドン生活での楽しさ、発見は?
橋本 もうすでにロンドンが大好きです。イギリス自体初めて来るので「どういう街なんだろう」と思っていましたが、来てみて、本当に最高だなと……。
街並みもそうですし、つたない英語でも聞いてくれたり、質問を返してくれたりとか、受け入れるという、文化や歴史の背景があると思うんですけどロンドンの方々が優しくてあたたかいんです。
劇場で見てくださっている方々の反応であったりを見ていても受け入れてくれる人柄や街並み、全て素敵だな、というふうに感じました。何をとっても良いところしか思い浮かばなくて、絶対また旅行で来るだろうと思うくらい大好きな街になりました。

【上白石萌音(千尋役) コメント】
――日本人俳優としてロンドン・ウェストエンドで舞台のセンターに立ってスタンディングオベーションを受けた気持ちはいかがですか
上白石 浴びたことのない熱気を浴びて、しばらくボーっとしてしまうくらいびっくりしました。お客様達がとても喜んでくださったのが伝わって来て嬉しかったです。
カーテンコールの最後に千尋がオンマイクで「ありがとうございました」と言うのですが、その瞬間に、私は日本人で、私たちは日本から来て日本語で作品を届けたんだなという実感がせりあがって来てグッときました。
毎回そこで感じるものがあります。

――日本とロンドンのお客さんの反応の違いはありますか
上白石 思ったことをそのまま出力してくださる感じがします。すごく楽しみに来てくださっているんだな、というのが伝わってきてうれしいです。客席でお酒を飲んだりポップコーンを食べたりなさっているので、全体の空気感が堅苦しくなくてリラックスしています。同時にすごく演劇へのリスペクトがある、素敵な空間だなと思います。

――舞台『千と千尋の神隠し』のどんなところがロンドンで受け入れられたと思いますか?
上白石 日本人がすごく日本人をやっているというところが大きいんじゃないかと思います。日本らしさを前面に出したシーンや動きがしっかり受け入れられているのを感じるので、これは私たちだから出来ることなのかな、と思っています。セリフにもたくさん反応があります。母国語ではない言葉で作品を観るのはお客様もエネルギーを使うことだと思いますが、ちゃんと言葉が伝わっているんだな、というのを感じて凄く嬉しいです。この作品には言葉のないシーンも沢山ありますが、そこでは日本で感じるのと同じような集中力や言葉のいらない一体感が共通してあって、「ああ一緒に作っているな」という感じがします。

――カンパニーの皆さんとのロンドンのお稽古はいかがでしたか?
上白石 色々なことが起きましたが、皆で励まし合って、緊張感を高めながらの稽古でした。知らない土地で長く暮らすとなると寂しさを感じるのかなと思っていましたが、このカンパニーにちゃんと属しているというか、居場所があるのがとても心強いです。
あとは、現地スタッフの皆さんとも沢山話をして、お互いに言葉を教え合っています。(ロンドンでも)日本のスタッフの皆さんと変わらない作品への愛を注いでくださって、国も言葉も関係なくワンチームになっているな、と感じながらお稽古していました。

――ロンドン生活での楽しさ、発見は?
上白石 アプリでパッとチケットを取って、演劇を観に行けるのが最高に幸せです。
稽古が早く終わった日は当日券を押さえて一人で劇場に行って楽しみました。
演劇でアウトプットをして演劇でインプットするという純度の高い生活を送っています。
夢のようです。