舞台は『超時空要塞マクロス』より80年後の未来世界。地球に侵攻するマルドゥーク軍と、地球統合軍との戦争が始まろうとしていた。
主人公のTVレポーター・神崎ヒビキは、戦闘を取材中にマルドゥーク軍の歌巫女・イシュタルの運命の出会いを果たす。
今回は、『マクロスII』主人公の神崎ヒビキ役を演じた高山勉(現・タカヤマツトム)さんと、イシュタル役を演じ、“歌姫”として挿入歌を歌った笠原弘子さんに対談形式でお話をうかがった。本作が世に出たのは1992年。22年前のアフレコの様子やヒビキとイシュタルの恋物語、『マクロス』ワールドの魅力など、存分に語っていただいた。
[取材・構成:渡辺由美子]
『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/
―ようやくBlu-rayとなってリリースされた『マクロスII』ですが、ヒビキ役のタカヤマさんとイシュタル役の笠原さんに当時のことをおうかがいしたいと思います。
タカヤマツトムさん(以下タカヤマ)
じゃあ、ジャーナリスト・ヒビキのレポート魂で笠原さんにインタビューしてみようかな。
笠原弘子さん(以下笠原)
私、全然覚えてないんですよ。むしろ新鮮な気持ちでビデオを観ちゃいました。二十何年ぶりに。
タカヤマ
オーディオコメンタリーでも「覚えていない」っておっしゃっていましたよね(笑)。……二十何年前のアフレコの現場では、僕たちは互いにそういう会話をすることもなく。この間、シルビー役の冬馬由美さんに言われたけど、僕はもう、アフレコの時はいっぱいいっぱいだったから(笑)
笠原
私も、あのころは余裕が全然なかったので。
タカヤマ
ぼくは実は、完全に違う作品のオーディションだって言われて行ったんですよ。言っていいのかな? 「『天地無用!』ですよ」って。
笠原
え? 全然違うじゃないですか。
タカヤマ
監督が八谷賢一さん、音響監督が本田保則さんで同じだったからかな。現場に行ってみたら、ヒビキの絵が飾ってあって。「え、『マクロス』なの? 何これやりたい!」と思って(笑)。『マクロス』1作目の頃もオンタイムで見ていて、新シリーズの『マクロスII』が制作される告知もアニメ雑誌を読んでて知っていたから、「受かったらこの作品ができるんだ」と思って。
そうしたら、1週間もするかしないかのうちに事務所から電話があって。うちの事務所、小っちゃい所だったんで大きな役が決まったことがなくて。
※『天地無用!』のオーディションも実際に行われた。
―笠原さんは『マクロス』シリーズについて思ったことはありましたか?
笠原
私も最初の『マクロス』は見ていました。絵も歌もすばらしい作品で、タイトルの重みをひしひしと感じていましたね。私自身、歌がすごく好きだったので、こんなすてきな作品で歌えるということがすごくうれしかったんです。……ただそこで、自分がどれだけの演技ができるかというプレッシャーはありました。小さいころから劇団でお芝居をやってましたけど、なかなかこう、自分が前に出たいっていうタイプじゃないので(笑)。
タカヤマ
プレッシャーかあ。私意外と冷静で「ああ、そうなんですか」っていう(笑)。
笠原
すごいですね。そのセリフが『マクロス』シリーズの主役でなんて。
タカヤマ
どうして私に決まったのか、いまだに分かりません(笑)。
笠原
こういうのってご縁ですよね。
マクロス7、マクロスプラス20周年記念
Blu-ray Boxが期間限定でアンコールプレス決定
マクロス7 Complete Blu-ray Box FIRE1
マクロス7 Complete Blu-ray Box FIRE2
マクロス7Blu-ray Box特設サイト https://www.bandaivisual.co.jp/macross7_bdbox/
マクロスプラス Blu-ray Box
マクロスプラスBlu-ray Box特設サイト https://www.bandaivisual.co.jp/macrossplus_bdbox/
■ 無鉄砲なヒビキと人見知りのイシュタル
―タカヤマさんはヒビキという少年をどう演じようと思いました。
タカヤマ
実はノープランでした。ようは、考えて演技をするほどのキャリアがなかったもので。ヒビキというより、あのときの自分そのままですね。
―ヒビキの魅力についてはどんなふうに思いました?
タカヤマ
やっぱり、あのまっすぐなところじゃないですかね。余計なことを考えずに演じていたことが、結果的に、自分自身とヒビキがオーバーラップしたのかもしれないですね。
笠原
今回改めて見て、ヒビキってすごく魅力的な男の子だなと思ったんです。今のアニメの主人公ってどちらかというと頭が良くて考え込むタイプが多いから、ヒビキのようなまっすぐな主人公はなかなかいないですよね。
イシュタル目線から見ても、言葉も通じない別の世界に来てしまったときに、出会ったのがヒビキでよかったなと。ヒビキが嘘偽りを言わないまっすぐな人だったからこそ、通じ合えて惹かれていったんだと思いますね。
タカヤマ
こんな無鉄砲なやつなのに。猪突猛進というか、ね。
笠原
まず自分の気持ちで動いてる感じがしますよね。
タカヤマ
それは思いますね。ヒビキにヒーローらしいところがあるとすれば、良くも悪くもまっすぐなとこですね。プロデューサーに食ってかかったり、イシュタルが(マルドゥーク軍の)フェフと会ってるときに、かまわず敵前に飛び出してみたり。おまえ撃たれるやんけ、っていうような(笑)。
笠原
そういう無鉄砲さがありつつも、すごく頑張っているところとか、だんだん成長していく過程が描かれていて、女子から見るとちょっとかわいかったり、助けてあげたかったりする。母性本能くすぐるところがありますよね。男の人目線で見ると違うのかもしれないですけど。
タカヤマ
ヒビキに対して、イシュタルとシルビーが惹かれてくれたっていう魅力が、まあそのいわゆる子どもっぽいとこでもあったり、何に対しても一生懸命だからなのかな。でもね、男の子的には少し物足りない。いかんせんね、ヒビキはバルキリーに乗って戦わないから。『スーパーロボット大戦』とか呼ばれたことないし。
笠原弘子さん
―笠原さんはイシュタルをどんなふうに演じようと思いましたか。
笠原
私はもともとプランを立てて演じるよりも、役に入り込むタイプなんですね。……それで私、当時人間じゃない役が多くて。
―え!?
笠原
演じるキャラクターが、異星人やロボットだったりと、感情をあまり表に出さない役が多かったんです。戦いの歌しか知らなかったイシュタルも、少し通じるところがありますよね。私も今でこそ人とお話しすることは全然大丈夫なんですけど、当時は本当にしゃべらない人だったので。そういう意味では、そのままの自分のままで、演じさせていただきました。ただ、物語の後半のイシュタルは自分の意思をもって動くので、しっかりしなきゃいけない部分はあったんですけれども。
タカヤマ
やっぱり笠原さんのちょっとはかなげな……今おっしゃってた通り……人見知り?
笠原
そうなんですよね。
タカヤマ
でしょ。だからイベントのときにも私たちは会話した記憶がないぐらい(笑)。
……おそらくイシュタルも人見知りだったと思うんですよ。マルドゥーク軍の中で籠の鳥みたいな環境で育ってきているから、それが笠原さんの声とすごくマッチングしたんだと思います。守ってあげたくなるキャラクターであり声でありっていうのは、僕も感じましたね。……結果的にヒビキとくっつかなかったのは意外だったんだけれども(笑)。
■ あの三角関係を、今こそ検証しよう!?
笠原
ヒビキとイシュタルって、素敵なシーンがいっぱいありましたよね。それまでマルドゥークで籠の鳥みたいな生活をしていたイシュタルが、ヒビキに外に遊びに連れて行ってもらう『ローマの休日』みたいなシーンもあって。今回見返して、こんな素敵なシーンを作っていただいたんだと改めて思い返しました。
タカヤマ
八谷監督から「テーマは『ローマの休日』だから」と聞いた記憶があって。構図的には世間知らずのイシュタルと、それを引っ張り回すジャーナリスト・ヒビキという形で。第2話で、ふたりでいろんな所に行って、2人の親密度を高める。真実の口とか映画まんまのシーンもあったよね。
笠原
そうですね。ふたりの親密度が高まって……でもあの結末は……私、今回見たときに、涙出てきちゃったんですよ。なんで!? と思って。自分の記憶の中ではヒビキと結構いい感じだったような気がしてのに。あらためて見たら結末が記憶と違っていて、切ない、と思って。
―ヒビキはシルビーと恋人になり、イシュタルは、マルドゥークの人々に歌を広めるために旅立っていくという結末でしたね。
笠原
そうなんです。イシュタルはヒビキとシルビーのキスシーンを目撃してしまったんですよね。なのにイシュタルは動揺もせずっていう……。普通じゃあり得ないですよね。やっぱり恋心を抱いていれば、ね? 多少なりとも衝撃を受けたりすると思うんですけど、それが一切表に出ていないから。冬馬さんとも話したんですけど、あのキス現場を見てイシュタルちゃんが何とも思ってないのがすごいよね、って。
タカヤマ
そうそうそう。ヒビキも、おまえは天然か! ってぐらい、あっけらかーんとしてね(笑)。
笠原
きっとそうなんでしょうね。そこがイシュタルちゃんの純真無垢なところというか。
タカヤマ
だって、くっついた当の本人であるヒビキ役の私もシルビー役の冬馬さんも、「え? ここでキスするの?」っていう感じでしたから。ヒビキがシルビーとキスしているとことをイシュタルに目撃されて、「イシュタル!?」って返すあのシーンは、アフレコのときに演技指導が入ったんですよ。
最初のお芝居では、ヒビキがびっくりしたイントネーションで演じてみたら、音響監督さんに「そうじゃなくて、もうちょっと優しく『イシュタル』って言って」っていうふうに言われました。
私個人の気持ちとしては、“やべ、イシュタルに見られちゃった”っていう方が大きかったんですよ。2話とか3話でイシュタルに向けてた気持ちが、シルビーと見つめ合った場面でコロっといっちゃったので(笑)。
笠原
ふーん。
タカヤマ
本当、妹のようにかわいがっていたイシュタルがいて、きょうだいのようにケンカしていたシルビーがいて。で、結果シルビーとくっついて、っていうような。ヒビキみたいな子っていうのは、姉さん女房みたいな人の方に惹かれるのかな?
笠原
どうなんでしょうね。
タカヤマ
汗がだんだん出てきた。
タカヤマツトムさん
―イシュタルはヒビキに対して未練はなかったんでしょうか。
笠原
イシュタルちゃんからしてみたら、きっと人の愛を知ったこととか何もかもが新鮮な体験だったんでしょうね。それまで普通の人としての恋愛感情を体験したことがなかった子ですから。
だから、ヒビキにも惹かれていたんだと思います。
あと、私が見てて思うには、やっぱりイシュタルとヒビキだと、ちょっとまだまだ幼いというか。
タカヤマ
ほら、ヒビキって良くも悪くも突っ走るヤツじゃないですか。前を突っ走ってるヒビキを後ろから見てくれているイシュタルと、横からチャチャ入れているシルビーと、というような図式だったので、ヒビキはふたりとの関係を深く考えずに突っ走れたんですよ。だから、演じる私もそこはむしろ考えなかったのも事実ですね、それは。
笠原
あー。そうなんですね。これが女性側がもっと積極的だったりすると違うんでしょうけど、イシュタルはそういう子じゃないから。お互い、自分から告白するタイプじゃないですよね。
タカヤマ
うん。でもヒビキとイシュタルは、うまく噛み合ってた感じはするんですよね。
笠原
見返して、この作品って、ふたりの関係とか心情の変化の描かれ方がナチュラルでとっても素敵だなと思ったんです。イシュタルには頼れる人がヒビキしかいなくて恋とか意識せずに慕っていた。ヒビキは、敵軍にいるイシュタルには隠さなきゃいけないことも多かったんだけど、だんだん彼女に興味が沸いてきて本気で助けてくれる。お互い、何の計算もなく純粋な気持ちで親愛の情が湧いたんですよね。そこが「恋愛」というくくりとはちょっと違うのかなって。
タカヤマ
たしかにね。たとえば月のフェスティバルに行って、アイドルの歌を聴かせてあげたりっていうシーンはお兄さん目線で、それがイシュタルに対する愛情だったのかな、という感じはするんだけど。
笠原
あー、そうですよね。……じゃあ、ヒビキを演じられている高山タカヤマさんご本人は、イシュタルのことをどう思っていたんですか?
タカヤマ
うーん。やべぇ、責められてる(笑)。ま、そこまで考えてなかったってのがぶっちゃけのとこですけどね(笑)。
笠原
(笑)あ、でもやっぱり優しいから、きっとどっちって言わない。
タカヤマ
ちゃうちゃうちゃう(笑) だって演じている最中は、最後にはイシュタルとくっつくと思ってましたもん。だけど二十何年経って腑に落ちたのが『ローマの休日』のラストなんですよ。「あ、なるほど。だからイシュタルとくっつかなかったんだ」って。歌姫は役割を果たすために旅立っていったから、くっつきたくてもくっつけなかったんだ、っていうのがね。
笠原
最後の最後、去り際にイシュタルちゃんが言うんですよ。シルビーに対して「素敵なライバル」って、ひと言だけ言うの。私見ていて、うわあーって涙が出てきて。もうなんて……なんて良いセリフなんだろうって。キュンってきます。
タカヤマ
切なくなりますね。連れ戻したくなる。ヒビキには「素敵なライバル」って聞こえていたのかな?
笠原
でも、それはシルビーに向けた、女同士のセリフなので。
タカヤマ
ヒビキはそのとき隣にいるシルビーに首ったけなんで。ばかやろうが(笑)。まあ、バカな男はかやの外でいいのかな、って思いつつ。
笠原
イシュタルのそういうところがかわいいなと思うんです。最後に「ちょっとだけ言ったな」みたいな。したたかなこともちょっと覚えて大人になってきたイシュタルの成長。
タカヤマ
ヒビキとイシュタルとシルビーの3人の関係は奥深いよね。もう少し続きをやってみたかった!
笠原
でも私……イシュタルがヒビキの元を去った理由、なんとなくわかる気がします。
―では後半は、その理由からおうかがいします。
(後編に続く)
『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/
『超時空要塞マクロスII』
13,800 円(税抜)
毎回封入特典: 特製ブックレット(108P)
毎回映像特典: ノンテロップOP&ED、#6 ノンテロップED、Blu-ray Box PV・CM
毎回音声特典 : 新規オーディオコメンタリー 、BD-Audio「イシュタルからの伝言」他
仕様 : 美樹本晴彦描き下ろし収納BOX 、大張正己描き下ろしインナージャケット
マクロス7、マクロスプラス20周年記念
Blu-ray Boxが期間限定でアンコールプレス決定
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主人公のTVレポーター・神崎ヒビキは、戦闘を取材中にマルドゥーク軍の歌巫女・イシュタルの運命の出会いを果たす。
今回は、『マクロスII』主人公の神崎ヒビキ役を演じた高山勉(現・タカヤマツトム)さんと、イシュタル役を演じ、“歌姫”として挿入歌を歌った笠原弘子さんに対談形式でお話をうかがった。本作が世に出たのは1992年。22年前のアフレコの様子やヒビキとイシュタルの恋物語、『マクロス』ワールドの魅力など、存分に語っていただいた。
[取材・構成:渡辺由美子]
『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN- Blu-ray Box』特設サイト
https://www.bandaivisual.co.jp/macrossII/
―ようやくBlu-rayとなってリリースされた『マクロスII』ですが、ヒビキ役のタカヤマさんとイシュタル役の笠原さんに当時のことをおうかがいしたいと思います。
タカヤマツトムさん(以下タカヤマ)
じゃあ、ジャーナリスト・ヒビキのレポート魂で笠原さんにインタビューしてみようかな。
笠原弘子さん(以下笠原)
私、全然覚えてないんですよ。むしろ新鮮な気持ちでビデオを観ちゃいました。二十何年ぶりに。
タカヤマ
オーディオコメンタリーでも「覚えていない」っておっしゃっていましたよね(笑)。……二十何年前のアフレコの現場では、僕たちは互いにそういう会話をすることもなく。この間、シルビー役の冬馬由美さんに言われたけど、僕はもう、アフレコの時はいっぱいいっぱいだったから(笑)
笠原
私も、あのころは余裕が全然なかったので。
でも、この作品に限らず、私、寝るとコンピューターみたいにリセットされちゃって、覚えていないんですよ(笑)。私よりも、周りにいた方が覚えていたりして。でも『マクロスII』のアフレコのときは、何かスイッチが入っててイシュタルちゃんの役に没入していたと思います。
タカヤマ
ぼくは実は、完全に違う作品のオーディションだって言われて行ったんですよ。言っていいのかな? 「『天地無用!』ですよ」って。
笠原
え? 全然違うじゃないですか。
タカヤマ
監督が八谷賢一さん、音響監督が本田保則さんで同じだったからかな。現場に行ってみたら、ヒビキの絵が飾ってあって。「え、『マクロス』なの? 何これやりたい!」と思って(笑)。『マクロス』1作目の頃もオンタイムで見ていて、新シリーズの『マクロスII』が制作される告知もアニメ雑誌を読んでて知っていたから、「受かったらこの作品ができるんだ」と思って。
そうしたら、1週間もするかしないかのうちに事務所から電話があって。うちの事務所、小っちゃい所だったんで大きな役が決まったことがなくて。
一番テンパってたのがマネージャーでした。「ききき、決まりそうなんだけどっ」って。おまえがあわてるな、っていう(笑)。「胃が痛くなった」って胃薬飲んでましたからね。(一同笑い)
※『天地無用!』のオーディションも実際に行われた。
―笠原さんは『マクロス』シリーズについて思ったことはありましたか?
笠原
私も最初の『マクロス』は見ていました。絵も歌もすばらしい作品で、タイトルの重みをひしひしと感じていましたね。私自身、歌がすごく好きだったので、こんなすてきな作品で歌えるということがすごくうれしかったんです。……ただそこで、自分がどれだけの演技ができるかというプレッシャーはありました。小さいころから劇団でお芝居をやってましたけど、なかなかこう、自分が前に出たいっていうタイプじゃないので(笑)。
タカヤマ
プレッシャーかあ。私意外と冷静で「ああ、そうなんですか」っていう(笑)。
第1話のアフレコ始まるときぐらいにようやく実感が沸いた感じですね。それまでは声優の仕事はほとんどやっていなかったんですよ。ぼく自身がジャパン・アクション・クラブ、JACの養成所にいたので。それまで声優をやっても、30分でひと言とかそういうのばっかだったのが、この作品で初めてまともに2行以上のセリフをしゃべった。
笠原
すごいですね。そのセリフが『マクロス』シリーズの主役でなんて。
タカヤマ
どうして私に決まったのか、いまだに分かりません(笑)。
笠原
こういうのってご縁ですよね。
マクロス7、マクロスプラス20周年記念
Blu-ray Boxが期間限定でアンコールプレス決定
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■ 無鉄砲なヒビキと人見知りのイシュタル
―タカヤマさんはヒビキという少年をどう演じようと思いました。
タカヤマ
実はノープランでした。ようは、考えて演技をするほどのキャリアがなかったもので。ヒビキというより、あのときの自分そのままですね。
本当に深く考えてないです。物語序盤の頃のヒビキって、熱血漢ゆえにちょっと暴走しがちな少年だったじゃないですか。でも本人、全然そのつもりはない。自分が正しいことをやってるんだって、自分もヒビキと同じ目線でしたよね、最初のころは。
―ヒビキの魅力についてはどんなふうに思いました?
タカヤマ
やっぱり、あのまっすぐなところじゃないですかね。余計なことを考えずに演じていたことが、結果的に、自分自身とヒビキがオーバーラップしたのかもしれないですね。
笠原
今回改めて見て、ヒビキってすごく魅力的な男の子だなと思ったんです。今のアニメの主人公ってどちらかというと頭が良くて考え込むタイプが多いから、ヒビキのようなまっすぐな主人公はなかなかいないですよね。
イシュタル目線から見ても、言葉も通じない別の世界に来てしまったときに、出会ったのがヒビキでよかったなと。ヒビキが嘘偽りを言わないまっすぐな人だったからこそ、通じ合えて惹かれていったんだと思いますね。
タカヤマ
こんな無鉄砲なやつなのに。猪突猛進というか、ね。
笠原
まず自分の気持ちで動いてる感じがしますよね。
タカヤマ
それは思いますね。ヒビキにヒーローらしいところがあるとすれば、良くも悪くもまっすぐなとこですね。プロデューサーに食ってかかったり、イシュタルが(マルドゥーク軍の)フェフと会ってるときに、かまわず敵前に飛び出してみたり。おまえ撃たれるやんけ、っていうような(笑)。
笠原
そういう無鉄砲さがありつつも、すごく頑張っているところとか、だんだん成長していく過程が描かれていて、女子から見るとちょっとかわいかったり、助けてあげたかったりする。母性本能くすぐるところがありますよね。男の人目線で見ると違うのかもしれないですけど。
タカヤマ
ヒビキに対して、イシュタルとシルビーが惹かれてくれたっていう魅力が、まあそのいわゆる子どもっぽいとこでもあったり、何に対しても一生懸命だからなのかな。でもね、男の子的には少し物足りない。いかんせんね、ヒビキはバルキリーに乗って戦わないから。『スーパーロボット大戦』とか呼ばれたことないし。
バルキリーに乗って活躍したかった!
笠原弘子さん
―笠原さんはイシュタルをどんなふうに演じようと思いましたか。
笠原
私はもともとプランを立てて演じるよりも、役に入り込むタイプなんですね。……それで私、当時人間じゃない役が多くて。
―え!?
笠原
演じるキャラクターが、異星人やロボットだったりと、感情をあまり表に出さない役が多かったんです。戦いの歌しか知らなかったイシュタルも、少し通じるところがありますよね。私も今でこそ人とお話しすることは全然大丈夫なんですけど、当時は本当にしゃべらない人だったので。そういう意味では、そのままの自分のままで、演じさせていただきました。ただ、物語の後半のイシュタルは自分の意思をもって動くので、しっかりしなきゃいけない部分はあったんですけれども。
タカヤマ
やっぱり笠原さんのちょっとはかなげな……今おっしゃってた通り……人見知り?
笠原
そうなんですよね。
タカヤマ
でしょ。だからイベントのときにも私たちは会話した記憶がないぐらい(笑)。
……おそらくイシュタルも人見知りだったと思うんですよ。マルドゥーク軍の中で籠の鳥みたいな環境で育ってきているから、それが笠原さんの声とすごくマッチングしたんだと思います。守ってあげたくなるキャラクターであり声でありっていうのは、僕も感じましたね。……結果的にヒビキとくっつかなかったのは意外だったんだけれども(笑)。
■ あの三角関係を、今こそ検証しよう!?
笠原
ヒビキとイシュタルって、素敵なシーンがいっぱいありましたよね。それまでマルドゥークで籠の鳥みたいな生活をしていたイシュタルが、ヒビキに外に遊びに連れて行ってもらう『ローマの休日』みたいなシーンもあって。今回見返して、こんな素敵なシーンを作っていただいたんだと改めて思い返しました。
タカヤマ
八谷監督から「テーマは『ローマの休日』だから」と聞いた記憶があって。構図的には世間知らずのイシュタルと、それを引っ張り回すジャーナリスト・ヒビキという形で。第2話で、ふたりでいろんな所に行って、2人の親密度を高める。真実の口とか映画まんまのシーンもあったよね。
笠原
そうですね。ふたりの親密度が高まって……でもあの結末は……私、今回見たときに、涙出てきちゃったんですよ。なんで!? と思って。自分の記憶の中ではヒビキと結構いい感じだったような気がしてのに。あらためて見たら結末が記憶と違っていて、切ない、と思って。
―ヒビキはシルビーと恋人になり、イシュタルは、マルドゥークの人々に歌を広めるために旅立っていくという結末でしたね。
笠原
そうなんです。イシュタルはヒビキとシルビーのキスシーンを目撃してしまったんですよね。なのにイシュタルは動揺もせずっていう……。普通じゃあり得ないですよね。やっぱり恋心を抱いていれば、ね? 多少なりとも衝撃を受けたりすると思うんですけど、それが一切表に出ていないから。冬馬さんとも話したんですけど、あのキス現場を見てイシュタルちゃんが何とも思ってないのがすごいよね、って。
タカヤマ
そうそうそう。ヒビキも、おまえは天然か! ってぐらい、あっけらかーんとしてね(笑)。
笠原
きっとそうなんでしょうね。そこがイシュタルちゃんの純真無垢なところというか。
タカヤマ
だって、くっついた当の本人であるヒビキ役の私もシルビー役の冬馬さんも、「え? ここでキスするの?」っていう感じでしたから。ヒビキがシルビーとキスしているとことをイシュタルに目撃されて、「イシュタル!?」って返すあのシーンは、アフレコのときに演技指導が入ったんですよ。
最初のお芝居では、ヒビキがびっくりしたイントネーションで演じてみたら、音響監督さんに「そうじゃなくて、もうちょっと優しく『イシュタル』って言って」っていうふうに言われました。
私個人の気持ちとしては、“やべ、イシュタルに見られちゃった”っていう方が大きかったんですよ。2話とか3話でイシュタルに向けてた気持ちが、シルビーと見つめ合った場面でコロっといっちゃったので(笑)。
笠原
ふーん。
タカヤマ
本当、妹のようにかわいがっていたイシュタルがいて、きょうだいのようにケンカしていたシルビーがいて。で、結果シルビーとくっついて、っていうような。ヒビキみたいな子っていうのは、姉さん女房みたいな人の方に惹かれるのかな?
笠原
どうなんでしょうね。
タカヤマ
汗がだんだん出てきた。
タカヤマツトムさん
―イシュタルはヒビキに対して未練はなかったんでしょうか。
笠原
イシュタルちゃんからしてみたら、きっと人の愛を知ったこととか何もかもが新鮮な体験だったんでしょうね。それまで普通の人としての恋愛感情を体験したことがなかった子ですから。
だから、ヒビキにも惹かれていたんだと思います。
あと、私が見てて思うには、やっぱりイシュタルとヒビキだと、ちょっとまだまだ幼いというか。
タカヤマ
ほら、ヒビキって良くも悪くも突っ走るヤツじゃないですか。前を突っ走ってるヒビキを後ろから見てくれているイシュタルと、横からチャチャ入れているシルビーと、というような図式だったので、ヒビキはふたりとの関係を深く考えずに突っ走れたんですよ。だから、演じる私もそこはむしろ考えなかったのも事実ですね、それは。
笠原
あー。そうなんですね。これが女性側がもっと積極的だったりすると違うんでしょうけど、イシュタルはそういう子じゃないから。お互い、自分から告白するタイプじゃないですよね。
タカヤマ
うん。でもヒビキとイシュタルは、うまく噛み合ってた感じはするんですよね。
笠原
見返して、この作品って、ふたりの関係とか心情の変化の描かれ方がナチュラルでとっても素敵だなと思ったんです。イシュタルには頼れる人がヒビキしかいなくて恋とか意識せずに慕っていた。ヒビキは、敵軍にいるイシュタルには隠さなきゃいけないことも多かったんだけど、だんだん彼女に興味が沸いてきて本気で助けてくれる。お互い、何の計算もなく純粋な気持ちで親愛の情が湧いたんですよね。そこが「恋愛」というくくりとはちょっと違うのかなって。
タカヤマ
たしかにね。たとえば月のフェスティバルに行って、アイドルの歌を聴かせてあげたりっていうシーンはお兄さん目線で、それがイシュタルに対する愛情だったのかな、という感じはするんだけど。
笠原
あー、そうですよね。……じゃあ、ヒビキを演じられている高山タカヤマさんご本人は、イシュタルのことをどう思っていたんですか?
タカヤマ
うーん。やべぇ、責められてる(笑)。ま、そこまで考えてなかったってのがぶっちゃけのとこですけどね(笑)。
笠原
(笑)あ、でもやっぱり優しいから、きっとどっちって言わない。
タカヤマ
ちゃうちゃうちゃう(笑) だって演じている最中は、最後にはイシュタルとくっつくと思ってましたもん。だけど二十何年経って腑に落ちたのが『ローマの休日』のラストなんですよ。「あ、なるほど。だからイシュタルとくっつかなかったんだ」って。歌姫は役割を果たすために旅立っていったから、くっつきたくてもくっつけなかったんだ、っていうのがね。
笠原
最後の最後、去り際にイシュタルちゃんが言うんですよ。シルビーに対して「素敵なライバル」って、ひと言だけ言うの。私見ていて、うわあーって涙が出てきて。もうなんて……なんて良いセリフなんだろうって。キュンってきます。
タカヤマ
切なくなりますね。連れ戻したくなる。ヒビキには「素敵なライバル」って聞こえていたのかな?
笠原
でも、それはシルビーに向けた、女同士のセリフなので。
タカヤマ
ヒビキはそのとき隣にいるシルビーに首ったけなんで。ばかやろうが(笑)。まあ、バカな男はかやの外でいいのかな、って思いつつ。
笠原
イシュタルのそういうところがかわいいなと思うんです。最後に「ちょっとだけ言ったな」みたいな。したたかなこともちょっと覚えて大人になってきたイシュタルの成長。
タカヤマ
ヒビキとイシュタルとシルビーの3人の関係は奥深いよね。もう少し続きをやってみたかった!
笠原
でも私……イシュタルがヒビキの元を去った理由、なんとなくわかる気がします。
―では後半は、その理由からおうかがいします。
(後編に続く)
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『超時空要塞マクロスII』
13,800 円(税抜)
毎回封入特典: 特製ブックレット(108P)
毎回映像特典: ノンテロップOP&ED、#6 ノンテロップED、Blu-ray Box PV・CM
毎回音声特典 : 新規オーディオコメンタリー 、BD-Audio「イシュタルからの伝言」他
仕様 : 美樹本晴彦描き下ろし収納BOX 、大張正己描き下ろしインナージャケット
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