まさに走る巨大モバイルバッテリー!
タイカンCTの電力で生放送できちゃった
ポルシェのピュアEV「Taycan(タイカン)」の派生モデル「タイカン クロスツーリスモ」の日本発売が7月に発表になった。スポーツセダンのタイカンを、ツーリングワゴンのようなスタイリングにして車高を20mmアップ。走行モードに「グラベル」が加わるなどオフロード走行も視野にいれているというモデルだ。正確には悪路などで実力を発揮するクロスオーバーSUV、通称CUV(Crossover Utility Vehicle)に位置付けられる。詳細記事はすでに掲載しているので、そちらをご覧いただきたい(30分で80%充電も! ポルシェのEV「タイカンクロスツーリスモ」が日本初お披露目)
今回は「タイカンの電力で生放送をやってみたいんですが~!」という無茶すぎるお願いをポルシェジャパンに聞いていただき、まだ街中で見かけない「タイカン 4 クロスツーリスモ」(以下、タイカンCT)を貸していただいた。言っちゃなんだが、ある意味ネタ企画にOKをしてくれるポルシェさんの懐の広さよ……。もちろん、一般道と高速道路を走ったので、ちゃんとしたレビューも記事の後半に掲載する。なので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。
さて、タイカン クロスツーリスモはピュアEVなので、タイカンと同じく800Vバッテリーをフロアに搭載。ノーマルのタイカンではオプション扱いになる「パフォーマンスバッテリープラス」(総容量93.4kWh、420kW/571PS)が標準装備される(通常だと総容量79.2kWh、390kW/530PS)。航続距離はフル充電で最大430~450kmほど(様々な条件による)。




そんな大容量でハイパフォーマンスなバッテリーを積んだタイカンCT。豊富な電力を活かすべく、生放送用の機材としてノートPC、スマホ3台、カメラやマイクなどを持ち込んだ。USB端子はすべてType-C。ただし、PDには非対応なのでType-Cはあくまでも充電、もしくはApple CarPlay用でノートPCの充電はできず。その変わりシガーソケットにPD対応のカーチャージャーを装着。これでノートPCは問題ない。そしてサブカメラ用のiPhone 12 Pro Maxと、チャットなどで外部と連絡を撮るためのXperia 1 IIIをUSB Type-C端子に挿し、生放送に臨んだ。メインカメラとマイクはノートPCにUSB接続だ。
ASCII.jpの生放送「スマホ総研定例会」は月曜日の20時からスタートだが、機材チェックや台本読みのため19時にZoomで集合するのがお約束。そのまま本番→ロスタイムも含めると21時に終了する。ということは、2時間の間、タイカンCTの電気を使いっぱなしということになる。これが内燃機関のクルマだと、外の気温にあわせてエアコンを入れたり、電源が切れないようにアイドリングさせて電源を供給しないといけない。長時間のアイドリングはマナー違反だし、筆者のクルマはそこそこエンジン音がするので近所迷惑である。なので、いつもはエンジンをかけなきゃいけない状況になるまではアイドリングはしないように調整している。




これだけの機材を接続し、エアコンオン、車内灯オン、オーディオはオフ、という状態で19時のリハがスタート。バッテリーの残量を見ると、45%(航続距離205km)だった。そして20時の本番開始の時点では43%(航続距離201km)。1時間で2%減ったことになる。この日の生放送はポルシェとXperiaという、筆者がついつい熱く語ってしまうテーマだったので通常20時半で終わるところ、20時45分まで延びてしまった。この番組終了時点でのバッテリー残量は42%(航続距離199kmであった。これは完全撤収の21時までも変わらずだったので、2時間で約3%(航続距離6km)減ったということになる。なお、バッテリーが100%からではないのは、日中に筆者が走り回ったからだ。



実際の生放送の様子は以下のアーカイブをご覧いただきたい。
理想的にはポルシェのネットワークを使って通信もできればよかったのだが、まだ準備が整っていないということで今回は断念した。バッテリー容量が大きいため、このくらいの使い方ではほとんど減らない。インバーターなどを使って、家電を動かすのは余裕だろう。オフロード走行を想定しているため、キャンプ場などに乗り付けても車高は(ある程度は)気にならない。これならタイカンCTでオートキャンプなんて楽しそう。また、筆者のような電子デバイスを大量に身につけている者にとっても、充電端子の多さ、バッテリーの容量の多さは非常に魅力だった。
今後はタイカンの電力を限界まで使う、なんて記事も考えている(また貸してもらえれば)。次のページからは試乗レポートや、ポルシェの急速充電を試した結果などをレポートする。


タイカンの顔をしたオフローダー
曲線を多用した美しいスタイリング

生放送は無事に終わったということで、ここからは試乗レポをお届けする。まずは外見から見ていこう。ボディーサイズは全長4974×全幅1967×全高1409mm、ホイールベースは2904mm、空車重量は2320kg。ベースモデルのタイカンのサイズは全長4963×全幅1966×全高1395mm、ホイールベースは2900mm、空車重量は2125kgなので、微増という程度だろう。なのに大きく見えるのはデザインの妙か……。以前タイカンに乗ったときは京都の市街地だったので、東京都内とは違うかもしれないが、タイカンCTは見た目のサイズほど街中の運転で大きさを感じなかった。もちろん横幅は2m近いし全長も5m近いので大きいのは間違いないのだが。


また最低地上高はタイカンと比べると20mmアップしており、オプションの「オフロードデザインパッケージ」を装着するとさらに10mmアップする(試乗車は装着済)。そしてスマートリフト機能が標準装備なのでインパネにある車高調整のようなアイコンをタップすれば40mmアップと合計で70mmも上がる。これならバンパーの下を擦ってしまう心配もない。なお、スイッチで上げた車高はある程度走ると自動的に元に戻るので、「さっき車高上げたし大丈夫っしょ!」と勢いよく段差を乗り越えないようにしたい。

次にスペック。2モーターの4WDで、最大出力380PS(280kW)、ローンチコントロール時のオーバーブーストで476PS(350kW)。最大トルクは500N・m(66.3kgf・m)。0-100km/hの加速は5.1秒とのこと。なお、街中や高速道路でもオーバーブーストは使う場面がなかった。日本の道は通常の380PSで必要十分すぎた……。サーキットなどでスポーツ走行をするなら、もちろん使うこともあるだろう。トランスミッションはフロントが1速、リアが2速という構成。強大なパワーを効率良くタイヤに伝えてくれる。




グラベルモードで未舗装路も怖くない!?
でもポルシェで未舗装路は走りたくない……
タイカンCTの最大の特徴をいえるのが「グラベルモード」。悪路を走行するために車高が30mm上がり、サスペンションなどが柔らかくなる。モードを変えればすぐにわかるくらいクルマのキャラクターが変わるのだ。残念ながらグラベルモードとスマートリフトが併用できるかは試せなかったのだが、グラベルモードにすれば60mm(タイカン比)も車高があがるのでバンパーを擦る心配は無用だろう。グラベルモードで高速道路を走るとややフワフワした足回りになり、カーブではかなりロールするようになった。東京都内で試せる場所がないので悪路は走ってないが、アウトドアに行く人にはピッタリのモードだ。





ガチガチに足を硬くするのではなく
適度なロールで気持ちよく曲れる
走行性能を見てみると、ノーマルモードは足回りがやや柔らかめだが必要十分パワーで、アクセルに対してのレスポンスも良く、全長5m近いクルマとは思えないくらいクイックに走る。スポーツモードは明らかに足回りが硬くなり、全体的に引き締まって911のような緊張感を味わえる。筆者的には安全に軽快なドライブが楽しめるモードだと感じたので、試乗中はほとんどこのモードで走っていた。スポーツプラスは、サーキット走行用で車高が落ちて足回りも硬くなる。パワー特性も変わっているので、明らかに加速が鋭くなっていた。怖いので、ちょっと試しただけだったが。






そしてEVならではの「RANGE」(レンジ)も面白い。最高速度を100km/hに制限し、とにかく航続距離を長くする設定になる。速度が100km/hに到達する直前から加速が緩やかになり、100km/hに達したらアクセルを踏み込む限り100km/hで走る。加速もほかのモードにくらべるとゆっくりになるので、正直なところポルシェっぽさは感じられなくなってしまうのだが、このモードがあることによってEVとしてのポテンシャルがわかる。






【まとめ】走行性能と居住性を両立させた「タイカンCT」
オフロード・タイカンともいえるタイカンCT。お値段は試乗車の場合、1341万円(税込)。ベースグレードのタイカンが1203万円なので、その差は100万ちょっと。これが高いか安いかは置いておいて(筆者にはどちらも高いが)、パワーもあって荷物も人も乗り(タイカンCTは5人乗り)、オフロードも走れるタイカンCTにするのか、4ドアサルーンとしてラグジュアリーに乗れてちょうどいいスペックのタイカンにするか。自分のライフスタイルに合わせて選べるのはいいかもしれない。
話は変わるが、タイカンは無料でソフトウェアアップデートを行なった。これによりポルシェコネクトの新機能や、エアサス装着の場合はスマートリフトが使えるようになったり、加速性能がアップしたりするのだが、これがスマホと同じようにオンラインアップデートなのだ。まさに走るスマホと言えるだろう。今後、これが自動車のスタンダードになり、マイナーアップデート版の発売で悔しい思いをすることもなくなるのかもしれない……。


















■関連サイト