2022年に入って、テクノロジー界隈では電気自動車(EV)の熱が高まっていました。
高校で自動車部だった筆者も自動車好きを自認しており、新しいモビリティに対して強い興味を持っていたことは事実です。ただ、いろいろなきっかけが重なって、今回、Tesla Model 3をオーダーすることにしました。
しばらくは電気自動車に関する話題も本連載でお届けできると思いますので、おつきあいの程よろしくお願いいたします。
一番大きな動機は「リスク回避」
若い頃はマニュアル車を楽しむ程度にクルマ好きの成分が残っていた筆者も、都心に住んでいる時は車を手放し、半蔵門線にべったりな生活を送っていた時代がありました。
しかし2011年に米国に渡った瞬間、いくらカリフォルニアでもクルマがないと生活が成り立たないことを悟り、当時の日本円で48万円の2005マツダ・トリビュートというSUVを見つけ、6年間の相棒となりました。
悲しいことに駐車中にぶつけられてしまったトリビュートは、「Deemed Total Loss」(みなし全損)となり、同じ車の当時の中古車価格である70万円が保証されました。インフレを感じますね。
その70万円ですぐに買える車として、2006年式のBMW 325iを購入。その後エンジン周りの修理で50万円ほどかかってしまったのですが、BMWが誇る3000cc直列6気筒の気持ち良いエンジンを堪能し、これを売却して日本に帰ってきました。
日本では中古でゆったりしたSUV(ディーゼル)で、日々の足として活用しつつ、時折のんびりとドライブを楽しむという車遍歴でした。
そんな筆者が電気自動車を検討し始めた最大の理由は、環境配慮とエネルギーコストのバランスから考えた対策の必要性でした。
いろいろな考え方があると思いますが、個人的には「地球や社会の持続性に配慮することが、自分たちの生活の持続性につながる」という経験を、米国でいくつかしてきたことも背景にあります。
また、米国生活ではドル円相場という為替と生活コストが直結していた点も生活防衛の視野が広がった理由となりました。日々の生活をいかに持続させるか? という話と、国際的な経済や地政学的な話がより強く接続された価値観が形成されました。
自分にとっては遠くて広い世界の話に常に目を光らせていなければ、野垂れ死ぬ可能性すらあるという、とてもストレスフルな目で足下の生活を見るようになってしまったのです。自分にとって米国生活の過酷な部分のあらわれでもあり、不可逆的な意識の変化だったため、不幸なことだったと今でも感じています。
エネルギー価格の高騰と、ウクライナ情勢も背景に
その上で、昨今の世界的なエネルギー価格の高騰とウクライナをはじめとする国際関係の緊張です。
特に光熱費を含むエネルギー価格が上がっていき、ガソリン代も3割高くなる中で、なす術もないのです。ここで少し考え方を変える必要が出てきた、と思いました。
確かに環境配慮は今まで、そして現在も含めて、追加コストを伴うものだというイメージが強かったのは事実です。実際筆者も、そう感じるほどに追加支出が迫られるものだということは、米国でも日本でも同様だったと思います。
しかしガソリン代の高騰を見ても、ジワジワとコストが上がっていくエネルギー価格全体を眺めてみても、対策せずにコスト増を受け入れ続けていくことが良いのか、追加コストを支払っていま対策するべきなのか。10年単位で考えると、筆者にとっては、後者の方が妥当だという判断に至りました。
太陽光で電気を発電し、その電気を自分で使いながら、同時にクルマを走らせることが、エネルギーコストを一定に保てる可能性が高まる。幸い。
気候変動や地球環境への対策という大義名分が、エネルギーコストの平準化という個人レベルでも「大きなリスク回避になる」という考えに変化した点が最大の理由と位置付けることができます。
一方で、EVへの懸念も
結果的には、前述の環境配慮というリスク回避策が、EVに対するイメージや、不便なんじゃないか? という想定を上回ることになりました。
ただ、それでもガソリン(正確には我が家はディーゼル)で走るクルマとの違いに対して、尻込みする部分も当然あります。例えば、充電という行為をライフスタイルに取り入れる必要がある点です。
一度給油すると800~1000kmくらい走るクルマに乗っているので、旅行などに行かなければ、半分減った時点で月2回程度給油するかどうか。かつ一度の給油は5分程度で済んでいるので、わずらわしさを感じることはありませんでした。
しかし現状ここまで航続距離のあるEVはないことと、EVの充電は急速充電器でも30分で実効距離数で200km分ぐらいの充電となるため、充電頻度は倍、かかる時間はさらに増大するのではないか? という想定をしていました。そのたびに30分かかるなら、そういう時間をどこで捻出するか、考える必要が出てきます。
さらにこれは今でも心配していることですが、今住んでいる場所の周りは充電設備が手薄なこと、すぐには駐車場に充電器を設置できなさそうなことから、ちょっとどうなんだろう……と悩んでいる部分もあります。
そうした解決も含めて、体験的にお伝えしていけるんじゃないか、という職業病みたいなものも、あるにはあったのですが。(続く)

筆者紹介――松村太郎
1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。
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