今どきのクルマは「慣らし運転」は必要なのか?
マツダの「ロードスター 990S」が納車されましたが、しっかりと走らせる前に必要なのが「慣らし運転」です。昭和の時代では、「走行×百kmまでは、エンジンの回転数を上限×回転までに抑え、走行距離が伸びるのにあわせて高回転まで徐々に回すように」ということが常識とされていました。

ちなみに、以前「ロードスター」の新車を2度ほど購入したときは、15年以上前でしたけれど、やっぱり最初のうちは高回転まで回さずに走り、走行距離1000kmくらい超えた後にエンジン・オイルを交換。その後は、ガンガンと高回転まで回すようにしました。
では、現在はどうなのか? というのが今回のテーマです。マツダの公式サイトを見ると、「購入サポート」の中のFAQに、「車を購入しましたが、慣らし運転は必要ですか? どんなことに注意すればよいでしょうか?」という質問がありました。その質問に対するマツダの答えは「現在では、部品やオイルの品質が向上したことにより、以前に比べると特別に慣らし運転を考える必要はありません。普通の運転(急発進・急加速・エンジン回転を高回転に保つなどの急・高のつく運転を避けた運転)をしてください。」というものです。
「慣らし運転」は必要ないと言いつつも、「急発進・急加速・エンジン回転を高回転に保つ」のはNGで「普通の運転をしろ」と言います。結局、急のつく運転をしたい人は、最初のうちは大人しい「普通の運転」=「慣らし運転」をしろということなのでしょう。
ちなみに、トヨタとホンダは、マツダと同様の説明を公式サイトで見ることができます。ただし、日産とスバルは必要としています。

ちなみに、モータ―ジャーナリストという仕事柄、自分は、あちこちのメーカーの試乗会に参加したり、広報車を借りています。そうしたときに乗るクルマのほとんどは、走行距離が最低でも500kmを超えています。聞けば、メーカーの広報スタッフなどが試乗会の前に、一晩中、高速道路などを走って慣らし運転をしているとか。たまに広報車で、慣らし運転をしていないクルマに乗ることもありますが、そうしたエンジンは、高回転まで回すときに重く感じられます。
ですから、自身の愛車となる「ロードスター990S」は、1ヵ月点検、1000kmくらいまでは、おとなしく慣らし運転をし、1ヵ月点検でオイル交換をして、その後レッドゾーン解禁としようと思います。納車されたときのオドメーターは、「8km」でした。急ぐ旅でもないので、のんびりと「慣らし運転」をさせてもらおうかと。
「ロードスター990S」には、メーター内に推奨ギヤ数を表示する機能があります。その指示は、エンジン回転数が2000rpmを超えるとシフトアップしろというものです。結構な低回転でのシフトアップですから、この指示通りにやっていれば「普通の運転」になることは間違いありません。当分、早め早めのシフトアップを心がけようと思います。

慣らし運転でもわかる「990S」の良いとこ、悪いところ
「慣らし運転」中とはいえ、それでも「ロードスター990S」の良いところや悪いところに気付きます。今回は、そうしたノンビリ街中走行でのインプレッション・レポートもしたいと思います。
まず、昨年暮れに発表された「ロードスター」全体の改良で採用になった「KPC」機能。これは、0.3G以上の横Gがかかったときに働きます。
逆に、ノンビリした街乗りだからこそわかるものがあります。それが「ロードスター990S」の乗り心地の良さです。ホイールとブレーキが軽く、ダンパーがよく動くようになっているのが「ロードスター990S」の特徴。つまり、路面からのショックをしなやかにいなし、フラットな姿勢を保ちます。これはうれしい特徴です。
続いてわかるのが、ND型「ロードスター」の本来のデキの良さです。まず、視界が広く運転しやすい。Aピラーの付け根が、ドライバーに寄っていて、曲がるときのコーナーの内側がよく見えます。自車のフロントフェンダーの山が見え、その下にタイヤがあるのも、運転しやすさを助けます。
ステアリングは握りが細く、軽い力で保持でき、しかもねっとりとした手ごたえも好印象。
荷室は、間口が狭いようですけれど、それなりに深さがあります。スーパーに行って、カゴ2杯分の食品類を買ったときも、問題なくトランクに収まります。長いモノはダメですけれど、普通の買い物や、大人2人くらいの旅行であれば、不足ない容量があります。

一方、気になった部分もあります。一般的に悪いという部分です。
まずは、オーディオの音がやっぱり安っぽいこと。BOSEではありませんから当然ですが、残念です。そもそも「ロードスター990S」には、高級オーディオもマツダコネクトもありません。それも当たり前で、なぜならそうしたオーディオ&ナビは「重くなる」から除外されているのです。
次に気になったのがサンバイザー。フロントウインドウの上部にくっついた形で、可動エリアが小さいのが残念なところ。プラスチックそのままで質感がよろしくないのも悪いところでしょう。また、エアロボードを使わないときに外せるのは良いのですけれど、その外したときの置き場がありません。仕方なく、運転席の後ろ(背中側)に投げ込んでいます。

最後に気になったのが運転席の床。フラットではなく、左側に出っ張りがあり、左足をたたむとぶつかります。
正直、気になる悪いところは、本当に重箱の隅の隅っこの話。そのうち慣れるんじゃないのかなあ、という思いもあります。ぶっちゃけ、クルマ全体で言えば、満点に限りなく近いというのが本音。長く乗り続けられそうと、今からワクワクしているところです。
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筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
