近年、ディーゼルエンジンを搭載した輸入車の売り上げが堅調なのだとか。とある輸入メーカーに話をうかがうとSUVのうち、半分以上がディーゼルエンジンとまで。
ディーゼルエンジンの一般的なイメージ

唯さんの愛車はハイオクガソリン専用の国産スポーツカー。ディーゼルエンジン搭載の輸入SUVは真逆もいいところです。それゆえオプション込み1114万8000円もするBMW X5を目の前にしても「なんで私がディーゼルエンジンのSUVに乗るんですか?」と、まったくときめきません。それゆえ冷静なジャッジができるのでは? と期待しての人選であります。
まずはディーゼルエンジンに対するイメージについて尋ねてみることにしましょう。「トラックのエンジンですよね。あのガラガラと音がして、振動が大きいんじゃないですかね?」。というように、よいイメージは抱いていない模様。それどころか「そもそも何でディーゼルエンジンを取り上げるんですか?」とまで。

その理由は言うまでもなく燃料費が安いから。一般的に輸入車はハイオクガソリンを燃料とします。昨今、ハイオクガソリンの値段は1リットルあたり175円程度。ディーゼルエンジンで使う燃料は軽油で、その価格は142円/リットル程度。1リットルあたり約30円違います。「どうして違うんですか? 軽油って軽いから安いんですか?」と、唯さんは素朴な疑問を抱きます。理由は税金の違い。ガソリンの場合、ハイオクもレギュラーも1リットルあたり53円80銭の税金を納めているのに対して、軽油の場合は32円10銭。ざっくり20円違うのです。ハイオクはレギュラーよりリッターあたり10円高いので、軽油とハイオクでは30円違うということになります。
「たったリッター30円かよ」と思われるでしょうけれど、チリも積もれば何とやら。10リットルで300円、100リットリで3000円……。
そして軽油を使うディーゼルエンジンはガソリン車よりも低燃費で低回転からトルクが得られやすいという特徴があります。さらに構造がシンプルであるため、壊れにくく寿命が長いとも。つまり「長距離を走る人ほど、長くクルマを乗る人ほど、ディーゼルエンジンはオトク」というわけです。その一方、エンジンの製造コストが高く、それゆえガソリン車と比べて割高に思えること。そして、冒頭で唯さんが指摘した振動や騒音が大きく、上質感が得られないことがあります。あとスポーツ走行好きの人からすると、エンジンを高回転で回すことができないゆえのもどかしさ、というのもあったりします。
BMW X5はクロカンスタイルのSUV


お勉強の話はここまで。それでは実際にBMW X5のディーゼル仕様車を見てみましょう。
パワーユニットは3リットル直列6気筒DOHCディーゼルエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド。エンジン出力は286PS、最大トルクは66.3kgf・m。これにモーターの最高出力11PSと最大トルク3.6kgf・mが加わります。
そして「こんなにトルクがあるのにモーターって必要なんですか?」とも。BMWによると、このモーターは「48Vスタータージェネレーター」というらしく、エンジンの負荷を低減するとともに、WLTCモードで最大1.1km/Lの燃費向上を果たすのだとか。そのモーターの効果は運転して体験していただきましょう。



BMWのSUVは、型名が偶数の場合はクーペスタイル、奇数の場合はクロカンスタイルという法則があります。X5は立派なクロカンスタイルで、唯さんの言葉を借りるなら「いかつい」の一言。「頼もしさを覚えますね。嫌いじゃないですよ」「にしても大きいですね」というわけで、寸法を見ると全長4935mm、全幅2005mm、全高1770mm。ホイールベースは2975mmという威風堂々たるサイズ。車体重量も2260kgと2トン越えを達成!










エクステリアも重厚なら、室内も重厚そのもの。さすがプレミアムSUVといったところ。唯さんが「これ、スゴすぎますね」と言葉を失うのも無理はありません。「車内も大きければ、シートも大きい。さすがです」というように、BMWはクルマもバイクも185cmの人が快適に過ごせるようにという設計基準があるのだそうです。
広大な車内空間! とくに2列目が余裕あって快適


センターコンソールには、車高を上げ下げするスイッチが用意されていることを発見した唯さん。さっそくいじってみます。「おぉ! 動く動く!」と大喜び。


ここで、ナビに関して少し。横長画面なので、画面はやや小さめですが、メーターパネルの中にもルートが出ますので、特に不満はありません。この手の表示はアウディが先鞭を切ったように思いますが、今ではプレミアムブランドでは各社このような画面が出るようになりました。








圧巻は2列目。



せっかくですので、オプションのエンター・テインメント・システムとハーマンカードンのサラウンドシステムを試聴してもらいました。運転中は音楽を聴くことが多いという唯さんはゴキゲンな雰囲気。それもそのハズ、米国の名門JBLやAKGを傘下におくハーマン/ガードンのオーディオです。実にウットリした表情を浮かべるではありませんか。実にエレガンス‼ ベリーエレガンス‼







さらに圧巻は、サードシートローパッケージ<4輪アダプティブエアサスペンション、サードローシート、ラゲッジコンパートメントパッケージ>(38万円)による3列目。ボタンひとつで、2列目シートが前に倒れて、3列目を見ると実に豪華。「SUVの3列目ってオマケみたいなイメージだったのですが、これはオマケでもなんでもないですね。左右シート間にエアコンの吹き出し口や両サイドにカップホルダーがあることに驚きました」というようにように、BMWはオマケでも手を抜かないのです。






ラゲッジも3列目を出していても広く、しまえば広大といったところ。さらに2列目を倒せば、文句のひとつもありません。「載せられない荷物はない! といわんばかりですね」と感心しきりです。

「さすがプレミアムSUVですね。これなら家族全員で遠出しても快適ですよね。問題は運転してどうなのか? ですよね!」というわけで、ステアリングを託しましょう。
ディーゼルのイメージを変える走行性能


テストコースは、都内から離れて御殿場から天下の険である箱根へと向かい、そして東名高速に乗って戻るというルート。高速道路とワインディング、そして市街地という盛りだくさんのコースです。走行モードはコンフォート。
まずは高速道路で御殿場へ。「重厚な走りは、実にBMWらしいですね」というのが唯さんのファーストインプレッション。「下からモリモリとトルクが際限なく湧き出てくるかのようです。とても2トンを超えるクルマとは思えないほど、スムーズに加速します」というように、ディーゼルらしい太いトルクによって、クルマは実にスムーズに加速します。

「驚いたのは、とにかく静かなこと。振動もすごく少ないです。車の外でアイドリングの音を聞くとディーゼル車らしい音が聞こえるのですが、室内でこのクルマがディーゼルエンジンだと気づくことは、回転系のスケール以外で気づくことはないんじゃないですかね」と分析する唯さん。もともと直6という振動の少ないエンジンということもありますが、車内への遮音が上手くできているのです。
高速道路に乗っても「エンジンの回転数が低いためか、すごく静かですね。追い越しの加速もラクラクです。不満はまったくないです」というように、さすがアウトバーンのある国のクルマといったところ。「排気量の小さいガソリンエンジン車よりも静かなことにお届きましたし、振動も少ない。それに地に足のついた重厚な乗り味だから、クルマがまっすぐ進むし、怖さもないですね。長距離クルージングに向いていると思います」というX5。それにディーゼルらしい燃費の良さも加わりますから、長距離クルーザーとしての魅力は十分すぎるほどに十分。


東名高速の御殿場ICを降りて、箱根の山を目指すBMW X5。ひたすら峠道のアップダウンを繰り返します。ここはスポーツモードにチェンジしましょう。「一層トルクフルになりますね。これは楽しいです!」と、箱根を攻める唯さん。「車体が大きいですけれど、取り回しが悪いわけではないんですね。何より見切りがすごくイイんですよ。だから狭い峠道でも怖くないんですね」。

途中、何度か停止してアイドリングストップが働くことがあったのですが「アイドリングストップからの復帰がすごく静か。ちょっと前の車だとガクンと動いたりしたのですが、そういうところがないんですね」と満足げの表情。これが48Vスタータージェネレーターの威力なのかなとも。一方でハイブリッドらしさを感じることはほぼありませんでした。



山を登れば山下り。箱根駅伝の6区と同じコースで山を下りました。「エンジンブレーキがあまり効かない印象ですね。ですからシフトをマニュアルモードにして2速にしないとダメみたい」と、車体の重さが災いしている様子。「2速にすると、回転数が上がるためか、結構エンジンの音が聞こえますね。でもそれはガソリン車も同じですから、気にするようなことではないのかも」ということで、あっという間に函嶺洞門。そして箱根湯本の駅へ。

その後、カマボコが好物ということで、鈴廣に立ち寄った唯さん。揚げカマボコを買い求めて帰路についたのでした。こうして1日走った燃費はなんと


リッター16.3km! 3000ccのガソリン車で2トンの車重だったら、ひと桁km/Lは当たり前。ハイブリッド車でない限り、このような数字は出ないと思います。BMW X5もハイブリッドといえばハイブリッドですが、アシストハイブリッドのようなもの。どうです? 経済性が高く、それでいて快適。ディーゼルエンジン車を見直したのでは? 「確かにすごいですね。でも、快適なのはBMWのラグジュアリーSUVだからでは?」と疑いの目が。

ということで、次回はドイツ以外のディーゼルエンジンを試したいと思います。
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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添える。