そろそろ夏も終わり。北海道も朝の気温は20℃を下回るようになって、いよいよ熱いコーヒーが恋しく感じられるようになって参りました。
新車を買った情報2022、私は四本淑三です。今回の話題の中心と致しますのは、ND型ロードスターのセンターコンソールボックスに入る保温・保冷ミニボトルの断熱性能であります。

ボトルの容量は120~180ml。ここに収まる姿の連想から、人呼んで「エントリープラグ」。朝、自宅で淹れたコーヒーを信号待ちでちょい飲みするのにちょうどいいぞ。というわけで、その使いやすさを求め、これまでに何本か買って試して参りました。
しかし気になるのは、やはり断熱性能。中空二重構造の魔法瓶だから当然です。そこで今回は「ロードスターでコーヒーを飲む」。この極めて限定的な利用実態に合わせて、断熱性能を測ってみました。
その実験に使ったボトルの概観から。
保温・保冷性能を実験するミニボトル10本

120mlサイズのミニボトルブームの火付け役。他よりちょっと高い値付けは、ニッチなニーズを開拓した元祖へのリスペクト料と考えたいところ。個人的にはカラビナ付きでアウトドア感もある120 HANGを愛用しております。

続いては鍋やフライパン、コーヒー器具など食器・調理器具メーカーの製品群。日用品としての使いやすさとこなれたデザインはさすが。なお和平フレイズのボトルは、私がステッカーチューンしたもので実際の製品は無地の青ですからよろしく。

そして自前の販売網と大量発注で低価格を実現する量販チェーンのPB群。ニトリなんか他の半額ですから、まあびっくりです。系列実店舗販売の強みなのか、ニーズを的確に把握した上で他にない工夫も盛られていますから侮れません。その断熱性能やいかに。

ステンレス魔法瓶と言えばサーモス。老舗です。
では測って参りましょう。
ロードスターにおける実用保温性能ベスト10
ところで公式の保温性能は「保温効力」としてメーカーが表示しています。その計測条件は「20℃±2℃の室温で」「沸騰したお湯をボトルに注ぎ」「95℃±1℃まで水温が下がってからキャップを閉め」「縦置きで6時間放置」した際の温度です。
しかしコーヒーの抽出は一般的に90℃前後のお湯で行ない、結果抽出される溶液は70℃前後。そのコーヒーを室温に置かれたボトルに注ぎ、キャップを閉め、センターコンソールボックスに入れて走り出す。これが私の使い方であります。そこで「70℃±1℃のお湯を」「20℃±2℃の室温に放置したボトルに注ぎ」「横置きで6時間放置」を条件として測りました。
ここで重要なのは注ぐお湯の量。キャップが閉まるギリギリまで注げば条件も揃い、良い結果も出ますが、この実験ではメーカー表示の「実容量」を基本とし、それより少ない「保存可能容量」「適正容量」が併記されていれば、そちらを採用しています。キャップが閉まるギリギリまで注げば条件も揃い、良い結果も出ますが、この実験では
ただし実容量160mlとされるニトリ「プチトル」は、実際には155mlしか入りません。ギリギリまで入れると危険なため、5ml減らして150gを注いで計測しました。
計測器具はタニタのキッチン温度計「TT-533」、水量はタニタのキッチンスケール 「KD-192」で重さを測り、1g=1mlとしています。その結果は以下の通り。誤差が大きいので3回計った平均です。

やはりサーモス強し。150ml版「JOJ-150」の方が1位、120ml版「JOJ-120」が3位という結果。
その容量違いのサーモスに割って入ったのが和平フレイズ。180mlという大容量で、サーモスより安い1189円はお買い得。続くトップバリュも1078円ながら、3位のサーモスに肉薄する大健闘の4位。
さらに意外と言っては失礼ですが、お値段以上のニトリも5位。これくらいの性能を出せるなら、容量のサバ読んだりしなければ良いのになあ。毎度毎度、不躾で申し訳ありません。
まだ夏なので保冷性能ベスト10
ええい、真夏に保温性能の話題など暑苦しいわ。そうお思いの方のために、冷たい飲み物の保冷性能も測っております。
この性能も「保冷効力」としてメーカーが公表しています。条件は「20℃±2℃の室温で」「冷水をボトルに注ぎ」「4℃±1℃の水温になったらキャップを閉め」「縦置きで6時間放置」した際の温度。
これをロードスターの実用に合わせ「4℃±1℃に冷やした水を」「25℃±2℃の室温に放置したボトルに注ぎ」「横置きで6時間放置」という条件で測りました。室温が公称条件より5℃高いのは、うちの夏の室温がそれくらいだから。結果は以下の通り。

トップ6までの順位は保温性能とまったく同じ。では、こうした断熱性能の違いはどこから来るのか。見た目で分かる部分をチェックして参りましょう。
パッキンの形状とボトル内部の表面処理に注目

保温・保冷性能の上位6製品に共通するのは、キャップ裏のパッキンが「栓」のような形をしていること。上の画像の右がそれ。専門的にどう呼ぶのかは分かりませんが、カナル型イヤホンのイヤーチップのように、ボトル開口部の奥に刺さる形状です。
それ以外のパッキンは、画像左のような平たいワッシャーのような形をしています。これが飲み口に重なるわけで、ヘッドホンで言うならオンイヤー型。

実際、キャップの放熱量はボトル本体より相当大きそうです。熱いコーヒーを入れたボトルを持つとキャップの周りだけ熱を持っていますし、冷水を入れればキャップのみに結露が起きます。

もうひとつ見た目でわかる違いは、ボトルの内部の表面処理。上の画像はトップバリュのボトル内部を覗いたもの。下の画像はサーモスのボトル内部の様子です。

マットな質感のトップバリュに対し、サーモスは鏡面に近い加工が施されています。素材表面の反射率が高いほど熱吸収率は低く、断熱効果も上がりますから、こうした処理の違いで性能にも差は出るはずです。ちなみに容量の小さな「JOJ-120」のボトル内部は他のメーカー同様マットな質感で、鏡面処理が施されているようには見えませんでした。
でも断熱性能あんまり実用に関係ないかも説
ここまでやっておいて言うのもなんですが、断熱性能はそんなに気にしなくてもいいかも知れません。以下の見づらいグラフをご覧ください。

これはハリオのスティックボトルに140mlのコーヒーを入れ、10分おきにキャップを開けて一口飲む、そしてコーヒーの温度と残量を測ってキャップを閉める。
1. キャップを開けるとコーヒーの温度は下がる
2. 内容量が減るとコーヒーの温度は速く下がる
3. コーヒーの温度が下がると口に含むコーヒーの量が増える
こうした相関からコーヒーの温度は加速度的に落ちてゆき、ボトルが空になる80分後にはすっかりぬるくなっている。熱いコーヒーとして飲めるのは60℃までという個人的実感を基準とすれば、せいぜい持って40~50分という結果です。
ではキャップを開けなければ、温度の低下はどう進むのか。仮に先の保温性能の実験で得た6時間後の温度までまっすぐ温度が下がり続けるとすれば、こんな感じです。

60℃を維持できるのは、ハリオと東亜金属は2時間まで。サーモスでも3時間まで。実際にはこんな綺麗に温度が落ちるわけもありませんが、大雑把な体感値を裏付けるものではあります。たとえば朝8時に家を出て、10時を過ぎればもうぬるい。いかにサーモスでも11時のお茶の時間が限界で、午後までは持ちません。
それでも朝の通勤中に飲むコーヒーならこれで十分。通勤時間が1時間以内なら、保温性能の差など微々たるもの。なにしろキャップの開け閉めを繰り返していれば、1時間もせずにぬるくなってしまうのだから。
じゃあ保温性能いらなくない? そんな話にもなるでしょう。想像するに、このサイズの保温・保冷ボトルを専業メーカーが今まで造らなかったのは、あまり容量が小さくても十分な性能は出せない、だから売りにくいという判断もあったはずです。
とはいえ、ちょい飲みならいけるんじゃないか。断熱性能よりちっちゃい方が便利なこともあるんじゃないか。そうした視点から新しいニーズを発掘してくれたおかげで、今までロクな使い途もなかったセンターコンソールボックスにぴったり収まるボトルが出回るようになり、私のロードスター生活も向上したわけであります。メーカー関係者の皆さん、ありがとう。それではまた。