Hondaのミニバン「ステップワゴン(STEP WGN)」。その快適さと走りを検証すべく、自動車専門誌でも、ASCII.jpのステップワゴン記事でも乗車モデルを務めた新 唯(あらた・ゆい)さんに、走りと乗り心地をチェックしていただきました。
ステップワゴンの最上位グレード
スパーダ プレミアムラインに試乗

今回ご用意したステップワゴン e:HEVは、AIR、スパーダ、スパーダ プレミアムラインと3車種あるなかで、最上位グレードにあたるスパーダ・プレミアムライン。最上級ということもあって、見た目も内装もゴージャスでフル装備。お値段は385万円となります! 「それでもシビック e:HEVよりお求めやすい価格なんですね」と唯さん。まぁ、あちらはまた違う系統ですから、ということで話を進めましょう。



エクステリアでスパーダとスパーダ プレミアムラインの違いはというと、ズバリ「プレミアムクロームモールディング」の有無。フロントグリルのまわりを囲む加飾にプラチナ調のクロームメッキが施されているのです。ですから、どことなく上品な印象を受けます。
さらにヘッドライトの内部の加飾パーツにプラチナ調のクロームメッキが採用されているほか、前走車や対向車を検知して、照射する範囲を自動的に調整してくれる「アダプティブドライビングビーム」を標準装備。都市部ではその恩恵に預かることはほぼないのですが、峠道ではハイ・ロー切り替えをする必要がないので、大変便利だったりします。

ホイールは専用デザインであるほか、17インチに大型化。その結果、ノーマルと比べて5mmほど全高が低くなります。


最近のクルマはワイパーを立てようとするとエンジンフードに当たります。ステップワゴンも例にもれず、窓を拭こうとしてワイパーをあげようとすると、エンジンフードに傷がついてしまいます。これからの時期、スキーなどに行きホテルの駐車場でワイパーを上げて一晩停める、といった場合には注意が必要です。


スパーダと同じく、テールゲートスポイラーを装備。ちょっとスポーティーな雰囲気を醸し出しています。そして「このドア、デカいなぁ」と思うバックドア。慣れないうちは、コインパーキングに停めてから開けようとしたら、他のクルマや壁があって「開かないじゃないか!」とクルマを動かそうとしたらロック板(フラップ)が上がっていて頭にきたり。こういった時は、セレナのデュアルバックドアだったり、それこそ先代ステップワゴンの「わくわくゲート」がうらやましく思うのであります。



ステップワゴンの美質は、3列目シートが床下収納であること。簡単に床下収納できるだけでなく、荷室の横方向に椅子がないため、使い勝手がかなり良いのです。これだけでも「ステップワゴン最強説」を唱えたいほど。では、室内を見てみましょう。
快適で高級感あふれる車内










シートはスヌード調表皮&プライムスムースコンビシート。そしてダッシュボードなどにスエード調表皮が配されて高級感マシマシ。オデッセイなみ、と言ったら言い過ぎかもしれませんが、そう思ってしまうほど。唯さんも「いいじゃないですか。居心地がとてもいいですね」と満足笑顔。シフトはプレイスティックやレバーではなくボタン式。最初は戸惑うかもしれませんが、スッキリしているのでエアコン操作などもラクラクです。メーターパネルはフル液晶。高精細で見やすいです。







「これでもか」と思うほど収納が多数用意されているのもステップワゴンの特徴。唯さんの「なんか軽自動車みたいですね」というように、「確かに軽自動車ってこうだよね」と思うところいっぱいです。そこら辺は長年軽自動車を作り続けているHondaならではの「使い勝手」「収納」の考え方が見えます。
何よりあちらこちらにドリンクホルダーがいっぱい。「こんなに飲み物を持ち込まないでしょ」と思ったのですが、人によって置きたい場所はさまざま。使う使わないは個人の自由ということにしましょう。

運転席側のUSBはTYPE-A、TYPE-Cが各1系統。カーナビと接続できるのはTYPE-A側で、TYPE-Cは充電専用という使い分けです。しかし、ナビと通信できるTYPE-Aが車両中央側で、充電専用が運転席側というのはどうかという疑問も出てきます。
なぜなら、Apple CarPlayやAndroid Autoを使う場合、大抵は運転手が所有するスマホででしょう。助手席の人が充電しようとすると、ケーブルが交差してしまうのです。ちなみにケーブルを接続したスマホは、中央下部にあるトレイか、助手席側のトレイに置くという使い方になります。













2列目は極上の空間です。「このクルマに乗るなら、絶対に2列目ですね」と唯さんが言うように、圧倒的な広さに誰もが大満足することでしょう。さらに「オットマンがいいですね」と、スパーダ専用装備に満足すると、「シートヒーターもあるんですか!」と、今度はプレミアムライン専用装備にも驚き。
「なんか新幹線のグリーン車みたい」といいながらテーブルを引き出して、USB TYPE-Cの充電ソケットにケーブルをつなげて、スマホタイム。このトレイですが樹脂製のためか耐荷重が低めで、ノートパソコンを置いて何か作業をする、というのにはちょっと不向き。特に2kg近くあるような15インチゲーミングノートを置いて、ゴリゴリっとゲームを楽しむということは難しそうです。
そして、窓を見たら「シェードがある!」というわけで、結局唯さんは終始、この2列めに座って快適な時を過ごされていたのでした。




3列目も充電ポートは用意されていますし、なによりラージサイズSUVの3列目とは比べものにならない広さと快適さ。普通のCセグメントセダンより快適、というのも言い過ぎでも何でもありません。しかも、この椅子を床下に収納できるというのだからすごいのなんの。この床下収納はステップワゴンのみの美質です。
雨だけど一般道と峠道で試乗
サイズからは想像できない取り回しのしやすさ

今回は都内での走行から高速道路、そして「峠最強伝説」という3つのステージでステップワゴン スパーダ プレミアムラインの試乗となりました。
まずは一般道。

2列目では「まず静かですね。それに乗り心地がとてもいいと思います」と、ラグジュアリーな空間にウットリ。乗り心地に関して、人によっては「もう少し柔らかい方が」という声も聞こえそうですが、このくらいがHondaらしいと思った次第。むしろ柔らかすぎて振動の収束が遅いよりは、全然良いと思います。この素晴らしい空間、夢見心地の乗り心地に、朝が早かったこともあり、唯さんのまぶたが次第に……。


続いて高速道路。取材した日は大雨だったのですが「運転支援がとてもいいですね。こういう時、本当に助かります」とニッコリ。一昔前の運転支援は、雨だと動作できませんでしたから、技術の進歩を感じます。「高速道路の追い越しとかでパワー不足を感じることはないですね。ぐんぐん進みます。踏めば相応にエンジン音の高鳴りを感じますが、普通に走っている分には気にならないんじゃないかな」とのこと。
「あと、BモードではなくてDモードで走った方がいいですね」とも。後部座席では「本当に新幹線のグリーン車みたいですね」と満足げ。一方、「もう少し静粛性が高いといいですね」とやや不満のようです。というのも、速度を上げていくと、走行音が結構室内でも耳につくようになってくるから。たとえばプレミアムラインだけ、遮音性の高い貼り合わせガラスにするとかしてほしかったですね。



お楽しみは峠道。ミニバンで峠とか楽しくないのでは? と思われそうですが、そこはHonda。ちゃんと楽しく走れちゃうのです! ミニバンで峠というと、クルマがゆっさゆっさ揺れて大変と思いきや、1本の芯が入った足なのでキッチリとしているところがさすが。Hondaはどんなクルマでも、走りを忘れない。それがHondaスピリットなのです。
ボディー幅も今どきのスポーツカーと比べると狭いので、ストレスを覚えないのも◎。上り坂ではエンジンが結構うなるのは仕方ないと思いつつも、それでも他社ミニバンよりは静か。なによりパワーが足りなくて「登らない!」ということが“ほぼ”なかったのが好印象です(まったくなかった、とはいいません)。


最後に燃費です。ガソリンはレギュラー対応ですので、レギュラーを入れて、ほとんど高速道路で往復400km+峠最強伝説した結果、リッター13.5kmをマーク。トヨタのノア・ヴォクシーのリッター約20キロに比べるとションボリな結果に終わったものの、峠最強伝説をしなければ、もう少し伸びたかもしれなかったと反省。ただ、それでも他社ミニバンとほぼ同等といったところ。
【まとめ】4~6人が快適に移動できる楽しいクルマ

普段は“贅沢な”4人乗りとして使い、いざという時は6人が快適に移動できる。これがステップワゴン スパーダ プレミアムラインのよいところ。快適だけでなく、走りが楽しめるというところにも注目です。
筆者は正直に申し上げてミニバンが好きではありませんでした。ですがこのクルマに触れて「ミニバンいいかも」と感じました。ステップワゴン スパーダ プレミアムラインは「本当に大切な人が快適に過ごしてもらえる、運転していても楽しい稀なるクルマ」であると言いたいと思います。
■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。