Hondaの大ヒットミニバン「STEPWGN(ステップワゴン)」。その純正オプション装着車で車中泊をしてみたところ、これが実に「移動オフィス」になりうるクルマであることを実感。
ただ寝るだけが車中泊じゃない
過去、様々な車種で車中泊を経験してきた筆者。その中でわかってきたのは「寝られる」と「寝ることができる」は違うということ。たとえばSUVなどで後席シートを倒し、フルフラット化して車中泊をしようとした場合、必ず問題になるのが「ラゲッジスペースにあった荷物をどこに置くのか」ということ。大抵は運転席と助手席に荷物を移動させることになります。荷物が少なければいいのですが、多い場合はかなりの重労働。さらに雨が降ろうものなら目もあてられません。つまり実運用の面で困難が伴います。それが「寝ることができる」という意味。結果的に助手席を倒して、そのまま寝るという選択肢になります。
一方「寝られる」というのは、特に何かをする必要がなく、快適に就寝できるクルマのこと。それはN-VANのような軽バンか、今回ご紹介するSTEPWGNのようなミニバンのような車種にあたります。
さて。

ということで、今回お借りしたオプション満載のSTEPWGN SPADA。実際に乗ってみると、なぜか過去に乗ったSTEPWGNの中で一番の乗り心地。SPADA PLEMIUM LINEのタイヤは17インチなので別としても、AIR、SPADAは16インチでサスペンションは全部同じと聞いていただけに「これは一体?」と摩訶不思議体験。空気圧が怪しいとガソリンスタンドで空気圧を確認してもらおうとした時に、装着しているホイールが違うことを発見! ディッシュタイプのそれは、見た目だけのアイテムではなく、乗り心地の面でも効果がありそう。
そういえば純正オプションを手掛けるホンダアクセスには、車両に合わせてホイール剛性を適正化したホイールを販売しているので、「きっと、このホイールも……」と広報に尋ねたところ「このホイールでそういう事はしていないと思いますよ」と笑われてしまいました。でもショックの角が丸く、乗り心地がいいのです。だから長距離ドライブに最適で、出張用車両にピッタリと思った次第です。


今回は「D1グランプリ・エビス大会」(2022年のD1グランプリ終了! TOYO TIRESはGR86デビューイヤーでシーズン2位!)の取材も兼ねている都合、荷物は結構多め。
3列目シートを床下に収納した状態で、カメラ機材が入ったバック2個にノートPCやストレージなどが入ったブリーフケース、着替えが入ったスポーツバッグ、他に撮影用照明器具を支えるライトスタンドやら脚立やら。そして枕と布団。筆者は枕が変わると寝られないのです。写真はそれらを積載した荷室の様子ですが、床一面に展開しているのがミソ。というのも取材の合間(セッションの間)は、クルマに戻っての作業が多いのです。その際、機材を入れ替えたりする都合、スタックしない方が便利。また寝る時も、荷物の高さがない状態なら2列目シートの背もたれを倒すだけで寝ることができるというわけ。

さて、STEPWGNの荷室でイイと思ったのは、3列目シートの床下収納による荷室開口部の広さだけではありません。まずラゲッジルームとバックドアにランプが用意されているのです。つまり荷室が明るく、陽が落ちても懐中電灯を咥えて荷物を探す必要がないのです。そのランプをLED化(1個3850円)すると、明るさアップ!



取材後の作業を始めるわけですが、外は18時前だというのに真っ暗。

2列目シートの天面には、リア席モニターがついていたのですが、その灯りも重要。これがとても明るく手元を照らしてくれます。そしてこのモニターが後に意外と有効活用できることがわかるのです。
オプションのAC100Vのコンセントはできれば付けたい



左側ラゲッジサイドランニングには、オプションでAC100Vのコンセント(1万9800円)が取り付けできるのです。電力容量は100Wで、トヨタと三菱のハイブリッドが用意する1500Wと比べると圧倒的に電力容量が足りず、筆者が仕事で使っているMSIの15インチゲーミングノートPCを、動かすのはリスクが伴いそう。ですが、走行中は充電をし、作業する時はバッテリーという使い方をすれば問題はありません。



他メーカーと異なるのは、埃をふせぐためかプラグを90度回転させないと刺さらないレセプタクルであること。昼間はいいのですが、夜や暗い場所ではコンセントの位置が見えずに難儀したり。

STEPWGNが仕事で使えるクルマである理由、その2つ目は、おそらく自動車としては初となる45W出力に対応するUSB PDチャージャー(1万2100円)を用意しているところです。夜間、ほかのUSB端子のようなライトが灯かないのはちょっと使いづらいのですが、スマホのみならず、機種にもよりますがノートPC、さらにはカメラまで充電できます! ACコンセント同様、これはマストアイテムです!
収納があるから荷物が多くても安心

車を使う上で重要になってくるのが収納です。運転席の上の大型ルーフコンソール(2万6400円)は、ひざ掛けやタオルなどを入れるのに便利な一品。さらにボックスティッシュ取り出し口もあるのも◎です。

ラゲッジスペースの汚れを防ぐ、掃除を簡単にするトレーもマストなアイテム。お借りした車両にはソフトタイプ(1万3200円)がついていましたが、濡れた荷物の積載に便利な樹脂のトレー(1万6500円~1万9800円)も用意されています。3列目を多用される方はソフトタイプを、そうでない方は樹脂タイプがよいかもしれません。
リア席のモニターでデュアルディスプレイ環境を構築する


では、実際に仕事で使ってみることにしましょう。オフィスは2列目シートを使いました。というのも2列目シートには1列目シートの背もたれに小さなテーブルがあるから。このテーブルの耐荷重は2kgであり、ノートPCを置くにも好適。
STEPWGNの2列目シートのよさは、セダンやSUVでは得られない圧倒的な広さと解放感。それは長時間作業をすればするほど、疲労やストレスの違いとして感じられます。


さて、15.6インチ リア席モニター(14万9600円)は、クルマの中でテレビ等を見るだけのものと思っていたのですが、それだけではありません。HDMIケーブルでPCを接続すると、デュアルディスプレイが構築できるのです。画面はミラーリング設定ですが、もちろん別画面を映し出すこともできます。メインの作業はノートPCで、メールやSNSまわりをリア席モニターに映すと、作業効率は大幅にアップします。もちろん作業BGMとして、YouTubeなどのエンターテインメントを再生するのもいいでしょう。
外からの視線を遮って仕事に集中する









さて、明かりをつけた状態で作業をすると、外から車内が丸見えです。ここで便利なのがプライバシーシェード(1万6500円)とセパレートカーテン(7700円)のセット。この手のアイテムでは、レフ板のようなタイプと布に吸盤をつけたタイプの2種類があるのですが、レフ板タイプは意外とかさばります。吸盤タイプはガラス面に跡が残る点はイマイチなのですが、取り付けカンタンなうえに、1つの袋にすべてが収納できコンパクトにまとまります。
プライバシーシェードは、吸盤の数が多い方が天面側。あとはペタペタと貼るだけです。運転席と2列目シート以降をわけるセパレートカーテンも、天井のフックにカーテンをひっかけるなどで、簡単に取り付け可能。すべての作業をしても3分とかかりません。ちなみに完全遮光ではないので、日中車内が真っ暗、という状態にはならないのですが、それでもかなり暗い状態にまでなります。もちろん夜間なら問題ナシ。サービスエリアやパーキングエリアの照明がまぶしくて寝られない、ということから逃れられます。




仕事が終われば、そのままシートを倒して寝るだけ。STEPWGNは3列目シートと手持ちのクッションなどを使えば、足まで延ばせるフラットベットが構築できますが、荷物が乗っている状態では難しいところ。結果、2列目シートを倒して、オットマンを伸ばしてベッドを作ります。冬の福島の山奥はとても寒いので、電気毛布が必須。車両とつなげ、寝るまでガンガンに布団とシートを温めます。電気を入れたまま寝てしまうと、朝バッテリーが上がってクルマが動かない、という可能性もありますので、寝る直前に車両の電源をオフに。あとはぐっすり朝まで。

朝(といっても4時ですが)起きて準備をして気づいたのは、窓の結露が意外と少ないことに気づきました。大抵は真っ白になって、ふき取るのに難儀するのですが、セパレートカーテンのおかげか、ある程度断熱してくれたようです。これはうれしい誤算。
こうして実際に使ってみて、ミニバン、そしてSTEPWGNの便利さに気づいた次第。それはクルマそのもののデキの良さ、快適さもさることながら、本稿で紹介したアイテムが実に有益だがら。筆者は独身ですが、それでも仕事用としてSTEPWGNが欲しいと本気で思っています!
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