アウディQ4 e-tron(620~737万円)

 クルマの電動化に邁進するアウディ。今までEVは高額車を中心としたラインナップだったが、ついに普及価格帯に新車を投入してきた。

アウディ「Q4 e-Tron」である。短時間ではあるが触れる機会があったので、同社のEVに対する不退転の決意とともにリポートしよう。


これからのアウディを象徴する「Q4 e-Tron」

アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディのEVラインアップ
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
e-tron GT
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
e-tron スポーツバック

 アウディQ4 e-tronは、大型SUV「e-tron」「e-tron スポーツバック」、4ドアグランツーリスモ「e-tron GT」に続く同社EVシリーズ第3弾に当たるモデル。SUVタイプの「Q4 e-tron」とクーペSUVの「Q4 スポーツバック e-tron」の2モデルを展開し、Q4 e-tronが「Base」「advanced」「S line」の3タイプ、Q4 スポーツバック e-tronが「advanced」「S line」の2タイプを用意する。価格は620~737万円と、同社EVとしては初となるコンパクトSUVとともに、(同社としては)普及価格帯の車種として、重要な位置づけとなる。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
全幅1865×全高1630mm
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
全長4590mm
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
リアビュー

 Q4 e-tronはVW(フォルクスワーゲン)グループで展開するEV専用プラットフォーム「MEB」を採用し、ボディーサイズは4590×1865×1630mm(全長×全幅×全高)。パワートレーンは、いずれのモデルもシステム電圧400Vのテクノロジーを使用した、総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを床下に搭載。リアアクスルに1基の電気モーターを搭載し、後輪を駆動させる。


 駆動用電気モーターは最高出力150kW(203PS)、最大トルク310Nm(31.6㎏m)を発生し、0-100km/h加速は8.5秒。満充電時の走行距離は576km(WLTCモード)を謳っている。簡単に言えばVWが近頃日本での販売を開始したID.4のアウディ版といったところなのだが、エクステリアやインテリアなどはアウディの世界観そのもの。2台とも価格も比較的近いので、お買い得感の高いモデルともいえそうだ。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
フロントグリル。
アウディらしい形状だが、開口部はない

 エクステリアは最近のアウディQシリーズらしいオクタゴン(8角形)のグリルを採るが、EVゆえに開口部のないシングルフレームを採用。そこから伸びるワイドを協調したプロポーションや、直線を活かした流れるようなフォルムが知的な印象を与える。


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ポジションライトの変更画面
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ポジションライト
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 ユニークなのは、ポジションライトのデザインをユーザー設定で変更できるところ。ヘッドライトにLEDを初めてクルマに持ち込んだアウディらしい遊び心だ。


インテリアは上質で
EVらしい未来感のあるもの

アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
Q4 e-tronの室内
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Q4 e-tronの室内
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Q4 e-tronのドア内側
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Q4 e-tronの室内
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Q4 e-tronのセンターコンソール
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Q4 e-tronのドリンクホルダーまわり
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Q4 e-tronのUSB Type-C端子
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Q4 e-tronのステアリングホイール
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Q4 e-tronのアクセルペダル
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Q4 e-tronのメーターパネル。ナビが表示される
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
Q4 e-tronのメーターパネルはデザイン変更可能
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
ダッシュボードはかなり面積が広い

 インテリアは近未来感を与えるもの。だが操作系はレバーを多用するなどコンサバティブな面をみせる。USBは欧州車らしくType-Cのみ。ユーザーインターフェースでID.4と大きく異なるのは、ナビを用意し、メーターパネル内にナビ画面などを表示する「バーチャルコクピット」のシステムが従来のアウディ車同様ということ。


 印象的なのはダッシュボードの面積が広いこと。取材日は雨だったので確認できなかったが、太陽光の角度によってフロントガラスの映り込みがあるかもしれない。


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Bluetooth接続画面
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Bluetoothで接続する様子
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Bluetoothペアリング画面
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Apple CarPlay接続画面
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Apple CarPlayでは、ナビと選曲などが同一画面でコントロール可能
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Apple CarPlay使用時のナビ画面(Googleマップを使用)
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Apple CarPlayのホーム画面
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Apple CarPlayでの音楽再生画面
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Android Autoの設定画面
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Apple CarPlayのホーム画面
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Apple CarPlay使用時のナビ画面(Googleマップを使用)
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アウディQ4 e-tronのホーム画面
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディQ4 e-tronのナビ画面

 Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応。接続はかなりスムースであり、動作も機敏だ。

だがワイヤレスは非対応で、ケーブル接続しないと動作しないのは少し残念なところ。


シーンを選ばないオートが便利
高速などではスポーツモードで走りたい

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走行モード設定画面

 走行モードはアウディらしくエコ、コンフォート、オート、スポーツ系、そしてユーザー設定の計5種類が用意される。普段はオートでよいだろう。ちなみにエコ系にすると回生量はかなり強くなる。


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後席の様子
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後席のアームレストを引き出した様子
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足元はフラット
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エアコンのほかUSB Type-C端子、アクセサリーソケットを用意
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アームレストをさらに倒したところ
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トランクスルーの様子
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ラゲッジスペースの様子
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後席シートを倒した様子
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段差はなくフラット
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ラゲッジのドアを開けた様子
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
ラゲッジは二重床で、下には充電ケーブルが収められている
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
2列目ドアの内張

 このサイズのSUVとは思えないほど広いのもQ4 e-tronの魅力。感動を覚えるのは2列目で、フラットな床面ゆえ、足元は大変に広々としている。荷室はモーターがあるため床面は高いものの、容積はクラストップを誇るという。もちろん高級感も十分。アクセサリーも充実しており、満足度はお値段以上だ。


普段は音もなく走り
スポーツモードで本来の姿を見せる

アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 それでは走らせてみよう。フロントドアウィンドウに貼り合わせガラスを用いていること、そしてEVということから、静粛性はめっぽう高いのが印象的。あまり正しい表現でないことを承知の上で言えば、音もなく景色が流れる様子は気味が悪いほどだ。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 足回りはアウディにしては硬めで、スポーティー車両なのかと錯覚するほど。極言すればID.4と似ている。

ゆえに、ハンドリングもID.4と同じフィールだったりする。ちなみにタイヤはハンコック。これもまたID.4と同じだ。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 ではアウディらしさはどこにあるのか? というと、SPORTモードで、その姿を現す。怒涛の加速は、まさにワープ体験といったところ。とても200PSそこそこのクルマとは思えないのは、モーターゆえのトルクの立ち上がり方と、RRという駆動レイアウトによるトラクションのかかりの良さゆえだろう。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 大型SUVのe-tronと似ているのはイイモノ感。とにかくイイ、という言葉が口をつぐんでくる。不満を言う方がどうかしている、とさえ思えるほどで、不満点を見出そうとすると「だったらアウディではなく、そちらをお買い求めください」と言われてしまうだろう。驚くほど高い完成度に、ただただ圧倒されてしまった。さすがアウディ、恐るべしである。


インフラ事情も含めて
アウディは日本でEVを推進する

アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディ・ジャパンのブランドディレクターを務めるフォルクスワーゲングループジャパンのマティアス・シェーパース代表取締役社長
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディは2033年に内燃エンジンの生産を終了する(中国を除く)
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
2024年までにEVを15モデル投入すると宣言

 試乗後、アウディ・ジャパンのブランドディレクターを務めるフォルクスワーゲングループジャパンのマティアス・シェーパース代表取締役社長のプレゼンテーションを聞いた。

そこにはアウディのEVに対する不退転の決意を感じた。


 「日本メーカーは、カーボンニュートラルという問題に対して、様々な方法を模索している。それは大切なことだ。だが、アウディはEVで行くと決め、そこに邁進する。そしてプレミアムEV市場でトップを取る」。なかなか言える話ではない。経済紙の記者なら「日本のEV化は遅れている」という話も含めて、喜んで記事化することだろう。


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Q4 e-tronの充電ポート
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
充電速度についての説明
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
アウディ・ジャパンは今後ディーラーを中心に102ヵ所に急速充電機を設置する

 とはいえ、優れたEV車を作っても充電できなければ意味はない。マティアス・シェーパース氏は、日本のインフラ事情についても語る。「現在、日本の急速充電機の多くは50kWh止まりです。いまだ20kWhなどの充電機が多い。それらは本当に急速充電と言えるのでしょうか」。

いくらバケツが大きくても、蛇口から出てくる水の量が少なければ、いつまで経ってもバケツに水は貯まらない。90kWh級の急速充電機は、今後必要不可欠となる。だが一向にこの数は増えない。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
日本国内でアウディ、ポルシェ、フォルクスワーゲンの充電ネットワークを構築
アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV
年内に110ヵ所の150kWh級の急速充電機が利用できるという

 「私たちは全国のディーラーに90kWh級の急速充電設備を導入していくとともに、ポルシェ、VWのディーラーに設置している急速充電機を使えるネットワーク「プレミアム チャージング アライアンス」を立ち上げました」。このプレミアム チャージ アライアンスは日本独自のもの。ドイツでは行なっていない。


 「日本には日本の事情があります。単純に欧米と同じ戦略を取るわけにはいきません」。これに関しては全面的にその通りだ。単に欧米がEV政策に舵を切っているからといって、インフラが整っていない日本も欧米と同じ速度でやっていいのか? という思いを抱いていた。それゆえ輸入車の販社同士でネットワークを構築しようという考えは、同じVWグループだからできる話とはいえ、実に素晴らしい取り組みである。その数は圧倒的なものになるだろう。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 また、独自の社内制度によって、顧客が抱くEVへの不満を解消する販売員を増やしていくという。ソフトとハードの両面で顧客満足度をあげていく。プレミアムブランドならではの考えだ。


アウディ「Q4 e-tron」は普及価格帯でプレミアム感が味わえるSUVのEV

 アウディは今後も魅力的なEV車を出していくとコミットしている。魅力的なクルマを作るとともに、インフラも整備していくというアウディにこれからも注目していきたい。


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