昨年はHondaからステップワゴン、トヨタからはノア&ボクシー、シエンタが登場。11月にはセレナも発表され、ミニバンの当たり年だったように思います。
2016年のクルマがなぜ今でも売れているのか? 今回はそんなFREEDの魅力を深堀りしてみたいと思います。
ミニバンのスポーティーバージョン
FREED Modulo Xの乗り心地を試す!



スポーツカー至上主義のASCII.jp的に(というか担当S的に)、ミニバンは縁遠いジャンル。よって今までノーマーク&スルーでした。普通にFREEDをお借りしてもネタがないよなぁ~などと思っていた頃、同時並行でホンダアクセスのコンプリートカーブランド「Modulo X」が誕生して10周年を迎えるから何か記事を作ろうかなと調べていたら、なんとModulo Xのバッジがついている現行車はFREEDだけという事実が発覚! 「だったら、FREED Modulo Xをお借りすれば万事解決!」となり、お借りしたのはFREED Modulo X。コンパクトミニバンのスポーティーバージョンとなります。



現行のFREEDが2016年に登場しましたが、その後2019年にマイナーチェンジ、2022年に一部改良がなされて今に至ります。マイナーチェンジをしたとはいえ、近年のHonda車とはインテリアデザインの方向性が違うようで、世代差みたいなものを感じてしまうのは仕方のないところ。特にUI周りは、世代差を強く感じます。たとえばプレイスティック系のシフトなどは「今のHondaはボタン式なのに」と思いますし、メーターパネルはフルLCDではありません。
運転支援の「Honda SENSING」周りも、高速道路で運転支援を利用しているとき、クルマ側でステアリング操作しているのに、車線をはみ出しそうになると自ら警告音を発するあたりに、ちょっと前の車という印象を受けました。もっとも、これらは「知らない人からしたら、なんということもない話」ですし、いわば重箱の隅をほじくり返しているようなもの。
FREEDには3列シート(6人乗り、一部モデルは7人乗り)のほか、2列シート(5人乗り)のFREED+の2車種が用意されています。Modulo Xが用意されるのは、そのうちFREEDのみ。「コンパクトミニバンで、走りの気持ちよさを求める人のためのクルマであって、5人乗りで走りを求める方は、ほかのクルマをどうぞ」ということなのでしょう。
専用シート装備のインテリア
黒を基調としたデザインで高級感も
一方でメーターパネルの前に小物入れを置いたり、メーターパネルのレイアウトそのものがN-BOXに似ているところから、「軽自動車ユーザーが少し大きなミニバンに乗り換えたい」というときに、すんなり受け入れられるようにしているのかなと。こういうのって、案外重要。UIがコロコロと変わると不安になってしまいます。とはいえ、目新しさも重要だったりするわけで、これは難しいところです。




Modulo Xではインテリアは専用シートを採用。黒を基調としたコンビシートで質感は十分。インテリアも黒基調で実にシャープ。専用本革巻きステアリングホイール(ディンプルレザー&スムースレザー)は手にしっとりとなじみます。専用フロアカーペットにはModulo Xのアルミ製エンブレムがおごられ、これまたオーナー心をくすぐります。
FREEDのハイブリッドの燃費は20km/L
ホンダアクセスおなじみの実効空力パーツも装備

Modulo XのパワーユニットはノーマルのFREEDと同じで、ガソリンエンジンとハイブリッドの2種類を用意。NISMOのロードカーのような、特別なモードが用意されているわけではありません。今回お借りしたのはハイブリッドです。なお、ハイブリッドは、e:HEVではなく1世代前のもの。とはいえ、燃費はリッターあたり20㎞(WLTCモード)を超えてるようです。


エアロと足回りに注力するのがModulo流。あちらこちらに、見るからに効きそうな“実効空力デバイス”がおごられています。ほかにも専用のLEDフォグライトと専用フロントビームライトでスポーティー度がアップ。2022年の仕様変更ではボディカラーの変更がなされ、今回の試乗車はその時に登場した新色となります。この青、とてもイイです!


専用15インチホイールの隙間からは白いダンパーがチラッ。これが実にオシャンで、所有欲をくすぐります。
3列シートを倒せば荷室は広くなるが
横幅が少し狭いのがネック





まずはバックドアを開けてみましょう。3列シートが出ている状態の荷室はN-BOXと同程度という印象。ならばと3列目シートをたたもうとすると、これがステップワゴンのような床下収納ではなく、側面の壁にペタンと倒すタイプで、思ったよりも入らないかも、と感じたり。ただ、床が相当低いので、重たい荷物を載せるのはラクそうです。



ほかの座席に比べると3列目シートが少し狭いというか、簡素のは仕方ないところ。それでもドリンクホルダーは用意されています。乗降は大柄の男性では結構大変で、子ども向けでしょう。




2列目シートは快適そのもの。うれしいのはプライバシーシェードがついているところと、運転席/助手席の後ろにテーブルがついているところ。3列目シートを無視して広く使えば「これは新幹線では?」と悦に浸れそうです。ASCII.jp的に不満なのはUSBがないことでしょうか。
オプションのモニターは素敵なアイテム。HDMI入力に対応しているので、映画等はもちろん、PCとつなげてセカンダリモニターという使い方もできます。
N-BOXに似たメーターパネル周り
Apple CarPlay対応もAndroid AUTO非対応なのが残念




運転席・助手席は、冒頭でも触れたようにN-BOXを踏襲したという印象。個人的にはメーターパネルの中央が燃料計ではなく、インフォテインメントにして、ナビ画面の補助などが出た方が便利だと思った次第です。パーキングブレーキがフット式だったことも少し驚きました。また、運転席から後席の様子が確認できるチャイルドミラーも用意されていました。





USBはType-Aが1つのみで、増設するにはアクセサリーソケットに変換プラグを差し込む必要があります。不満に思えたのはスマホトレイで、イマドキの大型スマホを置くと不安定なところ。それを解消するのが純正アクセサリーで、運転席と助手席の間に置かれたバッグにはスマホポケットが。あとはケーブルをつなげるだけでOKです。





ナビゲーションシステムはApple CarPlayには対応しますが、Android AUTOには非対応。画面サイズに不満はありません。ナビ画面は分かりやすいですし、純正ナビらしく車体側のインフォテインメントディスプレイと連動しているので、他社製品を選ぶ必要はなさそうです。ですが、このモニターが左端にあるのは不便だなぁとも。
Moduloブランドだけあって
走りは軽快で乗り心地は硬め

FREED HYBRID Modulo Xを一言で言えば「軽快な走りが楽しめるコンパクトミニバン」というもの。乗り味は少し硬めだけれど、ドライバーにとって運転が楽しいと思える雰囲気に仕上げていると感じました。元のFREEDがどういう乗り心地なのかはわからないけれど、過去に乗ったことのあるほかの車種傾向から考えて、おそらくModulo Xの方が乗り心地はよく、同乗者にとってもうれしい改良になっているでしょう。
パワートレインは、e:HEVと比べると振動や音だけでなく、変速時やアクセルオフなどでガクガクした部分があったりして、世代の古さを感じた次第。さらに言えば、エンジンの動作音などが耳につきやすいように思います。運転しながら、空走距離を長くするよう心掛けて走らせるのが、燃費の面でも快適さの面でもよさそう。逆にアクセルガンガン、ブレーキチョンチョンみたいな走らせ方はよろしくないかもしれません。

さすがModulo Xと思ったのが、幹線道路でのコーナーリング。ハンドルの切り増しなどもなく、思い通りにスーッとラインをトレースする印象で何より速い! 下り坂などでは、気づいたら前の車に追いついてしまい、それが逆にストレスになるほど。いや、煽るつもりは毛頭ございません。クルマが軽快で気持ちよくて速いコーナーリングが楽しめながら、乗り心地がよい。

空力と足の良さが最も光るのは高速道路でしょう。今回、このクルマに乗ってモビリティリゾートもてぎにお邪魔したのですが、東北道で120km/h巡行をしたところ、これがすこぶる安定していてロングドライブに有益であると確信しました。ただ直線なら運転支援もバッチリなのですが、コーナーが連続するような場所だと、ちょっと車線からはみ出すと警告音が。そこはちょっと残念だったり。
SUVよりFREEDの方が背の高い荷物が積載できそうですし、多くの人が乗れるなど、ステップワゴンの時も思いましたが、改めて独り身でもミニバンはアリなんじゃないかなと。ミニバンは運転していて面白くないことが多いのですが、Modulo Xなら上質な乗り心地と運転の楽しみが両立していて、「SUVよりもコッチの方がスポーツしてないか?」と思ったのが正直なところ。
過去、S660やFITなどのModulo Xグレードに触れてきて「買うならコッチでしょ」と思っていたわけですが、今回も同じ。FREEDを買うならModulo X一択、でしょう! もちろんお金が許すなら、ですが。
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