「セダン冬の時代」と言われて久しい中、2019年7月に「インフィニティ」から「日産」へと戻ったスカイラインは歓待をもって迎えられました。中でもスカイライン史上最高の400馬力を超える最高出力を実現したグレードである400Rは、多くの人の注目を集め、予約が殺到したのだとか。
あれから時を経ること約3年……。どんな進化をしたのか、ASCII.jp自動車部の“ゆみちぃ部長”こと寺坂ユミさんとともに今一度触れてみました。
GT-Rと切り離されたスカイライン
発売当初は若者が400Rを購入したというが……

2019年に登場したV37型スカイラインは、2013年に登場したモデルのビッグマイナーチェンジ版。なんやかんやで10年選手のモデルになります。V37型最大のトピックは、スカイライン史上初となるハイブリッドモデルをラインアップしたこと。そのハイブリッドモデルには、2019年のビッグマイナーチェンジ時において、高速道路でのハンズオフ走行を可能とする「ProPILOT 2.0」が装着されました。


ProPILOT 2.0を実際に体験した寺坂ユミさんは「すごい! 本当に手放しできるんだ!」と、元おニャン子クラブの奥様を持つイケメン俳優が出演するCMの真似をして、大喜びをしていたことを昨日のことのように思い出します。

スカイラインは主に中高年が購入するクルマとされていました。ですが、2019年のマイナーチェンジモデルから状況が変わります。報道によると、若者が400Rグレードを購入しているというではありませんか。2019年9月に出されたプレスリリースによると「新型スカイラインの受注実績は、グレード別では「ProPILOT2.0」を搭載したハイブリッドモデルが48%、ターボエンジンモデルが52%、そのターボの中でも400Rが半分を占める構成比となり、注目度の高いハイブリッドモデルはもちろん、400Rについても計画に対して想定以上の人気の高さとなっています。
また、400Rは平均年齢が50代後半のセダン市場において、40代以下のお客さまが3割近く占め「年齢層の若いお客さまが多いことが特徴です」なのだとか。スカイライン復活と、誰もが心を躍らせたことでしょう。
あれから3年が過ぎ……。ハイブリッドモデルは2022年夏をもって終売。これは車外騒音規制フェーズ2に適合させられなかったことが理由とされております。あわせて日産はセダンのシーマ、フーガの2車種もラインアップから姿を消す道を選びました。自販連によれば2021年の国内販売台数はスカイラインが2737台。フーガが580台、シーマに至っては75台……。バブル期の「シーマ現象」は、今や見る影もありません。

さらに同年6月に日本経済新聞が「スカイライン開発中止」と報道。日産自動車 星野朝子執行役副社長がNOTE/AURAの発表会見で「先週末に日本経済新聞でスカイライン開発中止と、日産の象徴、開発に幕というような記事が日経新聞で報道されておりますけれども、そのような意思決定をした事実は一切ございません。日産自動車は決してスカイラインを諦めません」と、同報道を強く否定する一幕まで。
このようにセダンは売れないクルマで、まさに冬の時代。現在、日産のラインアップで残っているセダンはスカイラインのガソリン仕様のみと、大寒波が吹き荒れているのであります。
その中、日産は昨年9月にスカイラインの一部仕様変更と価格を改定。VR30DDTTエンジンを搭載した300馬力モデルのGT、GT Type P、GT Type SPに、400馬力モデルの400Rという2グレード4車種展開となりました。また400Rにはエクステリアカラーに、2022年モデルのGT-Rで設定されたミッドナイトパープルを追加。内装では、シックな装いとプレミアム感を演出する「ブラウンインテリアパッケージ」を新たなオプション(GTグレードを除く)として設定しました。

「若いお客様が多いことが特徴」だという400Rを、若いアイドルの寺坂ユミさんにチェックしてもらう、というのが本稿のテーマです。
SUVやミニバン人気に押されているが
車内の快適性や走りの良さはセダンならでは
400Rを見た寺坂さん。「まず、セダンはない!」と、実に辛辣なものでした。確かに以前、ProPILOT2.0を試乗した時も「これがセダンじゃなかったら……」と仰っていました。「だってセダンって、なんか年配の方が乗っているというイメージで。SUVの方が荷物入るし」と。
わからんでもないです。でもカッコよくないですか? 「あと、この色ですよ。ProPILOT2.0の時は赤でカッコよかったですけれど、黒っぽい色のセダンってなんかコワイ人が乗ってるみたいで」。



まずは「荷物が載らない」問題に関して。さっそくラゲッジを見ると「結構奥行きが深くて、大きな荷物が載りそうですね」と意識に変化が。ハイブリッドモデルと違い、後席シートを倒してのトランクスルーもできます!「確かに広いです。でも、SUVの方が荷物の出し入れがしやすいですし、何より部員Kさんの大好きな「車中泊」が難しそうですよ」。うーん……。



次に室内をチェック。「なんか、セダンって感じの室内ですね」とひとこと。部員Kは、インフォテインメント系が2世代前といった印象を受けましたし、インテリアもイマドキの日産っぽさからはかけ離れているように感じた次第です。一方で落ち着いた雰囲気で、質感は上々。イイモノ感はたっぷり。




セダンが良いクルマなのは間違いない
再びセダンが脚光を浴びるには?

今回は都内をグルグルっと回ってみました。実にトルクフルで生理的心地よさに満ちている、というのが第一印象。運転していながら楽しくて、ややソフトな乗り心地と相まって「いいクルマだなぁ」と感じずにはいられません。そして、踏めば怒涛の加速をみせるあたりに、往年の「羊の皮を被った狼」を彷彿させ、頬を緩まずにはいられません。確かにBEV(バッテリー電気自動車)の方が、トルクが一気に立ち上がります。ですが「グワッ」という感覚と、頭打ち感のなさが400Rにはありますし、何よりBEVにはない「オトナの余裕」「円熟味」を感じるのです。


後席に座って部員Kの様子をみる寺坂さんも「確かに乗り心地がよくて、いいと思います」と、スカイラインを見直したようです。安定感のある乗り味は、同乗者に安心感を与え、運転手にはいつでも踏めるという自信を与えてくれる。実に素晴らしいではありませんか。



その後、ゆみちぃ部長は400Rと同じエンジンで、サスペンション形式も同様のフェアレディZを試乗。Zは2人乗りで、荷物は400Rほど載りませんし、大好きなProPILOTも付いていません。ですが、Zを降りた彼女は「こっちの方がイイ!」と笑顔で語るではありませんか。



ですが、部員Kがもしクルマを買うとしたら、Zではなく400Rを選びます。それは「クルマは買ってから予想もしない使い方が求められる」から。その「予想もしない使い方」への対応度が高いのがSUVで、それが現在のSUV人気なのでしょう。

でも、Sport Utility Vehicleといいながら、走りはまったく楽しくない。その真逆がスポーツカー。となると、その間をとるのがセダンであったり、派生となるステーションワゴンなんでしょうね。そして真のスポーツでユーティリティーな乗り物は400Rなのかな、とも。クルマ選びは理想も大切ですが、落としどころも大切だったりするのです。

今回、寺坂さんの様子をみて「セダンが復興するなら、何が必要なのか」と考えていました。
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近は自動車にも興味を抱く。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載で、お気に入りの1台を探す予定。