4月に行なわれた那須川天心選手のボクシングデビュー戦で、ラウンドガールを務めた新 唯(あらた・ゆい)さん。その翌日から「レベチのラウンドガール」として誌面やウェブ記事を賑わせました。
家族全員マツダ車というマツダ党
唯さんのお父さん(以下、唯パパ)は、若いころは山でクルマやバイクを楽しまれたのだとか。そのため「乗り物に関しては、お父さんの許諾を得ないといけない」という鉄の掟があるのだそうです。そんな唯パパは大のマツダ党で、その影響もあってか、唯さんも、唯さんの弟さんもマツダのクルマに。当然、ディーラーとは家族ぐるみのお付き合いとなるわけで、担当の営業さんはこの連載の存在を知っているのだとか。ディーラーを訪れた唯さんに「色々なクルマに乗られているのですね。この記事に書いてあるのは本当ですか?」とお話をされたことがあるのだそうです。もちろん、本当の事しか書いていませんよ!
唯さんの話から推測するに、唯パパのクルマは2012年に登場した3代目アテンザだった模様。その頃のマツダといえばSUV推しで、営業さんもCX-5などを推したことでしょう。ですが、唯パパはセダンをチョイス。その影響は唯さんにも表れており、この試乗企画が始まった当初は「SUVって車高が高くて好きじゃない」などと、アンチSUVでした。今はまったくそのようなことはないのですが。
さて、唯さんにアテンザの思い出を尋ねると「家族と旅行に行く時とか乗っていました。
アテンザはその後「MAZDA6」という名に

現在、MAZDA6というモデル名になっているアテンザは、2002年5月に初代が登場。2度のフルモデルチェンジを経て現在もなおブランドメッセージ「Zoom-Zoom」を体現するミッドサイズセダン&ステーションワゴンとして販売されています。ちなみにアテンザの前身はカペラで、カペラの誕生は1970年。なんやかんや実に52年間にわたる歴史があったりします。

そして2022年12月下旬、マツダは「MAZDA6」を商品改良するとともに、初代アテンザ/MAZDA6の誕生20周年を記念した特別仕様車「MAZDA6 20th Anniversary Edition」などを追加しました。商品改良では、走行性能の向上、運転支援機能、快適装備の追加、機種体系の変更(「MAZDA6 20th Anniversary Edition」「Sports Appearance」という2種類のグレードを追加)とのこと。


なかでも、SKYACTIV-D2.2ディーゼルターボエンジンは、最高出力を190馬力から200馬力へとアップさせたほか、高回転域まで伸びるエンジン特性へと変更。さらにペダル踏力変更によるコントロール性を向上させたとのこと。パワーアップにともなってか、操る楽しさを追求しパワーステアリングのモーターアシスト特性もチェンジ。ちなみに唯パパのアテンザはガソリン仕様車だったとのこと。

パフォーマンスに目がいきがちですが、マツダのディーゼルはアドブルー(尿素水)の補充が不要で、普通のガソリン車のように扱えるのがポイント。さらに他社ディーゼルエンジンよりも静かで振動も少ないのも魅力です。



運転支援機能としては、車線監視機能付きアダプティブクルーズコントロールを搭載。これは長距離移動の時にとても有効です!


快適装備としてワイヤレスApple CarPlayに対応したほか、ワイヤレス(Qi)充電機能を備えました。iPhoneユーザーにとって利便性はこの上なく向上した、といえそうです。ただ個人的にはトレイは横置きではなく、縦長にしてほしかったですね。だってスマホは縦長で持つもの。




その上で、「MAZDA6 20th Anniversary Edition」は、ボディーカラーには新しい匠塗「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を専用色として採用。フロントフェンダー部に専用オーナメント、シルバー塗装のフロントグリル、高輝度塗装が施された19インチアルミホイールなど、20年の歴史を重ねた熟成の走りと風格、優雅さを表現した仕立てとなっています。
タイヤはブリヂストンで、レグノかなと思ったら「ツーリング・ポテンザ」ことトランザ。結構走りを意識されているところをタイヤから感じました。

「もともと(CX-60などの)ラージ商品群で使う予定だったものを、今回使いました」という専用色「アーティザンレッドプレミアムメタリック」は、マツダ匠塗の第5弾にして、匠塗の第1弾にあたるソウルレッド誕生から10年の節目。それゆえマツダの力の入れようは相当なもの。匠塗については別記事に詳しく書いていますが、「光の加減で、ボルドーワインのような力強い色合いになったり、ブルゴーニュワインのような優雅で綺麗な色へと変化するんです」と語ります。
撮影日はあいにくの天候だったのですが、明るい陽の光が当たると、本当に綺麗!
■あわせて読めば理解が深まる
・独特なツヤ感が魅力! マツダ独自の塗装技術「匠塗」の秘密を聞く
いたるところに20周年を感じるギミックが
専用カラーはかなり落ち着いたイメージ
ということで「MAZDA6 20th Anniversary Edition」を見た唯さん。開口一番は「ソウルレッドじゃないんですか?」とポツリ。「だって、うちのアテンザ。

ちなみに、唯さんのNDロードスターは「スノーフレイクホワイトパールマイカ」という白色。「そんなにソウルレッドが好きなら、ソウルレッドにしなかったんですか?」と尋ねると「色はもともと、絶対に白がよかった」というわけで、なかなかに難しいお年頃。

曇天模様だったこともあってか「ちょっと年配の方に向けた色っぽいですね」と、若い唯さんはポツリ。ワインと同じで年齢を重ねると、この色の良さがわかるんですよきっと。フロントマスク、特にヘッドライト形状が釣り目のクルマが好きな彼女。「家にあったクルマとグリルが違いますね。こっちはキラキラしているんですね。顔付きはいいですね」とニッコリ。


ボディーサイドには20周年記念のバッジがおごられています。「CX-60の直列6気筒モデルもですが、最近こういうエンブレム、流行っているんですか?」と素朴に思った唯さん。








ラゲッジをチェックしましょう。SUVに見慣れた目からすると「ラゲッジのドアは小さいですね。軽くて閉めやすい!」とトランクドアを触る唯さん。ラゲッジ容量は標準的ですが、最近輸入車でよく見かける12Vアクセサリーソケットは用意されていない模様。あれば走行中にポータブルバッテリーが充電できるのですが……。うれしいのはラゲッジスペース側からボタンひとつで後席背もたれを倒せること。しかもフルフラットになりますから、長物を運ぶ際にとても便利。「よくできているんですよ」と、イイ部分は自分のクルマのようにドヤります。










後席に座った唯さん。「家族で伊豆の温泉旅行に行ったんですよ」などと思い出に浸ります。ボディーカラーがワインレッドで、室内はコルク栓のようなコントラスト。「色がいいですね。上質感があります」と笑顔をみせます。「シートの素材もいいですね」と座面を手でなでると「足元はSUVに比べると狭いですが、苦ではありません」とチェック開始。
「エアコンは温度調整できないんですね。ガラスは1枚のスモークですね」と、レベルの違うチェックぶり。ASCII.jpも含め、他媒体でも自動車取材をされていますから、チェックポイントがわかっているのです。そんな唯さんを驚かせたのがリアガラスにプライバシーシェードがあったこと。運転席側から操作するため、後席の人が任意で動かすことはできないのですが「これは日焼けしなくてイイですね」と、さすがレべチなモデルさんはお肌を気にされているようです。でも、オープンカーは大好き。



チェックの中で「USBケーブルとか充電できないのかな」と、ASCII.jp的な心配をした唯さん。実はアームレスト部分にあったりするんですよ。「しかもシートヒーターもある!」と驚いた様子。そして撮影中「スマホの壁紙、私にしているんですか?」と、筆者の芸の細かさに感心するも「これ、恥ずかしいのでやめてもらっていいですか?」とクレームをいれました。
タンレザーの高級感溢れるインテリア













タンレザーのシートに目を奪われる室内。ヘッドレスト、フロアーカーペットに20周年の記念ロゴが見えます。「ここにも20周年……」と、若い唯さんはポツリ。さて、久しぶりのアテンザかなと思いきや「結構インテリアが違うんですね」とのこと。逆に言えば、今風にアップデートされている、ということなのでしょう。インテリアの雰囲気には満足気で、「この前のCX-60もですが、イイモノ感がありますね」と笑顔。乗降性は文句ナシです。
カーオーディオはBOSEのシステムを採用。中低域に量感をもたせたサウンドバランスで、耳あたりのよい柔らかな音が楽しめます。



メーターはLCD全盛の世には珍しい指針式。逆にこちらの方が見やすかったりします。中央の速度計のみLCD画面で、様々なインフォメーションが表示できます。「このメーターパネルの感じがマツダですよね」と、見慣れた画面に安心です。ヘッドアップディスプレイも搭載していますが「これはあってもなくてもどっちでもいいですね」とのこと。






運転席まわりを見回すと、コインポケットがあったり、グラスケースがあったり、スロットインDVDプレーヤーがあったりと、イマドキのSUVでは見かけない装備がちらほら。クルマの中でのお化粧直しに便利なサンバイザー裏のミラーはスライド式で、駐車券を挟むスペースもちゃんと用意されています。ちなみに唯さんは最初、コインケースを「これ、灰皿?」と勘違い。ちなみに彼女は喫煙者ではありません。



ASCII.jpに重要なUSB端子はアームレストの中にあり、タイプAが2系統。うち1系統はインフォテイメントシステムとつながります。12Vのアクセサリーソケットもアームレストの中。アームレスト内に置くことで、ケーブルまわりはスッキリするのですが、いちいち開けたりするのが面倒。あと、12Vアクセサリーソケットはポータブルバッテリーを使う人からすると「ケーブルをさしたらフタが閉めづらい」ということも。挟まれて置かれたSDカードスロットはナビのアクティベートなどに用います。コッソリAUX端子が用意されているのですが「イマドキ、ライン入力でクルマと接続することってあるのかな?」と思ったり思わなかったり。
Apple CarPlayとAndroid Autoの動作をチェック
ASCII.jpの自動車取材で最も時間がかかるのが、ここから始まるインフォテイメントシステムまわり。「デジタル視点での車レビュー!」を標榜する都合、スマホをつなげたり、アレをやったり、これをやったりとゴリゴリとチェックしないと、編集から怒られてしまいます。それに家族ぐるみでお付き合いしているというマツダの営業マンさんから「本当ですか?」と取材に対して疑いの目がかけられているわけで。ここは相当厳しくチェックせねばなりません!
というわけで、ゴリゴリとチェックするのですが、その様子を見る唯さんは相当ヒマそう。すみません……。







まずは純正ナビから。マツダの場合、専用のSDカードを差し込めば、センターディスプレイをナビとして活用できるようになります。クルマの電源をオンにするとナビの画面が出るわけですが、この起動時間が他社と比べてかなり長め。そしてスポットを入力するわけですが、なぜか50音順で「あ」が左上。日本語の縦書きは右上ですから、違和感バリバリで、「ぬ、はどこだ?」と慣れるのに時間がかかったり。
ちなみに唯さんはサクサクっと入力できるのですが、「でも、いつも“あ”が左上で変だなーって思っているんですよ」とのこと。燃料モニターなども見ることはできますが、ナビ起動中は見ることはありません。

ちょっと気になったのは、バックモニターの画面。というのも解像度がイマドキのクルマにしては粗いように思ったから。唯さんはモニターをみないでバックをする人なので平気なようですが、気になる人は気になると思います。この画面の粗さは、ナビ画面などでも気になっています。
それでは、新たに対応したというワイアレスApple CarPlay接続を検証したいと思います。その前に、まずはUSB接続でのApple CarPlayから。






車両とスマホをUSB接続すると、車両側とスマホの両方にメッセージ画面が表示されます。それをOKすれば、Apple CarPlayは起動します。あとはスマホライクに使うだけ。Apple CarPlayのよいところは、音声入力が優秀なところ。純正ナビの音声入力は、ほかの国産メーカーもですが、一発で認識することは稀です。また、ナビ画面と音楽画面が同時に出ているのも◎。もちろん全画面ナビ表示もできますが、いちいちメニュー画面を開かずともオペレーションできるのは実に快適です。一方、ルートに関しては純正ナビの方が頭がよいです。続いてワイヤレス接続をしましょう。






ワイヤレスApple CarPlayを利用する際は、まず車両のWi-Fiをオンにすることから始まります。そしてスマホが車両のWi-Fiをキャッチ。あとはメッセ―ジに従えば、接続できます。特に難しいことはありません。ケーブルのわずらわしさから解放されて、実に快適な使い心地。
さて、Apple CarPlayができるのだから、Android Autoに対応できないわけがない、というわけで検証開始です。




Android Autoの接続自体はApple CarPlayと同様、操作は簡単。何も困ることはないでしょう。ワイヤレスでの接続もようやく今年解禁されたので、別の機会に試してみたいと思います(これまで日本ではAndroid Autoのワイヤレス接続ができなかった)。



機能面ではAndroid Autoの方が豊富な印象ですし、何より音声入力の精度がiOSの比ではありません。「さすがGoogle」と感心するわけです。というわけで、目的地を入力してみましょう。


ここで問題が発生。タッチパネルから文字が入力できないのです。文字を入力する場合は、車両側のジョグダイアルをグルグルするか、スマホから入力するかのいずれかということに。もちろん音声入力で解決をするのですが、これは予想外の展開です。よって結論から申し上げると、MAZDA6の場合、ワイヤレスのApple CarPlayが一番ストレスがなく使えるのかなと。
静粛性も高く、セダンらしい上質な走りが楽しめる
マツダのラインアップがSUVだらけなのは誰もが知るところ。セダンはMAZDA6のみ。唯さんも「MAZDA6を選ぶなら、CX-5とかCX-60を選びますね」と語ります。でも、どうして唯さんのお父さんはアテンザを選ばれたのでしょう。その謎を解くべく、ステアリングを握ることにしましょう。

事前に「ハンドリングが向上し、エンジンもパワーアップして、上まで回る」という話を聞いていたので「スポーツテイストが強いのかな」と思ったのですが、これがまったく逆。実にまったりとしたクルマだったりします。よってスポーツカー好きの唯さん的にどうかなと思い尋ねたところ「最近、静かなクルマとか乗り心地のよいクルマもイイなって思うようになりました。オトナになったんですよ自分」と、このフィーリングには満足気。

エンジンの出力アップ云々、という点に関しては、今までとの差というのは3000回転より上の領域の話。普通に走っている時に3000回転を超えることはそうそうなく、高速道路の追い越しなどで「おぉ! さすが200馬力」と思ったり。
貼り合わせガラスを用いていることもあってか、静粛性は見事なもの。もちろんディーゼルらしい音は聴こえてくるわけですが、他社に比べて断然静かです。それゆえ「ディーゼルならこんなモノ」という評価軸が「イマドキのハイブリッド車との比較」になってしまいがち。そうなると、アイドリングストップからの復帰に振動を感じたり、超低速走行時にガクガクとした動きに「もう少し滑らかだといいのに」と思ってしまったりするのです。

ディーゼルエンジンは燃費がよい、と言われています。今回街乗りと高速道路を使っての走行では14.4km/Lという結果になりました。この数字だけをみると、同じマツダでもCX-60が高速道路の120km区間で20km/hを超えましたし、他社のガソリン・ハイブリッド車と比べると悪いイメージです。でも一昔前のガソリン車の同格セダンだと10km/Lを切っているわけで。

そこで以前、唯さんとアウディA5を取材した時はいくらだったかと確認してみると12km/L。となると「ディーゼルとしては燃費がよい方」といえそうです。

「運転しやすいクルマだと思います。乗り心地もよくて不満はないですね」と笑顔の唯さん。不満がないことが不満で、原稿に困るというもの。ですが、この完成度の高さが20年の重みなのです。ワインディングをかっ飛ばすようなスポーツ走行を楽しみたいかというと、そういうクルマではありません。むしろそれは、このクルマの良さをスポイルしてしまうような気がします。
このクルマが活きるのは、高速道路。運転支援のテストも兼ねて乗ってみました。



この読みがドンピシャリで、長距離クルーズがとても快適! ディーゼルエンジンだから云々というのはまったく気になりませんし、やや柔らかめの足にもかかわらず、つなぎ目を乗り越えた後の振動収束は早いので、フラットライドに近いではありませんか。
運転支援は、ややキツいコーナーだと車線をはみ出しますが、基本的には問題ナシ! 「なるほど、唯パパは高速道路を快適に走りたいから、このクルマを選ばれたのかな」と感じた次第です。

MAZDA6を一言で語るなら「ゆったりと乗り味を楽しむクルマ」。このゆったりと、というのは、昨今のクルマでは得られないフィーリングで、現代では大変貴重な存在だったりします。この良さは、ちょっと乗っただけでは「特徴がなく、おもしろくないクルマだなぁ」と判断しがちですが、ひととおりクルマに乗って、ある程度わかっている人だからこそ気づく良さであり、唯パパはそんな方なのでしょう。
とにかく味わい深い1台。まるでブルゴーニュワインを、ゆっくり味わう至福のひと時と似ていて、いつまでも乗っていたくなる、そんなクルマ。そのクルマで家族で旅行に行っていたというから、家族の時間を大切にされて、お嬢様を育てられたのですねと、唯パパに感謝しても感謝しきれません。
走り屋だった唯さんのお父さんが家族のクルマを選ぶ際に、SUVやミニバンではなくセダンのMAZDA6を選ばれたことに納得。いつか唯さんのお父さんと、このクルマの良さをワインを飲みながら語り合いたい、そんな気持ちになりながら、唯さんを次の現場へと送り届けたのでした。

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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。