新車で買ったクルマの情報2023、私は四本淑三です。今回の話題の中心といたしますのは、5年前に買った2018年後期型ロードスターRF。
さすがに5年目ともなれば、様々なことが起こるわけでして、その一環として私のところにもついにアレがやってまいりました。
初代ロードスターから宿痾(しゅくあ)のように続くドレン災害。RFになってもフロアが浸水するのはどうしてなんでしょうか。
最初は草いきれがやって来る
史上最も暑いと言われた7月の下旬、よつもとさんは庭で草刈りをしておりました。食糧難による戦争や飢餓による人口減少など、これから人類に襲いかかる災禍の数々を想い、萎びてゆくばかりの人心を尻目に雑草のやつらは伸びる伸びる伸びる。くっそー、てめえらなんか人間じゃねえや、叩っ斬ってやる!
そこでマキタの電動草刈機をブイブイ言わせていると、お隣もエンジン付きの草刈機で作戦開始。そのお隣もまた応戦というわけで、辺りはすっかり青臭い匂いに包まれたのであります。
こうして草を刈るにも電力や燃料を使うのが文明であり、生えてたってどーってことのない雑草を制圧したがるのが人のテリトリー意識です。これら意識の総和が経済活動の拡大を支え、戦争のような環境破壊につながる。そう思いますと温室効果ガスの増大を抑えて昨今のクソ暑さを防ぐには、まず草刈りのようなしょうもないところから止めるべきではなかったか。と私は後悔したのですが、やっちまったものは取り返しがつきません。
そして自然と一線交えた後の麦茶はうまい。
ところがロードスターのドアを開けると、ムッとする草いきれの匂いが。あらら?
もやし期を経て煎茶期、そして破局へ
草を刈っている最中、窓は閉め切っていたではないか。近くに駐(と)めていたフォレスターは何の匂いもしないぞ。ならばロードスターの無防備な外気導入口から雑草の微粉が侵入したのであろう。
そう推察し、微粉を飛ばすべくオープンにしてエアコン全開、内気循環、外気導入を繰り返しながら走ってみるも、ますます匂いは酷くなるばかり。のみならず服や髪にまで青臭さが移る始末。なんじゃこれは。
それを放っておくと、数日後には賞味期限切れのもやしのような匂いに変化しておりました。北海道らしからぬ高温多湿の日々が続いたせいでしょうか。得体の知れない微生物にロードスターが支配されつつある。そう考えると気持ち悪くて仕方ありません。
おまけに雨が降るとフロントスクリーンに曇りができる。
これはもしかしてアレか? ついにアレが来たのか? 慌てて助手席、運転席後ろのフロアカーペットを触るも変化なし。謎だ。
首を捻っているとその後は一転して煎茶のような「香り」に満たされていたのです。湿度を感じさせる「匂い」ではないところに一縷の希望が。やつらは乾いている。カタストロフィーの脅威は去った。ざまあ。
という安堵の日々も束の間、ゲリラ豪雨と共にやってまいりました、ついにアレが。

ドレンホールを探せ
助手席後部フロアに浸水発見。匂いも曇りもこいつのせい。疑う余地なくドレンのどこかが詰まっております。
詰まりが深刻な場合は、分解してドレンパイプを取り出す必要もあるそうですが、大抵の場合はドレンホールにエアーガンを刺して吹けば解決するそうです。
うちにエアツールはないのでディーラーにお願いしたいところですが、生憎お盆休みで休業中。そこで懇意にしている整備工場へ行き、一発吹いてもらいました。
ただ、メカニックにドレンホールがどこにあるのかを伝えるのが大変です。

まずルーフを半開き状態にし、エンジンを止めます。ルーフが動くと危険ですから、エンジンは必ず止めていただきたい。そして持ち上がったファストバックの中を覗くと排水系統が見えてまいります。以下は助手席側のルーフ格納部を上から見たところ。

RFには雨樋があちこちに張り巡らされておりまして、後端については3系統の排水ルートがあります。
各ルートからの排水を集約して受けるトレーが黄色いシカクの下にあり、そこに溜まった水をドレンパイプで車体の下へ流す仕組みです。しかし、このトレーのドレンホールが異物で塞がったり、ドレンパイプが詰まったりすると、トレーから水が溢れて乗員室を襲います。特にドレンパイプは途中にある逆支弁のところで詰まりやすく、詰まっていても見えませんからエアで吹くしかないわけです。

同じ排水経路は運転席側にありまして、トレーはいずれもシートベルトアンカーの下にあります。そして目標のドレンホールは、リアウインドウから伸びるドレンホース斜め前の下です。最初は位置の特定に手こずるかも知れませんが、ライトを当てればどうにか目視できます。

斜めに桟の入った丸い穴がドレンホールです。ここにエアーガンをブッ刺すのです!
逆止弁があるのでエアーガンでのアプローチは必ず上から。エアーガンのノズルが短いとドレンホールに届かないので、少し長めの方がいいかも知れません。
幌のND型のようなフィルターはないので、RFはエアーガン一発で解決はします。ただ異物の流入は避けられないので、詰まる時は一発で詰まる。どっちの一発も面倒なので、もうちょっとメンテしやすい仕組みにならないものでしょうか。
それにしてもドレンホール、黄砂で真っ黄色だな……。
ドライ・マイ・カー

処置が済んだあと、排水系統に水を流し込んで開通確認をします。
私はBピラーの穴からドリップポットで水を流し込みました。特に珈琲工具の注ぎ口は、ここに差し込むのに最適な角度で曲がっているのでオススメです。いや、まあ別に何でも良いのですが。

トレーが溢れてまた浸水すると嫌なので、念のためWiFiファイバースコープでドレンホールを監視しながら水を流し込みました。滞ることなく無事排水している模様。

車体下から流した分だけ水が落ちてきたら問題なし。

あとはひたすらカーペットを乾かすだけ。人工セームやら厚手のクロスやらを総動員して、とにかく水を吸いまくります。

それでもカーペットの裏は湿気ていますから乾燥させます。ただ、カーペットを剥がすのは大変なので、天井をオープンにして日に晒しつつ、小型の扇風機をシートの背面に置いて換気し続けました。

ついでにトレーに溜まっていた異物もブロアーのノズルを差し込んでぶっ飛ばしました。これはたまにやっておいた方がよろしいかも知れません。
悪化する自然環境からロードスターを守りたい

ドレンホールが詰まったのは雑草の微粉だけでなく、今年春先に降り注いだ大量の黄砂も関係しているように感じました。トレーやドレンホールも真っ黄色だったので、おそらくドレンパイプの逆止弁にも溜まっていたはず。黄砂は水を含むと粘土のようになり、乾いて固まってしまうと流水くらいでは簡単に落ちません。
そうではなくとも、洗車の際にドレン出口からポタポタとしか水が落ちて来ないのは確認していました。いずれにしても詰まりかけた排水経路に雑草の粉とゲリラ豪雨がダメを押し、床上浸水に至ったのでしょう。
仮に想像通り黄砂も絡んでいるとすれば、複雑な排水経路を持つロードスターにとって良いことはひとつもありません。近年、飛散量が増えているのは大陸の砂漠化が進んでいるから。偏西風の向きでも変わらなければこれが急に減るとは考えにくい。ならば今から環境活動家に転身すべきか、現実的な解決策としてガレージを建てるべきか。
とりあえず目先の問題が解決してビールが旨いので、また今度。