◆乗りやすいマクラーレンってどんなクルマ?

 久々のスーパーカー連載(いつも久々ですいません)は、これまた久々にマクラーレン。尖っているクルマが多い同社のランナップの中で、グランドツアラー的位置付けの「GT」をお借りした。


 当初はハイブリッドモデルの「ARTURA(アルトゥーラ)」を考えていたのだが、マクラーレン的なグランドツアラーってどういったものだろう? と興味を持ち、こちらをチョイスした。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン

 マクラーレンについて簡単に説明すると、イギリスの高級スポーツカーメーカー「マクラーレン・オートモーティブ」のことで、前身のマクラーレン・カーズは1985年にブルース・マクラーレンによって創業され、2010年に現在の同社が設立された。実は比較的新しいメーカーではあるものの、マクラーレンF1チームとして80~90年代のF1を席巻し、さらに今なおF1に参戦し続けている。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン

 スーパーカーで知られる「マクラーレン F1」やメルセデス・ベンツとのコラボ「SLRマクラーレン」など、数は多くないが超高性能&超高額なクルマを作り上げて、現在の社名に変更後は「720S」や「570S」といったハイパワーロードカーを中心としたラインナップの自動車メーカーになった。とはいえ、一貫してミッドシップの2シーターモデルしか作ってないし、今でも限定車で1000馬力のスーパーカーなどもリリースしている、ちょっと珍しいメーカーだ。


 そんなマクラーレンがラインナップに加えたGTは、同社初のグランドツアラーとして2019年5月に発表された。グランドツアラーは「グランドツーリング(大旅行)」から発生した言葉で、ハイパフォーマンスとラグジュアリー性で長距離を快適に走れる車種のことを指す。GTというとレーシングカーやスポーツカーを思い浮かべる人もいるかもしれないが、実はスポーツカーとは違うジャンルだ。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン

 目を三角にしてとにかくスピードを求めてきたマクラーレンが放つ、初のグランドツーリングカー。まずはスペックから見ていこう。


◆高性能だが包み込まれるような乗り心地

 ボディーサイズは全長4685×全幅1925×全高1215mm、ホイールベースは2675mm、車重は1530kg(DIN)。エンジンは4LのV8ツインターボ、最大出力は620PS/7500rpm、最大トルクは630Nm/5500~6500rpm。最高速度は326km/h。0-100km/hの加速は3.2秒と、スペックだけ見たらとんでもないモンスターマシーンだ。タイヤはフロントが225/35R20、リアが295/30/R21とこちらもスポーツカーっぽい大口径。フロントリフト機能はもちろん装備済みだ。そしてお値段は2695万円と、こちらもマクラーレンらしい。



 だが、実際に乗ってみると乗り心地の良さに驚かされる。7速SSG(Seamless Shift Gearbox)は特段の変速ショックも感じさせず、気がつけばどんどんシフトアップしていく。街中での移動が快適で不快感がないのだ。以前「570S」に乗ったときは、足は硬いしパワフルだしでピリピリしながら運転していたが、GTは足周りは適度に柔らかく、ちょっとの段差は電子制御ダンパーがショックを吸収してくれるため、腰も痛くならない。ドライブモードをノーマルにしておけば、一般道では十分すぎるほど。1000~1500rpmくらいで法定速度に達する。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン

 ボディーが大きいことを忘れるくらい、街乗りしやすいGTだが、高速道路に乗るとマクラーレンらしさをいきなり発揮する。高速で合流のためにアクセルを踏み込むと、まだ半分くらいしか踏んでないのに、V8ツインターボがうなりを上げてとんでもない速度で加速していく。2675mmの長いホイールベースのおかげか、直進安定性が良すぎて感動した。湾岸線をビタっと真っ直ぐに走ってくれるのだ。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
フロントは最低地上高が110mmということもあり、そこそこ低い
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マクラーレン
後ろはエアロがあるので、輪留めにピッタリつけると擦る可能性アリ
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マクラーレン
フロントリフトオフの状態
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マクラーレン
フロントリフトオンで約20mm上がる

 ドライブモードをスポーツに入れると、GTっぽさはナリを潜め、完全にスーパーカーになる。足周りは硬くなり、背後のエンジンがうなりをあげて、カーステの音楽が聞こえなくなる。さらにこの上には「トラック」モードがあるが、これはサーキットユースのためなので、使わなかった(怖くて使えなかった)。ぶっちゃけ、グランドツアラーにこのスピードは必要あるのか? と思ってしまった。快適性を求めるならノーマルモードで十分だろう。燃費も一気に悪くなるし。



 一般道も高速道路も非常に快適で不快感なく走れるのだが、一般道で気になるのが全幅1925というサイズ。かなり横幅が広いので、狭い道には入りづらい。なので、大通りを遠回りして目的地に行くこともあった。最低地上高は110mmとまあまあ低いが、フロントリフト機能で130mmにできるため、駐車場などの段差はあまり気にならなかった。ただ、リアには車体の下側にエアロ(デフューザー)があるため、駐車時に輪留めに接近しすぎると擦ってしまうので危険だ。


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マクラーレン
ディヘドラルドアを開けるときはここに指を入れる
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マクラーレン
ゆっくりと斜め上に跳ね上がる
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マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
意外と横側にも開くので、駐車場で隣にクルマが居るときはちょっと怖い

◆高級車らしい上質感のある流れるようなデザイン

 最後にデザインだが、前から後ろにかけて流線型になっているボディーは本当に美しい。ドアは斜め上にあがる「ディヘドラルドア」なので、スーパーカーっぽくてカッコイイ。エアロもスーパーカー然としたゴツイものではないので、エレガントさすら漂う。フロントボンネットの下にはエンジンではなく150Lのトランクルームがあるが(エンジンは後ろなので)、ここはかなり深く、ゴルフバックも入るそうだ(ゴルフしないので不明)。リアにも470Lのトランクがあるが、エンジンルームがあるため底が浅いので、あまり大きなものは入れられなさそうだ。




 ホワイトレザーのシートも上質で、電動調整式のヘッドレスト一体型のセミバケットシートはホールド感もいい。長時間乗ってても腰が疲れなかった。インフォテインメント用ディスプレイはグレアなので、日が当たると非常に見づらいが、メーター周りの液晶はアンチグレアなのでこちらは見やすい。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
ホワイトレザーが美しい運転席
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
ハンドルはボタンがなくてシンプル
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
太いサイドシル
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フロントタイヤ
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リアタイヤ
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フロントのラゲッジスペース
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マクラーレン
リアのラゲッジスペース
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マクラーレン
リアのハッチはボタンで閉める
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マクラーレン
アクセルはオルガン式
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マクラーレン
パーキングブレーキはちょっとわかりづらい位置にある
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マクラーレン
スピーカーはイギリスのブランド「Bowers&Wilkins(バウワース・アンド・ウィルキンス)」
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マクラーレン
シフトはなく、すべてボタンで操作
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
ドライブモードはここのスイッチで変更する。先に下の「Active」ボタンを押して光らせてからでないと、モードの切り替えはできない
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マクラーレン
スポーツモードのインフォメーション
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マクラーレン
Trackモードのインフォメーション

【まとめ】大きいことを除けば実用的なスーパーカー

 マクラーレン GTはグランドツアラーなので大きくて小回りが効かない。コンパクトカーのようなシティーコミューターではないのだ。しかし、一般道の大通りを走ったり、高速道路を走るときは、これほど適したクルマはない。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
ドリンクホルダーは3ヵ所ある
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
シガーソケットも装備
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
USB端子はType-A
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
グローブボックスは狭い。メーカーの配慮かマスクが入っていた
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
ヘッドレスト一体型のシート
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
タッチパネルで様々な設定ができるが、グレアパネルなので反射と指紋が結構キツイ……
マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン
もちろん、スマホを接続して音楽などを聴ける

 2シーターなので大勢で移動するというクルマではないが、たとえば大切な人と2人で東京から京都あたりにお出かけ、なんてシチュエーションには最適だ。ドライバーとパッセンジャー(助手席側の人)が肉体的な疲労を感じることなく片道450kmを走りきれるだろう。


 とにかく久々に乗っていて気持ちがイイと感じた。高級車はその金額の高さやハイパワーもあって、乗るときにかなり緊張するのだが、マクラーレン GTは最初に緊張しただけで慣れてしまえば、普通車のような感覚で運転できた。


マクラーレン史上、最も街乗りしやすい「マクラーレン GT」の快適性がクセになる
マクラーレン

 スケジュールの都合ですぐに返却しないといけなかったが、お別れしたくない! と強く思わされたクルマだった。


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