昨年、格闘技のラウンドガールやドラマのヒロインに抜擢されるなどブレイクした新唯(あらた・ゆい)さん。ドライブ好きの彼女には秘めたる夢があります。
◆憧れのクルマ、ポルシェ 911
夢にまで見た白の911 カレラ カブリオレに感動した唯さん。取材前には珍しく自撮りされ、「納車したい」という内容でSNSに投稿する喜びよう。そんな唯さんとポルシェの自撮り画像は、瞬く間に世界中に拡散。それだけ注目度が高かったということで良しとしましょう。
ただ、唯さんは決してブランド志向でポルシェを手に入れたい、というわけではありません。幼少時代の体験によるものなのです。
父親と一緒にドライブしていた時のこと。普段、あまり見かけないクルマに唯さんは興味を抱かれたのだそうです。さっそく父親に「あのクルマは何?」と訪ねたところ「ポルシェ911だよ」と教えてもらったのだとか。それから彼女の頭の中にポルシェは特別な存在となるとともに、父親の影響(英才教育)もあって、クルマそのものに関心をもつように。

その結果、マツダのND型ロードスター(白)を所有するに至ります。同時にオープンカーの魅力にハマり、冒頭にある「いつの日かポルシェ911のオープンカーを手に入れたい」と、心底願うようになった、というわけです。

この話を聞いたASCII.jpスタッフは大感動。2022年にポルシェのタルガトップモデル「911 タルガ 4」を用意しての試乗体験企画を実施しました。憧れのフラット6(水平対向6気筒エンジン)に触れた唯さんは過去イチの大感動ぶりで、一層ポルシェに対する思いを強くしたのでありました。
そうこうして1年ほど経過したある日のこと。筆者が別企画でポルシェをお借りした時に、偶然今回の取材車両である純白の911カレラ・カブリオレを見つけてしまったのです! 当然、スグに唯さんの顔が頭に浮かんだわけで、担当者に「あのクルマ、貸してください」と嘆願。この度、晴れて唯さんにとって夢にまで見たオープンカーのポルシェ911を試乗する機会を得た、というわけです。
◆992型の911 カレラ カブリオレはこんなクルマ
唯さんにクルマを乗ってもらう前に、今回の試乗車である992型の911 カレラ カブリオレについて少しご紹介しましょう。

911のカブリオレモデルは現在、エンジンの最高出力の違いで385PSの「カレラ」、450PSの「カレラ S」、480PSの「カレラ GTS」、580PSの「ターボ」、650PSの「ターボ S」という5モデルがラインアップされています。さらにカレラには後輪駆動モデルと四輪駆動モデルが用意され(ターボモデルは4WDのみ)、なんと8グレードが用意されています。
よって、今回の試乗モデルの911 カレラ カブリオレは「もっともベーシックな911のカブリオレモデル」になるのですが、それでも車両本体価格1845万円! さらにオプションが色々ついて、今回の試乗車の合計金額は2000万円をゆうに超える、まさにレベチの高級車です。




ボディーサイズは全長4519×全幅1852×全高1297mm、ホイールベース2450mm。ざっくり言えば、トヨタ・GRスープラと全幅、全高、ホイールベースはほぼ一緒だけれど、全長は300mm長いというプロポーションです。最低地上高は不明ですが、思っているよりは高く、ガソリンスタンドでフロントバンパーを擦って……ということは、よほどのことがない限りなさそう。ちなみに、GTSグレードからフロントリフトという車高をあげる機能がつくそうで、さらに安心です。

駐車場で後輪がタイヤ止めに当たるまでバックすると、リアバンパーやマフラーテールに大きなダメージを負うことになるのは、スポーツカーあるある話。唯さんもそのあたりは十分に把握されており、ハンドルを託すスタッフも安心です。


ソフトトップルーフの開閉は電動式で、オープン/クローズの所要時間はともに約12秒。50km/h以下であれば走行中でも開閉できますので、信号待ちの間に開け始めて青になったとしても大丈夫です。とはいえ、開閉動作中はボタンを押し続けなければならないため、片手運転になるので走りながらの操作はやめたほうがいいでしょう。


「フラット6が見たい!」という唯さん。ですが、昨今の911はエンジンフードらしき部分を開けても、出てくるのはエンジンオイルの給油口と、2つの放熱ファンのみ。ちょっとさみしかったりします。



ラゲッジスペースはフロントに配置。「これ……NDロードスターより狭いかも」と言葉を失われます。ちなみに、ガソリンタンクの給油口はフロント側にあり、ハイオク専用で65Lほど入ります。昨今のガソリン価格で「ハイオク満タンで!」と言ってしまったら最後、諭吉超えというとんでもない事になりかねません。お財布がペラペラのスタッフはドキドキしっぱなしです。

「ポルシェってどこを見てもカッコいいです」という唯さん。「ホイールのデザインも良いですね」と笑顔をみせます。ちなみにこちら、20/21インチ Carrera Classic ホイールというオプションでして、お値段は33万2000円。ちなみに標準は19/20インチCarreraホイールになります。
◆ツートンレザーによる上質な車内空間


ボルドーとブラックのツートンレザーからなる室内。ため息が漏れる上質な空間です。ちなみにオプション価格68万5000円になります。



車検証をみると、911 カレラ カブリオレは4人乗りとのこと。
なお、背もたれを倒すことができるようで、その場合は後席がラゲッジスペースになるのですが、申し訳ございません。倒し方がわからずで……。








お金の話をすると唯さんの機嫌が悪くなるのですが、オプションのスポーツシート プラス(4way電動調節・12万1000円)に加えて、シートベンチレーション(フロント・15万9000円)の組み合わせに着座する唯さん。はい、内装だけで100万円コースです。憧れのポルシェ 911 カレラ カブリオレの運転席に座り、言葉を失います。そして一言「動かしてもいいですか?」。
◆複数のスポーツモードで街乗りからサーキットまで!



タコメーターは指針式だけれど、そのほかはディスプレイ。右側にはナビゲーション画面を出すこともできます。できるのですが、ちょっと見づらいような……。


走行モードはWET、NOMAL、SPORTS、SPORTS PLUSと4種類のプリセットと、任意設定のINDIVIDUALを含めた5種類。ステアリングホイールの右下にあるダイヤルをグルグルして選択します。中央の「スポーツレスポンスボタン」を押すと、20秒間フルブーストして最大加速が楽しめるとのこと。公道で使うことはないでしょう。もちろんタッチディスプレイでエンジンが3段階、サスペンション2段階など細かく設定することもできるほか、リアのスポイラーを動かすこともできます。

インフォテインメントはスマホ的。Android Auto、Apple CarPlayに対応しています。ナビゲーションはもちろんローカライズされています。ですが音声認識はちょっとイマイチで、思い通りの入力はできませんでした(輸入車あるあるです)。

渋滞ついでにお話をすると、アダプティブ・クルーズコントロールがあり、さらにトラフィック・ジャム・アシスト機能も用意。これは渋滞時の発進停止を繰り返してくれるというモード。レーンキープもついているようで、かなりラクラクです。そのレーンキープは高速走行中は、ちょっと効きが弱い印象を受けました。ハンドルはしっかり握りましょう、ということですね。
◆足周りの硬さがポルシェの証!
それでは唯さんの運転していただきましょう。右側にあるイグニッションを回すと、フラット6が目覚めます。その振動と音は誰もが幸せな気持ちになります。そして屋根をあけると、その音はよりダイレクトに耳に届きます。「これだけで最高です!」と満面の笑顔。

乗り心地に関していえば、近年の自動車取材で記憶がないほどの硬さ。都心部の246や環七など、渋滞気味で路面状況の悪い場所で走らようものなら、リッター4km台の燃費と相まって、心底後悔することでしょう。唯さんも「最近、普通のクルマばかり乗っていたからかもしれませんが、これは硬いですね。ロードスターより全然硬いです」と感想を漏らします。ですが「運転している分には、これで全然平気! めっちゃ楽しい!」と満面の笑顔。
一方、助手席に座っている時は「このクルマ、音が大きいですね……。乗り心地も硬くて……ポルシェだから仕方ないのかな……」というと無言モードに突入。これに渋滞が重なると車内の空気は険悪なものになりますので御注意ください。


美味しいポイントは100km/hを超えたあたりから。まさに水を得た魚で、硬めの足が活きてきます。エンジンも喜んでいるようで、燃費もリッター10km台に入ってきます。オープンドライブをしていると、当然ながら走行風が室内に舞い込んできます。ここで便利なのがウィンドディフレクター。こちらもボタンひとつで自動的に稼働します。ただ、後席に人がいた場合は利用することはできません。使ってみると「巻き込みがかなり減りました。オープン状態では必須ですね」と唯さん。

筆者は過去、911 ターボ Sのカブリオレモデルを試乗したことがあるのですが、その時の記憶と照らし合わせると、カレラ カブリオレの方が硬派でプリミティブ。乗り心地の面ではターボに軍配が上がるのですが、あちらは四輪駆動。リアエンジン・リアドライブならではの背中が蹴飛ばされるかのような感覚は、特別なモデルを除いてカレラのみの特権といえるかも。
唯さんも「後輪にトラクションがかかって加速している感じ、イイ感じです。それに、これ以上のエンジンパワーはイラナイですね」というように、ポルシェらしさを存分に感じたいなら、ターボが買えるお金があっても、あえてストイックなカレラを選ぶのはアリではないかなと。ターボのルックスに心惹かれるものはありますが、筆者ならカレラを選びます。

楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。クルマを降りて「ポルシェ 911、いいなぁ。買えるようになるまで頑張らないと」と、自分に言い聞かせるように語ります。その言葉を聞いて、若い頃に憧れていたもののために、長期ローンを組んで頑張って働いたことを思い出しました。
憧れのために頑張って働くという気持ちは、年を経るにしたがって失われるもの。そうなる理由は、現実を知り、身の丈を知ってオトナになったことの証なのかもしれません。2000万円という金額は、おいそれと出せるモノではありませんが、夢に向かって頑張る気持ちは、とても大切なのかなと。
「納車したら取材してくださいね」と唯さん。その日が来ることを、我々はいつまでも待っています。

■関連サイト
モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。