新年を前にして家のウォシュレットが壊れました。普段当たり前に出てくるものをお尻が感じない衝撃。
新車を買った情報2024、人生楽ありゃ苦もあるさ、私は四本淑三です。前回はコラテックDOLOMITI(ドロミテ)の電動コンポ「シマノ105 Di2」の楽ちんぶりについてお伝えしましたが、今回の話題の中心といたしますのは、それで楽したツケは自転車生活のどこに回ってくるのか。
まずバッテリーが切れたらおしまい。
「ほれみろ自転車は人力で動かしてなんぼ。文明に頼っているといつかバチが当たるぞ。ざまぁ」
そんな怒号が私の心の底に潜む昭和のレイヤーあたりからも聞こえてまいります。ですが自転車だって文明の利器。そして電動コンポは、もはやスマホと一緒。ないと困るのであります。それにEVと違ってパワーソースは人力ですから、乗員がこと切れない限り走行不能に陥るわけでもありません。ただ変速しないだけ。
とはいえシフトスイッチが空振りするその瞬間は、ウォシュレットから水が出ない絶望に近いものになるはずです。それだけは絶対にイヤ。では我々はいかにして楽ちんな文明的自転車生活を維持すべきか。つまるところ切れるバッテリーとどう付き合っていくかであります。
その前にバッテリーが切れたらどうなるんでしょうか。
切れる前の救済措置
私はまだ経験はないのですが、まずフロントディレイラーがインナー側に落ちて動かなくなるのだそうです。つまり軽い方のギヤで止まってくれる。これはありがたい。もしアウターで止まったら上り坂でペダルが重すぎて絶望するしかありません。シマノさん、ありがとう。
そうしてフロントディレイラーが動かなくなっても、まだリアディレイラーは動きます。そこで電力が残っている間に、すかさずリアを巡行しやすい軽めのギアに入れておけば、どうにか帰れるというわけです。繰り返しますが、シマノさん、ありがとう。
では、そうなる前に何をしておくべきかを考えてまいりましょう。
動作時間はフル充電で1000km

まず105 Di2の電源たるバッテリーの物性について把握しておきましょう。
型番は「BT-DN300」。定格電圧7.4V、公称容量500mAh(3.7Wh)、重さ52gのリチウムイオンバッテリーです。corratec DOLOMITIの場合はシートピラー内に収まっており、フロント及びリアディレイラーに電力を供給しています。

リアディレイラーにある充電ポートに専用ケーブルを介してUSB 5Vで充電し、フル充電からの動作時間は約1000kmというのがメーカー公表値。ブルベで一気に1000km以上走る場合は別として、週末サイクリストには十分な動作時間でしょう。
その残量は、リアディレイラーにある小さなファンクションスイッチを「ちょい押し」するとLEDの点灯・点滅が始まるので確認できます。表示は、緑(100-51%)>緑点滅(50-26%)>赤(25-1%)の3段階。私は緑点滅になったら充電していますが、その際の走行距離は500km前後。まだバッテリーが新品に近いこともあって、メーカー公表値通りに使えています。
モバイルバッテリーがあれば安心

マニュアルによりますと、充電時間は「USB端子対応ACアダプターの場合は約1.5時間、パソコンのUSBポートの場合は約3時間」、充電機器は「USB端子対応のACアダプターは、電圧=5.0 V DC、電流≧1.0 A DCのものを使用する(原文ママ)」とされています。
我が家の事情で言えば、玄関に置いた自転車と100Vのコンセントが遠いため、充電は5V/1A出力のモバイルバッテリーでやっています。つまり電欠対策にはモバイルバッテリーがあればOK。
まだ実際に路上でやらかした経験はありませんが、家に帰る数十km程度の電力なら、それほど待たずにチャージできるはず。充電中は変速機構が動きませんから、停車してドリンクや補食を摂取しながら待つことになるのでしょう。
そしてふと思えば、サイクルコンピューター、パワーメーター、ハートレートセンサー、ライト、レーダー、空気入れに至るまで、最近の自転車用機材はUSB充電の必要なものばかり。それらも充電できるとなれば、もはやモバイルバッテリーはツーリングに不可欠な携行品と言えるかも知れません。
純粋なDi2の電欠対策としては、予備のDi2バッテリーを携行する手もあります。電力を使い切っても交換すればすぐ走れるので、一気に長距離を走る場合は安心でしょう。ただDi2のバッテリーは単品で買うと2万円近くいたします。それにシートピラーを抜いて交換するとすれば、交換後に再度ポジションを合わせる必要もあります。そこそこ手間がかかるのは覚悟しなければなりません。
バッテリーチェックはアプリで

バッテリー切れが怖いのは、メインのリチウムイオンバッテリーだけではありません。シフトスイッチにもバッテリーが入っています。ディレイラーを動かすリモコンですから、これが切れても変速しませんし、切れる前の救済措置もありません。
入っているのはボタン電池のCR1632で、左右それぞれ2枚ずつ。

シフトスイッチのバッテリーチェックは片側2つのシフトスイッチを両押しますとLEDインジケーターが光ります。緑ならOK。残り10%を切ると赤が点灯するそうです。
バッテリー残量の確認方法としては、もうひとつスマホアプリの「E-TUBE」を使う手もあります。ボタン電池とリチウムイオンバッテリーの両方が一度にチェックできるので、私はもっぱらこっちの方法でやっております。

この画面はおよそ500km走行後の状態。ボタン電池は両方ともOK。リチウムイオンバッテリーの残量5セグ表示のうち2セグを残した状態ですから、もう充電した方が良さそうです。
実は輪行で困るDi2
もし走行中にバッテリーのピンチを知ったら、変速の要らない場面では電源を切って節約したいところ。ところがDi2にオフスイッチはありません。左右のシフトスイッチを2~3回クリックするとシステムが起動し、30分ほど入力がなければスリープするだけ。
とはいえ普段乗っている間はそれで問題なし。困るのは輪行や車での移動中、誤ってシフトスイッチに触れるとディレイラーが動いてしまうこと。放っておくと無理な力がかかってトラブルの原因になるので、輪行の場合はバッテリーを抜いて対処する方もいらっしゃるようです。つまりバッテリーを抜く以外に電源を切る方法がありません。
飛行機輪行についても、少し面倒です。基本的にリチウムイオンバッテリーを内蔵した車体は受託手荷物として預けられません。よってDi2のマニュアルには「車体からバッテリーを外して機内持ち込みの手荷物扱い」にせよとあります。ただ実際の運用については「一定の条件を満たしたもの」なら預けられるという話も聞いているので、詳しくは航空会社にお問い合わせくださいと申し上げておきます。
電動コンポはデジタルガジェットと心得よ
最後に、バッテリーの問題としては気温があります。リチウムイオンバッテリーの動作温度はマイナス10~50度。真冬の北海道では使えませんが、氷雪路はロードバイクのタイヤでは走れないので問題なし。
ただ現状でもクルマに積んで日向に停めておけば、車室内が50度を超えることはあります。それで直ちに爆発するとか煙が出るという事態にはならないでしょうが、バッテリーが劣化する可能性はあるので、夏は置き場所に気をつける必要がありそうです。
以上、バッテリーのトラブルは注意さえ怠らなければ、実は未然に防げそうなものばかり。そして実際に使ってみると、電動コンポの脆弱さを実感するのは電源だけではありません。

それはDi2が純然たる無線電子機器であること。通信エラーやデータ損傷などで誤動作する可能性はあることです。これは原因が目に見えないし、特定も難しい。
私も購入から約3ヵ月で、システムが起動せず変速しない、変速モードが切り替わるという現象を経験しています。Di2のインターフェイスとしてGARMINのサイクルコンピュータ「Edge 540」を接続していますが、これに心拍計、パワーメーター、ライト、レーダーなどジャラジャラと接続しているのも原因かも知れません。無線機器は接続機器が増えるほど不安定になりがちなので。
これまでのところスイッチを連打する、置き換わった設定は再設定するという方法で対処できていますが、やはり思った通りに動かないと最初は焦ります。この辺りはパソコンと同じで、そういう物だと思って付き合っていくしかなさそうです。
皆様の電動コンポにも幸多からんことを。Good luck!