アイドルユニット「純情のアフィリア」の10期生、寺坂ユミさんをASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長としてお迎えし、様々な自動車を試乗するという当企画。今回は「ゆみちぃ部長のカラダに優しいクルマ探し」がテーマ。
腰に優しいクルマを求めてシトロエンに
と、大風呂敷を広げましたが、従来の連載と何も変わりはなく。でも、それに至るまでは相応の理由があります。それは2023年の8月下旬のこと。新曲「ジェネレーション・ギャップ」のプロモーションに、TIFやアニサマなどのライブ出演、さらには台湾公演と大忙しだった寺坂さん。気も心も充実の夏を過ごされていたのですが、ついに体が悲鳴をあげてしまい……。
腰痛によりドクターストップがかかってしまったのです。その結果、9月以降に行なわれたリリースイベントは欠席。残されたメンバー8名が頑張られたのでした。

当然、ASCII.jp自動車部の取材も延期。歌って踊れる帰国子女の皐月ユナさんが、ゆなちぃ臨時部長として、トヨタ・シエンタの取材をしました(トヨタのミニバン「シエンタ」は家族だけでなく“超”ペーパードライバーにも優しい)。

幸いにも、寺坂さんの腰痛は回復。

さて、腰に優しいクルマって、どんなクルマよ? というのが次なる問題。で、ふと頭に浮かんだのが、以前取材したシトロエン「C3エアクロス」でした。シートはフカフカで、まさにソファという形容がピッタリ。「ということは、シトロエンが良いんじゃね?」と思い立った次第。ならば「シトロエンの最上位とは、どんな乗り心地なのか?」と気になるのは自然の流れです。今回C5Xの最上位グレードであるPHEVに白羽の矢を立てたのでした。
独特なスタイリングは間違いなく唯一無二のセダン

セダンとSUVとワゴンを混ぜたような独特のスタイリングが印象的なC5X。同郷のライバルである、ルノー「アルカナ」が先鞭をきったそれは、その後、シトロエン C5X、トヨタ クラウン・クロスオーバー、プジョー 408へと波及。




寸法は全長4805×全幅1865×全高1490mm、ホイールベースは2785mmと、ざっくり言えばクラウン・クロスオーバーを一回りコンパクトにしたサイズ。全幅1900mmを切っているので、取り回しはすごくイイです。天面はシャークフィンですから、高さ1.55m制限の立体駐車場にも入りそうです。


ホイールサイズは19インチと大径。もちろんフランスのミシュランタイヤです。驚いたのは、タイヤが細いということ。クラウン・クロスオーバーもそうでしたが、ホイールを大径化しつつ、タイヤは細めにするのがイマドキのトレンドなのでしょうか。



フロントマスクは「結構好きかも」と高評価。そして「ボンネットの両端がくぼんでいるようなデザインというのは珍しいですね」。

C5X PHEVは最近になって追加されたモデル。C5XとC5X PHEVの外観上の違いは、フロントフェンダー付近に設けられたバッジ程度。パッと見た感じ「あまり変わってないんじゃない?」と思われるのですが、中身はかなりの別物。というのも、その名のとおり充電機構を有するハイブリッド車だから。




パワーユニットは、1.6L 4気筒ターボのガソリンユニットにモーターを組み合わせ、システム合計最高出力225PS、最大トルク360Nmを発生します。駆動用バッテリーの容量は12.4kWhで、最長65kmのEV走行が可能。充電はACのみで、一般的な200V/6kWタイプのチャージャーを使えば、満充電まで2.5時間とのこと。1kWhあたりの電気代は全国平均31円くらいですので、385円で65km走行できる、という計算になります。昨今ガソリン代は高騰していますので、とても魅力的に映ります。

3段階用意されている走行モードのうち、スポーツモードにセットしドライブモードをBモードにすれば、走行しながらの充電が可能です。ほかのモードでもBモードにすれば充電はしてくれるのですが、エンジンを積極的に使うBモードの方が貯まりやすい様子。いうまでもなく、燃費は悪くなりますが……。
C5XとC5X PHEVの違いはパワートレインだけにとどまりません。「アドバンストコンフォートアクティブサスペンション」が標準装備です! この長い名前のサスペンションは、ようするに可変減衰ダンパーです。シトロエンのサスペンションというと、窒素ガスを気体バネに用いて高圧油圧制御する独自のサスペンション機構「ハイドロニューマチック」が有名でした。現在ハイドロニューマチックは廃止され、油圧式のプログレッシブ・ハイドローリック・クッションになりましたが、こちらは固定減衰。可変減衰はC5X PHEVのみ、ということになるようです。


走行モードはエレクトリック、コンフォート、ハイブリッド、スポーツの4段階。パワートレインの動作モードとあわせて減衰力が変わります。コンフォートが最も柔らかく、スポーツが最も硬め。
荷室は大きく使い勝手良好





荷室はかなり広く、使い勝手はよさそう。12Vのアクセサリーソケットがないのは、ちょっと残念。荷室は二階建て構造で、下側には充電ケーブルが収められています。ゆみちぃ部長的には、荷室とドアの間に段差がないところが好印象とのこと。「ここに段差があると、荷物を滑らせて載せるのができないんですよ」なのだそうです。



後席を倒せば広大な空間が出現! 「見た目から想像を超える広さですね」とニンマリ。なるほど、ワゴンっぽい使い方もできそう。ですが「車中泊をするには、ちょっと長さが足りないですね」ということで、そっち方面での使い方は難しいでしょう。ちなみにトランクスルーも用意されています。わざわざ席を倒さなくても、なんてときに便利です。




「ゆみちぃ部長のカラダに優しいクルマ探し」にとって、後席は重要な要素。
一方で「前のシトロエン C3エアクロスの方がシートが柔らかかったかも」とも。カジュアルリビングのパーソナルソファから、ちょっと上質なソファに変わった、という感じでしょうか。と思っていたところ「リクライニングはないのですか?」と想定外の質問が。どうやら少し寝かせた姿勢の方が、腰痛が軽減されるようです。残念ながらC5X PHEVに後席リクライニング機構はありません。




アームレストにスマホ置き場があるのも◎。後席の充電用USB端子はType-Aが2系統。アメニティも十分です。さらにイイと思ったのは、運転席だけでなく後席窓ガラスにも遮音性の高い「合わせガラス」が用いられていること。静粛性が高まれば、車内での会話が弾むというものです。










運転席もチェックしましょう。「色々なところに山型模様があるんですね」と、細かくシトロエンのマークがちりばめられています。「フランスのクルマということもあるのでしょうけれど、オシャレに見えます」「すごくシンプルでスッキリしていますね」とも。このデザインをしたのは、柳沢知恵さん。筑波大学大学院芸術研究科修了後、日産自動車デザイン本部に勤務。ルノーへの赴任を経て、2015年よりシトロエンからお誘いがかかり現職に。ボディーカラーも素材も、柳沢さんが関わっているそうです。



天井にはガラスルーフが設けられていますが、開口部は運転席側のみなのはちょっと残念。また、バイザー裏のミラーはLEDで、しかも両サイドに設けられていることから、メイク直しには便利そう。





ステアリングホイールはプジョーほどではありませんが小さめ。これは女性にとって嬉しいかも。ステアリングのフィールも軽めです。メーターパネルはLCDですが、表示がちょっと独特で慣れるまで少し時間がかかるかも。ADAS(先進運転支援システム)は、イマドキのクルマとして必要な機能は一通り網羅しており不満なし。運転席右側にはステアリングヒーターやガソリン給油口の開閉ボタンが用意されています。
Apple CarPlayもAndroid Autoも使える利便性



インフォテインメントディスプレイはマツダ車のような横長。マツダよりは画面が大きいようです。エネルギーマネジメントモニターとナビを一緒に表示したり、ナビ全体を表示の2通りあります。エネルギーマネジメント画面の下には、回生量切替スイッチが用意されているのですが、鈍感力の高い部員Kは変えても違いがよくわからず……。
ちなみに「ハロー! シトロエン」で目的地入力ができます。ルート表示をすると、ルート上に事故やらガソリンスタンドなどの距離を、視覚的に表示するバーが右側に出ます。



Apple CarPlayに対応。ですがワイヤレスCarPlayには対応していないようで、上手く動かすことができませんでした……。CarPlayそのものはとても快適です。



部員KはApple CarPlayよりAndroid Autoの方が好きでして。ということで、Android Autoもバッチリ動作します。Googleマップのデキの良さ、Androidのデキのよさを感じずにはいられません。





運転席まわりのUSBはすべてType-Cで使い勝手は良好。さらにワイヤレス充電にも対応しています。トレイは横向きで、手首を捻る動作が必要なのはちょっと残念。そして大型端末にケーブルを差し込むとトレイに収納できないようです。


シフトモードセレクターは小さなレバー式。Pモードはボタンで押すタイプになります。インジケーターの下には、エンジンの動力をバッテリー充電に使うBモードが用意されています。いずれも動作モードがどうなっているのかは、ちょっと見づらいような気がしました。このレバー式は、DSブランドでも使われていたように記憶しています。
運転手も乗る人も慣れが必要な後部座席

クルマの電源をオンにすると、EV動作でスタートします。このままではバッテリーをどんどん消費してしまい、ゆみちぃ部長が運転する頃には普通のガソリン車になってしまうおそれがあるため、スポーツモード+Bモードで、可能な限りバッテリーを維持しながら目的地へ向かいます。
さて、ゆみちぃ部長に後ろに乗ってもらい、いざ発進。スポーツモードなのですが、これが、記憶の中で過去イチの足の柔らかさ! 盛大にロールするどころか、アクセルを踏めばフロントリフト、ブレーキを踏めばノーズダイブ。ここまで柔らかいクルマはちょっと記憶にございません。ですが、それが運転していて、妙に心地よく。
驚いたのはスピードパンプのような場所でも、まったくといっていいほど振動がないのです! だから、運転していてほとんど疲れないのです。「これはコレでアリだよね!」と飛ばしていると、後ろから「あの……もう少しゆっくり走っていただけませんか?」と、蚊の鳴くような声で訴える部長。運転席側はとても心地よいのですが、後席はかなりポワンポワンしているようで、なんと車酔いをしてしまったのです。
ここで部員Sが後席に座り、ゆみちぃ部長が助手席に。すると「全然助手席の方がいい」と感嘆の声。いっぽう部員Sはというと、だんだん言葉数が少なく。なんと部員Sも車酔いしてしまったというではありませんか。
このように、前列と後列で評価は正反対。スポーツモードがよくないのか、と最も柔らかいコンフォートモードにセットしたところ、さらに柔らかさがアップ。運転している側は「おぉ、めっちゃ快適」と喜ぶのですが、部員Sの顔色は青くなりはじめ……。どうやら、普通のクルマの運転をすると、酔いやすくなるようで、いつも以上にアクセルをゆっくりと踏み、いつも以上に手前からブレーキを踏むといった「クルマの姿勢をフラットにする」ことを意識した走りが求められそう。

ここで、ゆみちぃ部長にチェンジして運転してもらいました。「メッチャ乗り心地がイイですね。あと、思いのほかパワフルですし、なにより小回りが利くなど取り回しがよいです。一言でいって、運転しやすいクルマだと思います」というように、まるで水を得た魚のように楽しまれているではありませんか。
その時、部員Kが後席に座ったのですが、「前列よりも振動が拾いやすく、自分が運転しているわけではないから、クルマのロール量や上下動が多いと酔いやすくなるのかな」と感じました。
大抵クルマのレビュー記事というのは、運転したフィールについての記事が多いので、後席のレポートというのはアリだなぁと思った次第です。

EVモードに限らず、静粛性の高さはなるほど! と思わせるものがあります。ロードノイズは、500~600万円のクルマの中では頭1つ抜けた静けさで、車内での会話はとても聞き取りやすいです。エンジンもそれほど唸り声をあげませんし、なにより発進がとてもスムーズ。これはバッテリー残量に関わらずの傾向で、バッテリーが残っていれば、さらに静粛な時間は増えていくという印象でした。

思いのほかパワフルなのも、C5X PHEVの魅力。パワー不足を感じるような場面はなく、ワインディングを気持ちよく走れます。高速道路も走りましたが、ADASはキチンと動作。ただ、ちょっと車間が広がり気味であったり、バイクなどを検知しづらいように思いました。もっとも、これらは「運転支援」でありますからね。運転する時は、ちゃんとハンドルを握りましょう。
後席で酔ってしまったし、リクライニング機構はないものの「オシャレで運転席側の乗り心地がよく、荷物がたくさん載せられて運転しやすいクルマ」というのが、ゆみちぃ部長の評価。部員Kは「これ、メッチャいいクルマだよなぁ」と、掘り出し物を見つけた気分。輸入車フラグシップが600万円台で手に入るって、魅力的ではありませんか?
長距離を走る方は、ぜひチェックされてはいかがでしょう。
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール

1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。運転免許取得してから上京後は一切運転していないが、最近は自動車にも興味を抱く。こだわりが強く興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載で、お気に入りの1台を探す予定。