BMWから、シルキー・シックス(直列6気筒)搭載モデルの傑作機が登場! その名もBMW「M2」です。大きさもパワーも足回りもすべてが“控え目にいって最高”の1台を、ドライブ大好きのタレント・新 唯(あらた・ゆい)さんと一緒にレポートします! 過去、様々なBMWを試乗しましたが、結論から先に申し上げると、イチバン買いなBMWです!
知っておきたい「M」の系譜
今回紹介するM2を末弟に「M3」「M4」「M5」「M8」「X5M」「X6M」をラインナップする「M ハイパフォーマンスモデル」。これらは、サーキットを走るマシンで一般道も走れる、ということをコンセプトに、BMW AG(BMW株式会社)の100%子会社である「BMW M Motorsport GmbH(BMW Mモータースポーツ有限会社=以降M社)」が手掛けています。

もともとはレース車両と設計をしていたのですが、1979年のM1を皮切りにハイパフォーマンスモデルの企画・設計・生産に着手。現在はMハイパフォーマンスモデルの開発、モータースポーツ用パーツの研究開発、特別注文モデルの生産、限定モデルの企画、顧客向けトレーニングスクールなどを行なっています。
なお、以前はM社の社内工場で作られていたのですが、今はBMWの工場でノーマルのBMWと同じラインを流れているそうです。
ボディー、シート、カーボンパーツ、計器、エンジン、タイヤなど、専用パーツが奢られるM ハイパフォーマンスモデル。開発段階の企画、デザイン、テストなどはM社独自で行ない、BMWのデザイナーとは別に、M社のデザイナーもいるとのこと。そして、薄い青色と濃い青色と赤色の斜めの3色カラーがクルマに与えられます。そんなM社は2022年に50年を迎えました。

ちなみに、通常のBMWとM ハイパフォーマンスモデルの間には、スポーティーカーとして「M パフォーマンスモデル」もラインナップ。さらに純正オプションとして「Mスポーツパッケージ」も用意されています。また、M ハイパフォーマンスモデルの中には、さらに「コンペティション」という、性能を究めたグレードも。レースからサーキット走行、そして街乗りまで、さまざまなシーンに向けてM社の製品はラインアップされています。
デザインはド迫力のキドニーグリルが特徴



今回BMW M2は2016年に初代が登場。今回が2代目となります。
ようするに日常的な取り回しにおいて、「大きくて駐車場の切り返しが大変」「車幅が広くて怖い」といった不満を覚えることはないでしょう。


BMWといえばキドニーグリル。近年は縦長になったり横長になったりと大忙しですが、今回は縁取りをなくしたインテグレーテッド形状というか、フレームレスデザインに。「BMWらしくて、これはこれで悪くないと思います」と、クルマはイケメン好きの唯さん的にも高評価。彼女は4シリーズのような顔立ちは苦手のようで、横長基調の方が好ましいようです。エンブレムはBMW M社の50周年記念仕様でカッコいい!


横から見ると正統派のクーペスタイル。サイドフェンダーの盛り上がりは実にレーシーで、スポーツカー大好きの唯さんは「これはカッコいい!」と、思わず頬がほころびます。タイヤ/ホイールは、フロント275/35R19、リア285/30R20と前後でインチが異なります。「カッコいいデザインですね。中から赤いキャリパーが見えるのもGoodです。


リアはかなりの戦闘スタイル。トランクスポイラーは控えめながらもイイ味を出しています。スポーツカーにはウイングが必須という唯さん。「このクルマには、このくらいがオシャレですね」との評価。





ラゲッジをみると、結構奥が深くて容量は390L。後席には6:4の分割可倒機構が備わっており、背もたれを倒せば容積が増えます。ポータブルバッテリーの充電に便利な12Vアクセサリーソケットがないのは、個人的にちょっと残念なところ。もちろん自動で開閉する機構もありません。
FRターボというスポーツカー好きのための構成


気になるパワートレインは「M3」および「M4」の3L 直6ターボエンジン「S58型」に小変更を加えたもので、最高出力460PS/6250rpm、最大トルク550N・m/2650-5870rpmを発生。これを8段ATと6段MTという、2種類の変速機を介してリアに伝えられます。「FRなんですか!」と目を輝かせる唯さん。
Mシリーズの上位であるM4にもFR設定はありますが、現在のBMWスポーツモデルでFRのみラインナップするクルマは、M2と唯さんお好みのオープンカー「Z4」のみです。ちなみに重量配分は50:50で、サスペンションは減衰可変に対応。このあたりの話はのちほど。それにしても、補強がすごすぎます! タワーバーを追加する必要はなさそうですね。
未来感溢れるカーブドディスプレイ採用のインテリア


さっそく運転席をチェックしてみましょう。乗降性は乗り降りしやすいといったところ。ちょっとサイドステップが幅広ですが、問題はありません。






室内は上質にしてレーシー。最近の3シリーズと似ており、12.3インチのメーターパネルと14.9インチのディスプレイを統合したカーブドディスプレイを採用します。「薄い青色と濃い青色と赤色の斜めラインがカッコいい」と言うように、内張りには装飾がなされたほか、シートベルトにも3本線がしっかりと。イルミネーションも控えめでイイ感じ!


ステアリングホイールは太めで、唯さんの手はちょっと余る様子。
車線監視などは用意されていることと、何より1000万円近いクルマなのに、500万円のBMWにも付いている装備がないのは、ちょっと残念に思ったり。ですが「そもそも、使いますかそれ?」と唯さん。「こういうクルマは自分で走らせてナンボじゃないですか?」だそうです。







走行モード設定は実に細かく、エンジンのレスポンス設定やダンパーだけでなく、なんとミッションの変速タイミングやスピードまで変更できるからあきれる次第。そのほか、DSC(横滑り防止装置)をオフにすると、10段階という細かい設定ができる「Mトラクションコントロール」が起動し、やろうと思えば簡単にテールスライドができる「ドリフト祭」が開催できるのだとか。素人がやるべきネタではありませんが、そういったオタク心をくすぐるあたり、実にわかっています!

スマホとの接続ですが、Apple CarPlayには対応しているもののAndroid AUTOには非対応。Androidは専用アプリを用いて連携します。USB端子はType-C形状。




後席は2座。よって5人乗りのクルマではありません。「足元はちょっと狭いかな」という唯さん。2ドアですので、当然乗り降りはしづらく、実用面という意味では同じ大きさでも4枚ドアのHonda「シビック TYPE R」の方が上回ります。たぶんお年寄りを乗せることは難しいのでは? それは2ドアクーペということから、わかりきっているのですが……。
街乗りからサーキットまでマルチに対応できるエンジン

少し走り出しただけで、誰もがこのクルマのすばらしさが体験できるでしょう。過去、色々なBMWのシルキー・シックスに触れてきましたが、このM2は、どのエンジンよりもシルキーなのだから。綿で頬を撫でるときの気持ちよさに似たフィールは、極上のひとこと。これだけで、このクルマを買う価値はあります。

さらに素晴らしいのは、4000rpmから上に踏んだ時の圧倒的なパワー! 「グワッ」と力強く背中を押されるフィールとともに、クルマは怒涛の加速をみせます。でありながら電子制御のおかげで、実にコントローラブル! 誰でも安心して踏めるクルマなのです。
以前試乗したM4とは別物のクルマで、あちらはBMWらしい重厚感で楽しませるのに対し、M2はカジュアルに楽しめるのが実に魅力。1.7tもあるボディーとは思えない軽やかさと、M4よりも短いホイールベースにより、峠道が実に楽しいのです! 日本にピッタリのBMW、それがM2といえそう。
乗り心地は実にフラットライド。「このクルマ、快適ですね」と唯さんはニッコリ。ドライバーだけでなく、パッセンジャーにも優しいクルマだったりします。さらにコンフォートモードでは排気音が抑えられて、静粛性が保たれているのもうれしいところ。とはいえ後席に座ると、相応の音が耳に入ってくるのですが……。

お楽しみはスポーツモードプラス。サスペンションが一気に引き締まるとともに、アクセルレスポンスも俊敏。さらにアクセルオフしてのダウンシフト時に「バンバン」とブリッピング音の演出が加わります。「運転が上手くなったような気がして好きなんですよ」と、ブリッピング音によろこぶ唯さん。高速道路では、水を得た魚の如く快適なクルージングが楽しめます。
電子制御のおかげで、怖さは一切なく、ドライバースキルを問わずに直6エンジンが堪能できるという、とんでもなく素晴らしいクルマ。それゆえ「イチバン買いなBMW」なのです。しかも、お好みで6速MTも用意されているというから、クルマ好きにはたまりません。どうです唯さん?
「確かに良いクルマだと思います。でも、ちょっと刺激が足りないかな」。そう、M2の最大の欠点は、とんでもなく速いにも関わらず、とんでもなく扱いやすいがゆえに、物足りなさを覚えてしまうというところ。だから「街乗りは普通なんですね」という印象を抱きがちなのです。

それゆえ、スポーツモードなどがあるのですが、それでも物足りなさを覚えてしまうのです。こうなるとトラクションコントロールをオフにして……となるわけですが、そういった演出の部分は、やはりスポーツカーに分があります。しかし、スポーツカーに乗ると渋滞時に「うるさいなぁ」とか「足が硬くてつらい」と思ったり。クルマ選びって、ホントに難しい! ともあれ、M2はいつでも戦えるオトナのクルマといえそうです。
近年のBMWは電気に注力をしているのは誰もが知るところでしょう。一方でこういう素晴らしいガソリンエンジン車を作れてしまうところが、彼らの強味です。最高の掘り出し物を見つけた、そんな気分になったクルマでした。
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モデル紹介――新 唯(あらた ゆい)

10月5日栃木県生まれ。ファッションモデルとしての活動のほか、マルチタレントを目指し演技を勉強中。また2022年はSUPER GTに参戦するModulo NAKAJIMA RACINGのレースクイーン「2022 Moduloスマイル」として、グリッドに華を添えた。