イタリアの栄光であるアルファ・ロメオは、今後電動化に舵をとっていくのだとか。本稿で紹介するSUV「トナーレ」は、その第1弾モデルにして同社初のPHEV(プラグインハイブリッド車)。
独特のデザインがアルファ・ロメオの証!
ボディーサイズは操作性と居住性が両立した大きさ
トナーレは、全長4530×全幅1835×全高1615mmというサイズのCセグメントSUV。HondaのZR-Vや日産のエクストレイルあたりが、ほぼ同寸の大きさとなります。つまり扱いやすさと居住性が両立した「良い大きさ」といえます。最近はすっかり横幅1800mm超えが当たり前になりました。
逆三角形の縦型グリルがアルファ・ロメオの証。その顔立ちは好き嫌いの分かれるところですが、ゆみちぃ部長は「カッコいい!」と両手を挙げての大絶賛。そして、「イタリアのクルマってデザインがイイですよね」と、アルファ・ロメオがイタリアのブランドであることもご存じだった模様。
一方ご存じでなかったのが、アルファ・ロメオのエンブレムの由来。左側の赤い部分は、創業地であるイタリア・ミラノ市の紋章である聖ゲオルギウス十字。右側は昔、ミラノ公国を統べていたヴィスコンティ家の家紋であるサラセン人を飲み込む大蛇(ビショーネ)です。「人を飲み込む?」と大きな目を見開くゆみちぃ部長。
オシャレなクルマは足下もオシャレ!
パワーユニットは最高出力180PSを発生する1.3L 直4ターボエンジンと、前輪に最高出力45PSのモーターの組合せ。さらに後輪に最高出力128PSのモーターが装備されています。
オシャレは足元から。スニーカー大好き部長はホイールにもコダワリます。「珍しい形ですね」と円を組み合わせたデザインに興味津々。この5つの輪を組み合わせた形状は「テレフォン・ダイヤル・デザイン」と呼ばれています。
今ほどホイールの強度もない時代、何とかしてブレーキを放熱したいということから、外周部に円を多数開けたのが始まりなのだとか。その形が昔の電話機のダイヤルに似ていたことから、テレフォン・ダイヤル・デザインと呼ばれるようになりました。ダイヤルの穴は、次第に大きくなり、現在の5つの輪を組み合わせた形となりました。
「歴史を感じさせますね」と、ゆみちぃ部長は感心しきり。盾形グリルのフロントマスクとテレフォン・ダイヤル・デザインのホイールは、街で数多あるSUVの中でも一目でアルファ・ロメオとわかる存在感を与えます。
ラゲッジをチェックする部長。開口面は広くて荷物の出し入れはラクラク。プライバシートレイはボード式で、取り外したボードを収納する場所はないようです。SUVとしては珍しく、トランクスルーが用意されていました。底板を開けると充電器の収納スペースがこんにちは。ポータブルバッテリーの充電に便利な、アクセサリーソケットも用意されています。
背もたれを倒せば、より広い荷室が姿を現わします。完全フルフラットではありませんが、段差がないので使いやすいといえるでしょう。
満充電時は72km走れるバッテリー性能
給油口は運転席側に配置。燃料タンク容量は42.5Lで、ガソリンはハイオクのみ。リッター180円のハイオクガソリンを空っぽから満タンにすると、燃料費は7650円。気になる公称燃料消費率(WLTCモード)は14.1km/Lだそうで、単純計算で599.25km走行できることになります。
プラグインハイブリッドですので、充電ポートがあります。
世界第4位の自動車グループ「ステランティス」に属するアルファ・ロメオ。グループ内にプジョーやシトロエン、フィアットにアバルト、クライスラーなどがある中、アルファ・ロメオはグループでいち早くEVブランドへ移行することを打ち出しています。
イギリスの自動車番組「TOP GEAR」で司会のジェレミー・クラークソンは、「アルファ・ロメオを持つことは車好きになるための通過儀礼だ」と公言し、番組内でアルファ・ロメオを贔屓にしていました。ゆみちぃ部長もその1人。部員たちの影響により同番組のファンになったようで、いつかはアルファ・ロメオに乗ってみたいと思っているとかいないとか。
USBはType-AとType-Cが用意される親切さ
乗車前にドアの開閉をチェックしましょう。前後ともに90度近くまで開くので、乗降性に問題ナシ。感心したのはサイドシルまでドアが覆っているところ。
後席は広々。レザーの質感もよく、また足元も十分な広さが得られていますし、エアコンのアウトレットもあります。USB端子はType-AとType-Cの2系統を用意。実に便利です。
運転席をチェックしましょう。全面レザーといったハイエンド空間ではありませんが、デザインの良さでカバーされているといったところ。ゆみちぃ部長も満足気です。
アルファ・ロメオのロゴマークが光るステアリングホイール。ステアリングリモコンを見ると、車線監視付きアダプティブクルーズコントロールがシッカリとありますし、マルチメディア系の操作もすべて操作できそうです。
ユニークなのはステアリングホイールにスタートボタンがあることと、パドルシフトがステアリングコラム側に取り付けられている点。ハンドル側につけることが多い中、アルファ・ロメオはココにこだわっている様子。
足元は広いのですが、左足フットレストの側面付近にでっぱりがあり、それが気になりました。
メーターパネルはフルLCDで、中央上部に速度計、下部にパワーメーターを配置。パワーメーター表示はエンジンとモーターを別々に表示するので、何が動いているかわかりやすく便利。その両脇には、左手側にクルーズコントロール状態、右側にインフォメーションを配置。これはステアリングスイッチと対応しているのでわかりやすくなっています。
さらに、アウディのバーチャルコクピットのようにメーターパネル内でナビのマップを表示させることも可能。ただ、アウディと異なるのは拡大縮小ができないところです。
センターコンソールは広々としていますが、ボタン類は少なく大変シンプル。e-Saveというボタンは、バッテリー残量を可能な限りキープするというもの。
エアコン関係は物理スイッチで操作可能。近年、ディスプレイ側で操作するクルマが増えてきただけに、こちらの方がラクだと個人的には感じています。
スマホはやや立てた状態で設置するタイプ。ワイヤレス充電にも対応しているようです。USBは後席同様、Type-AとType-Cの2つを用意します。
Apple CarPlayとAndroid AUTOの両方に対応。Apple CarPlayはワイヤレス接続に対応していますが、Android AUTOは有線のみとなっています。
カーオーディオはハーマンカードンが手掛けている模様。聴いてみると、かなり低域が薄い……。イコライザーで調整したかったのですが、そのメニュー画面を見つけることはできませんでした。
センターディスプレイは10.25インチのタッチパネルタイプ。バックモニターだけでなく鳥瞰ビューにも対応しているところに驚かされます。ハイブリッドの動作モード画面もあり、今、何が動いているか、回生しているかといったものもチェック可能です。
それでは走らせてみましょう。
いい意味でアルファ・ロメオらしくない
クセのないキビキビとした走り
ステアリングコラムから生えるパドルシフトには不満げのゆみちぃ部長ですが、文句はコレだけ。「すごく静か!」とゆみちぃ部長は感嘆の声をあげます。「乗り心地もいいですね」とも。
強いて運転中に気になったのはブレーキのフィールで、初期制動よりも速度調整に振った、踏力通りに止まる感覚に「なんか、ねっとりした感じですね。慣れれば平気ですが」と最初は戸惑っていました。
トナーレは、細部まで行き届いたイマドキのクルマなのですが、良くも悪くもアルファ・ロメオらしさが少し希薄なのです。アルファ・ロメオは「どこかクセがあるんだけれど憎めない」クルマであるハズなのに……。
それは走りの面にも言えることで、同社のSUV「ステルヴィオ」は全体的にロールし、柔らかさを覚える乗り味。スポーツセダンである「ジュリア・クアドロフォリオ」でも同じ傾向で、それが首筋を真綿でくすぐられるかのような心地よさと、運転の楽しさを与えていました。
トナーレはというと、足は少し硬めでスポーティーさを感じさせるもの。キビキビとした走りは、ワインディングなどで「さすがアルファ・ロメオ。SUVでもハンドリングマシンを作ってくるなんて偉いぞ」と思ったりもします。それはそれで結構なのですが、ほかの現行アルファ・ロメオとはかなり傾向が違うと感じました。
そこで筆者の記憶を呼び起こすと、ジュリエッタがロール少なめのキビキビ系だったので、「トナーレはジュリエッタ寄りのクルマ」と思えば、なるほどアルファ・ロメオなのかなと納得できました。
スポーツモードも試しました。足はいっそう引き締まり、エンジンがメインの動きに。気分が高まる排気音ではないものの、モーターと上手く連携しながら、俊足を見せつけ、ドライバーを魅了します。
クルーズコントロールも試したところ、バッチリ動作しました。
燃費だって高速6:街乗り4の割合で、13.8km/hをたたき出して優秀です。
「初めてのPHEVで、こんなに完成度が高いの?」というのが正直な感想。回生が強すぎてギクシャクした走りになったりせず、滑らかな走りと、ちょっと硬めだけど上質な乗り心地、豊かな装備面と質の高いインテリアに、多くの人は不満は出ないハズ。よくぞここまで作り上げた! と感服しました。十分オススメできるクルマに仕上がっていました。
電動化でアルファ・ロメオがどのように変化していくのか、見守っていきたいと思います
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寺坂ユミ(てらさかゆみ)プロフィール
1月29日愛知県名古屋市生まれ。趣味は映画鑑賞。志倉千代丸と桃井はるこがプロデュースする学院型ガールズ・ボーカルユニット「純情のアフィリア」に10期生として加入。また「カードファイト!! ヴァンガード」の大規模大会におけるアシスタント「VANGIRLS」としても活躍する。こだわりが強く、興味を抱くとのめりこむタイプであることから、当連載でお気に入りの1台を探す予定。