【木村ヒデノリのTech Magic #051】 筆者と同年代(昭和生まれ)の方はかつて“骨伝導”という技術に興味を持ったことがあるのではないだろうか。自分も当時は新しさに惹かれて試してみたが、音質がイマイチで使わなくなってしまった。
こうした経験もあり、最近まで「骨伝導イヤホン」というものへの興味は失われていたが、ひょんなことから最新の骨伝導イヤホンを使ってみて、その進化に驚いた。低音こそやや物足りないものの、はっきりと聞こえる上にマイクの性能も良い。製品にもよるだろうが、装着していても疲れづらいので、毎日リモートで働いて何かしらを「ながら聴き」している人にはもってこいだ。

●圧倒的に疲れず、バッテリーの持ちも申し分なし
 筆者は通常のリスニングにはアップルの「AirPods Pro」を使っていた。ノイズキャンセリングの優秀さや音質の良さが気に入っていたが、寝そべりながら使う時に外れやすかったり、バッテリーがあまりもたなかったり、という部分は不満だった。対して今回紹介する「AEROPEX(エアロペクス)」は「装着感も快適で、充電も長時間持つ素晴らしい製品」だった。
 いや、もちろんAirPods Proも素晴らしい。ノイズキャンセルの優秀さやアップル製品との親和性、スペーシャルオーディオなどの先進的な機能は他に類を見ない。しかし、こと「ながら聴きをリモートでする」という用途においてはAEROPEXに軍配が上がった。
 26gという軽さは付けていても全く苦にならないし、IP67相当の防水性能もあるためシャワーの際も付けたまま入れる。AirPods Proでは充電を忘れて使いたいときに使えない、というシチュエーションも多々あったので、それが無いだけでもエアロペクスはかなり使い勝手がいい。
●マルチペアリングできるなどの機能も実用レベル
 操作性に関してもAEROPEXは快適だ。
マルチペアリングで二つの機器に同時接続できるため、2台スマホがある場合やタブレットとスマホで使い分けたい場合も切り替えがスムーズだ。何度も引き合いに出して恐縮だが、AirPods Proもアップル製品間で自動切り替えができる仕様になっているが、意図した機器に繋がらないことが多かった。対してAEROPEXは2台しかペアリングできないものの、常に再生したい機器の音声を再生してくれて快適そのものだった。
●接地面が小さいのにはっきり聞こえる音質
 AEROPEXは他社製品に比べても接地面が小さい方だが、音質に関してはかなりはっきり聞こえる印象だ。音楽を再生するとやはり低音は物足りないものの、ポッドキャストやYouTube動画など、人がしゃべる帯域の中低音はかなり良い。そもそもの音源にも依存してしまうが、人が喋るものを聞くコンテンツにおいては骨伝導とは思えない音声を提供してくれるだろう。この音質については筆者の固定概念を覆すもので、かなり衝撃的だった。
●デメリットは音量の足りなさと、専用充電コネクタか
 デメリットとして挙げられるのは、通常のイヤホンより音漏れと音量の閾値が低いことだろうか。音量を上げればある程度周りがうるさいところでも聞こえるが、「耳があいている=周りの音がダイレクトに入ってくる」ということがかえってマイナスとなり、電車内など周りがうるさい環境では音量を上げざるを得ない。骨伝導と聞くと音漏れしなそうに感じるが、筐体自体が震えるので当然振動が大きくなれば空気を伝わり周りに聞こえてしまう。
 iPhone12 Proで使ってみたところ、最大音量では確実に音漏れしてしまっており、騒音の多い環境での使用は向いていないようだった。静かな環境で使いたい場合は、付属の耳栓を使うなど、自分に聞こえている騒音を抑える対策をする必要があるだろう。
音漏れしない限界値はiPhoneの音量だと50%まで。逆にいうと50%までの音量でクリアに聞こえる環境であれば音漏れなく快適に使えると言って良いだろう。
 もう一つの気になる点は専用の充電コネクタだ。防水防塵性能を担保するうえでは仕方ないのかもしれないが、独自コネクタを使っていることでケーブル紛失時の不便さを被る可能性がある。ただ、こうした点も考えてか、AEROPEXには元々2本の充電ケーブルが付属している。そのため、ベッドサイドと職場のデスクなど2箇所で利用する際も追加購入の必要がなく利用できる。またコネクタもいわゆるMagSafe的な磁石方式となっているので、接続方向を間違うこともなく快適だ。このようなユーザビリティを考えた仕様には好感が持てる。
●こんなに快適ならもっと早く買っておきたかった
 使うシチュエーションにやや難があるものの、リモートワークでながら聴きする、通話する、Clubhouseで使う、といったシチュエーションではこれ以上快適なイヤホンはないのではないだろうか。通話用途でマイクに不安がある方は、同社から「OPENCOMM(オープンコム)」というオンライン会議向け製品が出ているのでそちらを選択すると良い。DSPの処理でかなりクリアに音声を伝えてくれるそうだ。
 使ってみた感想を率直に述べると「もっと早く買っておけばよかった」ということに尽きる。
「骨伝導ってそこまででもないんでしょ?」と思っている方はAFTERSHOKZ社の製品で1万円程度の製品もあるので、ひとまずそれを試してみてはどうだろうか。筆者は骨伝導の初号機としてAEROPEXを購入したがとても満足している。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で1歳半の娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
https://www.youtube.com/rekimuras
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