エディオンの久保允誉会長兼社長は、「これまで小売業は坪あたりの売上高など、いかにコスト効率を高めるかを追い求めてきたが、この店の考え方はむしろ『効率よりも非効率』。“目的買い”ではなく、お客様がこの店自体に魅力を感じて足を運びたくなるような、心地よく過ごせる空間づくりに力を入れた」と、店舗コンセプトを説明する。
1階から3階までのフロアに家電と書籍・雑誌の売り場が混在しており、ファッション誌の近くに美容家電、暮らしやインテリアの近くに生活家電といったように、本を吸引力にした家電の提案を狙った商品配置を行っている。体験型の商品展示を充実させたほか、カメラ、美容、調理といった専門性の高い商品カテゴリには「スペシャリスト」と呼ぶ特に深い商品知識をもつ販売員を配置した。商品が消費者の自宅に設置された状態をイメージしやすくするため、商品自体には値札やPOP類を貼らず、価格や機能は商品横に立てたスタンドなどに掲示している。
特売商品ではなく、店内で時間を過ごすこと自体が目的となる店舗を目指すとの考えから、従来、主力の集客ツールとなっていたチラシやダイレクトメールは、エディオン蔦屋家電では発行しない。また、家電量販店では販売現場に一定の裁量を与え、店頭での商談内容によっては表示価格からの値引きを行うのが一般的だが、エディオン蔦屋家電はすべての顧客に値引きなしの統一価格で販売する「正札販売」の方針をとるという。
久保会長兼社長は「家電市場でEC販売比率が高まるなか、足を運んでいただける店舗とはどのような店かを考えた」と話し、今回の新形態には、リアル店舗の今後の役割を提示する意味が込められている様子。また、エディオン蔦屋家電初出店の地として、東京や大阪ではなく広島を選んだ理由については「家電販売でエディオンが大きなシェアを獲得できている広島だから、このような新しい挑戦もできた」と説明した。(BCN・日高 彰)
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