【外食業界のリアル・20】外食業界ではLINE公式アカウントやモバイルオーダーの導入が進んでいるが、それに伴いクーポンを活用する動きが盛んになっている。飲食店で何かしらのクーポンを利用したことがある人も多いと思うが、クーポンの形式や連携に関する仕様は利用するだけでは見えない部分も多い。
●モバイルオーダーとPOSの連携とは
大前提としてモバイルオーダーで注文した商品を店舗で会計するためには、モバイルオーダーとPOSを連携する必要がある。つまり、モバイルオーダーで表示をしている商品とPOSで登録してある商品を一致させなくてはならない。まずはPOSをマスターとしてカテゴリーや商品、オプションを登録し、その後にモバイルオーダーでPOSから情報を取得して同期させる流れとなる。
しかし、POSではあくまでPOSで必要な情報しか保持していないため、モバイルオーダーで必要な情報を追加登録しなくてはならない。例えば、商品の写真や紹介文などはモバイルオーダーならではのものを登録していくのである。またモバイルオーダーで商品と一緒に表示をする普通もしくは大盛などのオプションも個別にひも付ける必要がある。
商品名はエンドユーザー側に表示するものと管理側では使い分けることが多い。例えば、エンドユーザーには「店長こだわりのポテトサラダ(大盛)」として表示していても店舗ではハンディ(スタッフが注文を受ける際に使用する専用の携帯のような端末)で商品を選択する必要があるため、「ポテトサラダ大」のように管理しやすく短い名前にしたりする。そのため商品ごとに両方の名称が登録されていることが多い。
クーポンの利用についてはモバイルオーダーとPOSを横断して使用することになるのだが、それらの仕様は少し複雑なものとなる。
●クーポンの抑えるべき仕様
まずクーポンには大きく、「見せて使うタイプ」「もぎって使うタイプ」「モバイルオーダーのカートで使用するタイプ」「予約時に使用するタイプ」に分けられる。
見せて使うタイプは、見せるだけで利用できることから使用回数が決まっておらず何度でも使える形が多く、回数を制限する場合、もぎって使うタイプとする傾向がある。もぎって使うタイプでは、フリックやタップすることで利用状態になるが、スタッフがボタンをタップしたり、エンドユーザーが利用状態となった画面を見せたりすることで使用する。電子マネーでも同様の使い方をする電子マネーもあるので、その流れ自体は一般的にもなっている。
だが、クーポンの場合はもぎっただけ自動的にPOS側に特典が反映されるわけではなく、スタッフ側で値引き処理などのアクションが必要となることが多い。またPOSで手打ちによる処理をさせてしまうとミスが起きる可能性があるので、バーコードを表示させてPOSで読み取ることで反映させるようにすることも少なくない。
POS側ではクーポンの使用数や条件までをコントロールできるわけではないため、あくまでクーポンを表示するモバイルオーダー側でコントロールしなくてはならない。またスタッフに見せたりバーコードを表示したりする際、画面をキャプチャーしたもので不正利用されることもあるため、背景の絵を動かすなどの機能もその一例ではある。
モバイルオーダーのカートで使用するタイプは、POSや基幹システムなどとの連携も視野に入れなくてはいけないことが多く、仕様は複雑になる。例えば、“から揚げプレゼント”といった特典をどのように処理をするのかは法人や店舗の方針によって変わってくる。通常の“から揚げ”と同じ商品として注文を受けて割引をして0円にすることもあれば、値段が異なる別の商品として注文を受けることもある。商品の在庫管理をどのようにしているのか、プレゼントをどのように処理するのか、などによって方針が変わってくるのである。
また、全国展開する店舗の場合は同じ商品であってもエリアによって仕入れ先が異なるため、それぞれを別の商品として管理していることもある。そのため、モバイルオーダーでは同じ商品のように見えても店舗によって異なる商品として扱っているということも起こり得る。
予約時に使用するタイプのクーポンは、あまり活用されていないように思われる。予約時に使えるクーポンを制御するシステムとモバイルオーダー/POSを制御するシステムと分断されていることもあるが、使用条件のコントロールが難しいことも一因としてある。例えば10人以上グループで使える割引クーポンがあったとして、予約した人数と実際に店舗に訪れた人数が異なることも多く、会計時でないと判定できないのである。
POS側で実行した処理をモバイルオーダー側に返してもらうタイミングもさまざまである。リアルタイムで反映されることもあれば、一定時間後にバッチで処理されることもある。そのあたりは各POSメーカーおよび項目ごとに異なるため、どのように制御しなくてはいけないのかは個別に考慮しなくてはならない。
●クーポンの使われ方と今後
近年では外食業界ではDX化が進んだこともあって、CRMの一環としてクーポンが使われることが多い。再来訪を促すためのフックとしてドリンク一杯無料クーポンを配布したり、新規登録の特典として会計金額から値引きできるクーポンを配布したり、とさまざまな形で利用されている。
また、飲食店の利用後アンケートに回答してくれた人にクーポンを配布することも一般的になっている。属性情報とひも付いた貴重なアンケートデータを蓄積するとともに再来訪を促すことができ一石二鳥となるため、活用する店舗はどんどん増えている。
だが、クーポンに頼り過ぎることは注意が必要だ。何かしらの特典を設けることでしか集客ができない店舗になってしまうと、利益を圧迫することはもちろんのこと店舗の魅力自体が失われてしまう危険性もある。本来、飲食店は食事や接客などの体験によって満足度を上げることで再来訪を促すべきであるが、クーポンに依存するとその質を高めようとする動きが低迷してしまう。クーポンが当たり前になりつつある現状だが、早くも原点回帰が求められているのではないだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)
【注目の記事】
「スタバなう」とは何? 今、再び盛り上がっている理由
情報の一元管理とは? ローカライズもカギ
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モバイルオーダーの現状とこれから、飲食店にはなくてならない存在に
お店にとって大切なのは「接客」それとも「料理」? 取捨選択も必要
今回は飲食店のクーポン事情とその裏側について語りたいと思う。
●モバイルオーダーとPOSの連携とは
大前提としてモバイルオーダーで注文した商品を店舗で会計するためには、モバイルオーダーとPOSを連携する必要がある。つまり、モバイルオーダーで表示をしている商品とPOSで登録してある商品を一致させなくてはならない。まずはPOSをマスターとしてカテゴリーや商品、オプションを登録し、その後にモバイルオーダーでPOSから情報を取得して同期させる流れとなる。
しかし、POSではあくまでPOSで必要な情報しか保持していないため、モバイルオーダーで必要な情報を追加登録しなくてはならない。例えば、商品の写真や紹介文などはモバイルオーダーならではのものを登録していくのである。またモバイルオーダーで商品と一緒に表示をする普通もしくは大盛などのオプションも個別にひも付ける必要がある。
商品名はエンドユーザー側に表示するものと管理側では使い分けることが多い。例えば、エンドユーザーには「店長こだわりのポテトサラダ(大盛)」として表示していても店舗ではハンディ(スタッフが注文を受ける際に使用する専用の携帯のような端末)で商品を選択する必要があるため、「ポテトサラダ大」のように管理しやすく短い名前にしたりする。そのため商品ごとに両方の名称が登録されていることが多い。
クーポンの利用についてはモバイルオーダーとPOSを横断して使用することになるのだが、それらの仕様は少し複雑なものとなる。
●クーポンの抑えるべき仕様
まずクーポンには大きく、「見せて使うタイプ」「もぎって使うタイプ」「モバイルオーダーのカートで使用するタイプ」「予約時に使用するタイプ」に分けられる。
なお、もぎって使うタイプとはスマートフォン画面でフリックやタップすることで、使用済みと切り替わるものを指す。
見せて使うタイプは、見せるだけで利用できることから使用回数が決まっておらず何度でも使える形が多く、回数を制限する場合、もぎって使うタイプとする傾向がある。もぎって使うタイプでは、フリックやタップすることで利用状態になるが、スタッフがボタンをタップしたり、エンドユーザーが利用状態となった画面を見せたりすることで使用する。電子マネーでも同様の使い方をする電子マネーもあるので、その流れ自体は一般的にもなっている。
だが、クーポンの場合はもぎっただけ自動的にPOS側に特典が反映されるわけではなく、スタッフ側で値引き処理などのアクションが必要となることが多い。またPOSで手打ちによる処理をさせてしまうとミスが起きる可能性があるので、バーコードを表示させてPOSで読み取ることで反映させるようにすることも少なくない。
POS側ではクーポンの使用数や条件までをコントロールできるわけではないため、あくまでクーポンを表示するモバイルオーダー側でコントロールしなくてはならない。またスタッフに見せたりバーコードを表示したりする際、画面をキャプチャーしたもので不正利用されることもあるため、背景の絵を動かすなどの機能もその一例ではある。
モバイルオーダーのカートで使用するタイプは、POSや基幹システムなどとの連携も視野に入れなくてはいけないことが多く、仕様は複雑になる。例えば、“から揚げプレゼント”といった特典をどのように処理をするのかは法人や店舗の方針によって変わってくる。通常の“から揚げ”と同じ商品として注文を受けて割引をして0円にすることもあれば、値段が異なる別の商品として注文を受けることもある。商品の在庫管理をどのようにしているのか、プレゼントをどのように処理するのか、などによって方針が変わってくるのである。
また、全国展開する店舗の場合は同じ商品であってもエリアによって仕入れ先が異なるため、それぞれを別の商品として管理していることもある。そのため、モバイルオーダーでは同じ商品のように見えても店舗によって異なる商品として扱っているということも起こり得る。
予約時に使用するタイプのクーポンは、あまり活用されていないように思われる。予約時に使えるクーポンを制御するシステムとモバイルオーダー/POSを制御するシステムと分断されていることもあるが、使用条件のコントロールが難しいことも一因としてある。例えば10人以上グループで使える割引クーポンがあったとして、予約した人数と実際に店舗に訪れた人数が異なることも多く、会計時でないと判定できないのである。
POS側で実行した処理をモバイルオーダー側に返してもらうタイミングもさまざまである。リアルタイムで反映されることもあれば、一定時間後にバッチで処理されることもある。そのあたりは各POSメーカーおよび項目ごとに異なるため、どのように制御しなくてはいけないのかは個別に考慮しなくてはならない。
●クーポンの使われ方と今後
近年では外食業界ではDX化が進んだこともあって、CRMの一環としてクーポンが使われることが多い。再来訪を促すためのフックとしてドリンク一杯無料クーポンを配布したり、新規登録の特典として会計金額から値引きできるクーポンを配布したり、とさまざまな形で利用されている。
また、飲食店の利用後アンケートに回答してくれた人にクーポンを配布することも一般的になっている。属性情報とひも付いた貴重なアンケートデータを蓄積するとともに再来訪を促すことができ一石二鳥となるため、活用する店舗はどんどん増えている。
だが、クーポンに頼り過ぎることは注意が必要だ。何かしらの特典を設けることでしか集客ができない店舗になってしまうと、利益を圧迫することはもちろんのこと店舗の魅力自体が失われてしまう危険性もある。本来、飲食店は食事や接客などの体験によって満足度を上げることで再来訪を促すべきであるが、クーポンに依存するとその質を高めようとする動きが低迷してしまう。クーポンが当たり前になりつつある現状だが、早くも原点回帰が求められているのではないだろうか。(イデア・レコード・左川裕規)
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