【家電コンサルのお得な話・255】国会に提出されていた年金制度関連の法案が、6月13日に成立した。その中には遺族厚生年金の大きな見直しも含まれている。
なかでも注目されるのは、2028年4月から「子ども」のいない60歳未満の配偶者への遺族厚生年金を原則5年で打ち切るという改定であり、これは結婚直後の若い夫婦や「年の差婚」の夫婦、あるいは60歳になる前に早めに子育てを終えた夫婦にとって明らかに制度の「改悪」である。

●将来設計の見直しを迫る制度改定が決定
 従来の制度では、妻が30歳以上であれば遺族厚生年金は終身支給されるのが原則であった。それが今回の見直しにより、性別を問わず、「子ども(子の年齢が18歳となる年度末まで/障害年金の障害等級1級または2級の状態にある場合は20歳未満)」のいない60歳未満(28年4月時点では40歳未満、以降段階的に引き上げ)の人は、遺族厚生年金の支給期間が原則5年に限定されることになる。
 確かに、現行制度の男女間の不平等を是正するという建前は理解できる。しかし、その中身は支給期間を一律に制限することによって、国民の結婚に対する安心感を削ぎ、生活再建の責任を過度に押しつける内容となっている。
 死別という極限の状況に置かれた人々に対して、「60歳未満なら5年で立ち直れ」というのは、あまりに現実を無視した制度設計である。政府はこれに対し、支給額の引き上げや「有期給付加算」を用意し、5年間は現行より手厚い支援になると説明している。さらに、障害のある人や月収が10万円以下の人には「継続給付」が設けられ、救済策はあると強調する。
 しかし、それらは一部の条件に当てはまる人に限られ、これまで遺族厚生年金の終身給付を前提に万が一の際の生活設計を考えてきた世帯にとって、制度の信頼性が揺らぐことは避けられない。
 そもそも遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)とは、配偶者の死によって収入を絶たれた遺族の生活を、国が最低限支えるための仕組みである。そのうち、遺族厚生年金の支給に「期限」が設けられることは、残された人の人生そのものに対して、国が一定の距離を置くという宣言に等しい。
 残された者がどう立ち直るかは、個々人の努力だけで決められるものではなく、社会全体の支えが不可欠である。
政府には「60歳未満の女性にもっと働け」とうながす前に、働かずに生活できる自由をも認めることこそ多様性だという視点が必要だ。生活のために性別問わず否応なく働かされる社会に、多様性など存在しない。今こそ、国が本当に守るべきものは何かを問い直すときである。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)
■Profile
堀田泰希
1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。
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