1月28日に、ステージ4の膵臓(すいぞう)がんで亡くなった経済アナリストの森永卓郎さん。生前、ファッション誌「street jack」(休刊)の企画で、若かりし頃を語っていただいていた。
■やりたいことがわからない、そんな時、運命の出会い
──前回は東京大学に在学中の頃のお話を中心にお聞きしました。今回は就職後からのお話をお聞きしたいと思います。20代は、日本経済研究センター、経済企画庁総合計画局などへ出向をされていたのですね。
「これが運命としか思えないんですけど、"何をやりたいか?"就職してもわからなかったんです。でも日経センター時代に経済予測をやったら、すごく面白くて。だから、好きこそものの…じゃないけど、そうじゃなきゃ続かないってことですかね」
──経済予測の何がピンときたんでしょう。
「新たな発見があるんですよ。当時から格差に興味があって調べてみたら、高度成長期(ʼ55 ~ʼ73 年)には、すべての格差が縮小していた。男女間、地域間、職業間…全部、平等。これが低成長に入るとすべて開いてく。このことを発見して、世の中ってこう動いていくのかと知った時に、経済を予測するのは面白い仕事だな~と思ったんです」
──結婚をされたのは何歳の時ですか?
「26歳です。今と物価がそれほど変わらない時代に年収300万円なのに所沢に2580万円の一戸建てを買って。
──経歴だけ見ると順風満帆に思えますが、20代はサバイバルされていたんですね。
「とにかく、ローンを引かれると手取り6万円という貧乏生活でしたから、20代はほぼ毎日、午前3時まで働いていましたね」
──では、当時はコレクションの方は…。
「やってましたよ。コーラの空き缶とか、お金のかからないもの。ほかにもトラックドライバーの友達の車に便乗して、地方の古いおもちゃ屋さんの倉庫を巡っては、それを高くで売ったりして。そういう週末の楽しみがあったから、日々の忙しさとのバランスをとってたのかも知れません」
──今の20代もタフな時代を過ごしていますが、何かメッセージはありますか?
「生活の基礎消費を下げることです。私もこの部屋(※平日に寝泊まりする仕事部屋)での食費は週に千円ですし。近所の八百屋とかスーパーで閉店間際に安い食材を買ってきて、どう調理するかは後で考える。で、後は私のコレクションのように何にお金を使うか。自分は何が楽しくて生きてるのかが大切なんです。使うところに使っても、基礎消費さえ少なければ安心ですから!」