本当に高齢者向けだけでいいの? 若者にも楽しいコンビニの方が、皆さんにとって魅力的じゃない?

もちろん、現状のコンビニのメイン客層は40~50代となっていて、高齢化社会に、寄り添った施策が人口動態とともに多くなっているのは、昨年末に発刊した、渡辺広明氏の最新作『コンビニが消えたなら』で述べてきた。でも…。


自身らも50代コンビである、著者:渡辺広明氏&編集担当者は、本書では書ききれなかった新たな命題、「以前は、何があるんだろうって、もっとドキドキワクワクしてコンビニ行ってなかった?」「今の若者感性の品揃えにも注力すれば、さらに魅力的になっていくのでは?」という仮説に気づいてしまったのです。

そこで、若者研究マーケティングアナリストの第一人者、原田曜平先生に対談をオファー。原田先生が率いる20代のインターン研究員5人も参加して、様々なアイデアを練ってみました。

昨年末に発刊した『コンビニが日本から消えたなら』を自ら否定するわけではありません。ただただ素直に、その先がどうしても見たくなってしまったのです。デジタル版でのスピンオフ企画で、この欲求を補完してみました。

では、連載第3回目をどうぞ!!

■女子が求めているのは、お花に海外スイーツで、カラフルなイメージ。そのためには各店独自の店仕入れが必要に

佐藤:海外のスーパーみたいにインスタ映えするラインナップを心がけていけばいいんじゃないかなと。

原田:海外というより、海外の大都市圏の一部のスーパーだよね。

佐藤:あとは、イートインスペースがなかったり狭かったりするので、それを拡張して、充電もできるようにしてほしいですね。あと、お手洗いが男女共有とか、時々汚い時があって、きれいっていうのは女子的に必須。化粧直しのスペースやフィッテイングボードも欲しいです。

コンビニでストッキングを買っているのに、コンビニで履き替えるの難しいってどういうこと? と思います。

渡辺:台があるとストッキングの売り上げが1.7倍になるというデータがあります。

佐藤:韓国では、ドライフラワーとかお花が店頭で売ってるんですよ。女の子たちが買って、写真撮ってインスタとかに上げているので、コンビニでもあればいいなって思うのと、商品パッケージが地味で気分が下がるので、カラフルなものを揃えてほしい。

渡辺:コンビニって地味なんだ~。白を基調としたプライベートブランドが増えているからかも。

佐藤:イメージだと、Amazonが買収したホールフーズです。お花があって、トートバッグがあって。カラフルで。気分が上がる!!

原田:ホールフーズは果物の展示が有名なイメージだよね。

渡辺:トートバッグはできてくるかもしれない。7月にレジ袋が有料化になるから。

それに合わせて各社さん知恵を絞ってくる可能性がある。ただし、新型コロナの騒動で中国での商品生産が混乱しているので、ずれてくるかもですが…。

佐藤:作るなら、カラフルで種類豊富にしてほしいです。

渡辺:あとは、花ね。でも難しいだろうな。本社でコントロールする大量仕入・大量販売には向いていないカテゴリーだからね。どうしたら…。店仕入れ(チェーン本部へ申請して、OKをもらえれば行える)にオーナーは目を向けていくべきかもしれませんね。競争の厳しい時代、各店舗の個性を出していかないと生き残れないじゃないですか。オーナー自ら店仕入れをしなくてはという点で、手間暇はかかりますが。

原田:ドライフラワーなんかもインスタ映えの定番アイテムになっているから、それでも良いかもしれないね。

宮本:暖色のライトも取り入れてほしい。

今のコンビニって白いライトに白い壁、床で、ちょっと冷たく感じてしまう。

一同:それ、めっちゃわかる。

宮本:暖色にすれば、もう少し温かい空間に見えるから。そのほうが若者にも好まれるんじゃないかなって思います。次に、通路を広くする。狭く感じる店舗が多くて。例えばスイーツを選ぶ時、めっちゃ迷っているのに隣に人が来て、邪魔になっちゃているんじゃないかなって感じてしまいます。そして本格派商品を。ウチカフェみたいにプライベートブランドのスイーツが人気なので、それをもっと発展させて、もう少し値が張っても300円~500円になっても磨きがかかり、しかもそこでしか買えないという限定感があれば魅力的だと思います。最後に、通路の進み方が一方通行になっていて、時間のない社会人向けに作られたコンビニが私はすごく苦手で。並びつつ買わないといけなくって、おにぎりの前に来たら、狙ってたおかかを一瞬で取らなければならないとか、ジャスミンティを並んでる人の隙間から取るみたいなのが辛い。急かされた気持ちになってしまい、も~、選べないよって、入る勇気がなくなってしまう。

内山:海外のスイーツも置いてほしいなって思います。この右の画像が台湾のコーティングジュース(韓国ではポッピングボバ)っていうスイーツなんですけど、海外旅行はなかなか行けない。でもこういう商品はカルディには売っていて…。コンビニには海外の商品があまり無いのが残念です。

原田:これ、パッケージからどんな商品化なのか、万人に通じるかな? このままでいいの?

内山:ポップで説明を入れてくれたら、分かりやすくていいなって思います。

原田:要はパッケージはママで日本語で説明が加えられていればいい。海外モノのセレクトショップ的要素が欲しいと。アジアで日本語のネーミングのドリンクなんかが売られていたりするけど、要はそれ、ってことね。韓流文化で育ってきた今のジェネレーションZの皆さんにはハングルにも抵抗感がない人(特に女子)が多く、逆にそれがブランド価値にもつながる、ということなんだね。日本語がアジアで多様化されている時代を生きてきたおじさんとしてはなんだか寂しいけれど。

渡辺:マスを作れるのがコンビニの強みなんです。流行りを仕掛けるのがコンビニではないというのが私の見解です。

例えば、ナチュラルローソンで火を点けたものを青いローソンで展開していきメジャーでマスな商品へとしていく。この考えをまずは持たなくてはいけないと思っています。一方、東京のおしゃれなエリアのみで展開するという考えはあると思います。先ほども述べたけど、各店がエリア客層に目を向けた商品を仕入れ、店の個性を出していく、店仕入れのシステムが浸透していくと、若者のみなさんが求めている理想のコンビニが生まれてくる可能性はありますよね。

■一方、男子向け商品の開発も急務

伊藤:僕にとって、コンビニの一番の魅力は、購入の手軽さと、一人分のものが買えるという点です。それほど長居はしないので、店舗とか空間とか、接客とかは自分は気にしません。なので、商品だけに絞って考えてみました。男性を集めるなら、価格が安くて量が多いものを充実させてほしい。

原田:コンビニってあまり男性向けじゃないという印象はある?

伊藤:デザートとか自分たちは買わないので。

原田:コンビニが女子化しちゃったのかもね。

渡辺:昔は、コンビニは男性向けの店だったんですよ。

伊藤:飲み物とアイスしか買わないんです。

渡辺:女子が買いたいものは(まだ学生のみなさんが満足いかないのかもしれないけど)増えていってるんです。でも、男が買いたいものは少なくなっていて…。昔は弁当でも、どこのチキンカツがデカいとか、以前はビッグティラミスというスイーツが流行ってたんですよ。でも駆逐されちゃってね。男性の購買頻度が落ちていますからね。以前はコンビニ訪問客の男女比は7:3だったんですよ。そこへ女子目線をというテコ入れでスイーツなんかも誕生していき、コンビニスイーツなるジャンルも確固とした地位を築いてきたと思います。でも、日本の人口の男女比はほぼ半々ですよね。今は男子向けの商品が少ない、少しいびつな商品構成になってきていると感じます。だから、今は男子向けの商品開発にバイヤーは目を向けるべきだと私は感じているのです。

原田:あ、でも、男性自体の像も大分変わってきてますよ、渡辺先生の時代より(笑)。ジェネレーションZの男子はとにかく細い。食欲も女子の方が強いケースもたくさんある。一方、美意識も高くなってきている。昔ながらの「男性像」というより「中性的な新しい男性像」を描いた方が、男女ともに売れる商品ができるかもしれません。確かに今は女性に寄り過ぎているのかもしれないけど。

■すべてのコンビニがナチュラルローソンのようなイメージに変化していくべきなのか?

伊藤:女性を集めたいのなら、食べきりサイズのプチ系のものをより充実させる。そして、素材を充実させること。トレンドとして、無印のカレーで糖質10g以下とか。イノセントスムージー、サイズは小さめだけど100%で旨味が濃い。そういった方向のものを置いた方が良いのかなと思います。

原田:ナチュラルローソンみたいになった方がいいってこと?

伊藤:そうです。

原田:ものすごく安いものを置くか、付加価値のあるものを置くのか? どちらがいいかと言えば、付加価値の高いものの方がという意見だね。

伊藤:あと、男子から想像した女子の気持ちは? という観点からも、パッケージが可愛いとは思えないので、例えば、デコレーションできるとか、キットカットの後ろのメッセージ欄なんかは、みなさん書き込んでインスタに上げられているんで、こういう発想のパッケージであればみんな購買衝動が芽生えるんじゃないかなって。

渡辺:コンビニすべてが、ナチュラルローソン的に向かっていったら、なんか物足りないなって感じるのではないかな?

原田:単価は圧倒的にナチュラルローソンの方が高いですよね。

渡辺:圧倒的に高いです。ナチュラルローソンが経営的に成り立った背景には、確実に健康や美容など意識高い系の客層を視野に入れたいという明確なビジョンがあったと思います。店仕入れを活発にし、各店の個性を持つべきという考えと同じですよね。東京のおしゃれエリアでお客さんの要望に応えたからこそナチュラルローソンは存在価値を発揮できたという事実も間違いなくあります。ただし、これは全国で通じるのでしょうか?  成功していったとみなさんが感じられているナチュラルローソンでさえも、近畿エリアでは撤退を余儀なくされ、首都圏でしか展開されていないというのも事実です。すべてがナチュラルローソン化してしまうということは、すべての人々の要望に応えていくコンビニとは異なる展開となってしまうと私は考えます。なので、エリアごとの客層ニーズに合った店舗に進化していくというカタチになると思います。

原田:おしゃれで高いものばかりが並んでいるコンビニでいいの? それとも、プライベートブランドのように価格が抑えめの商品か、付加価値商品か、半々のラインナップのコンビニが理想的なの?

一同:あ~、半々のラインナップ。それがいい!!

渡辺:理想はそうなんだね、やっぱり。両方の気持ちを満足させないとなんだね。ならば、コーナー作りは、まずは商品はカテゴリー別に分けられている従来の形通りで、そのカテゴリーの中で、お客さんが日用使いで安いもの、付加価値のある本格志向のものと選べる形が理想ですね。ただし、本当に様々なタイプのお客さんを満足させることは難しいというのも事実です。まずは学生が集まる立地にあるコンビニで実験実証する店舗を作りを検討していく必要があると、とても強く感じさせられる意見ですね。

相馬:あと、日用品がコンビニの価格帯は高いなと感じることがあります。「化粧落としを忘れちゃったな」とコンビニへ向かうと、1400円のメイク落としとかが置いてあるんです。こんな時、100均へ行けば良かったな~って思います。1日で使い切れる量で、見合った価格帯の商品をラインナップしていただきたいなと思います。

原田:日常使いの商品であれば、もっと簡易包装で価格を抑えるというのがあってもいいかもね。日用品に関してはおしゃれでなくてもいいと。

■「体感美味しい」の実現と「コスト高」の折り合いをどこでつけるのか?

相馬:そして、一番伝えたいのは、パンに関することですね。ビニール袋に入っていて棚に陳列されているのを見ても、美味しそうに感じることがないんです。でも、ナチュラルローソンだと包装されていないパンが、パン屋さんのように棚に陳列されていることがあって。それを見ると「美味しそうだな」と感じるので、他の店舗でも取り入れてほしいなと思います。もちろん、新型コロナの影響が去って本来の日常生活が戻ってきてからの願いですが。

渡辺:工場で作ったパンを冷凍して納品して、店内でひと手間かけて展開しているんだよね。美味しく感じでもらえるのは大切なこと。でもこのひと手間のコストと売上の費用対効果のバランス次第だね。

相馬:そこまでは知らなかったけど、雰囲気で美味しそうって買っちゃいますね。

原田:体感、美味しそう。が重要。

渡辺:だから、売り場の雰囲気とか、そういう面まで全部ひっくるめて、買うって衝動につながっていくということなんだよね。なので、各チェーンのコーポレートカラーには、明確な戦略があるんですよ。

一同:え~っ? 知りませんでした。そうなんですね。

■驚き! イヤホンとセルフレジの関連。そして汎用性が高いローソンレジの秘密とは?

相馬:最後のお願いは、セルフレジをもっと増やしてほしいということです。

原田:それはなぜ?

相馬:今、若者は大概イヤホンして街で歩いているんですけど、有人レジだと、イヤホン外してスタッフさんと会話しなくちゃいけないですよね。たまに、「外すの面倒くさいな」って思うことがあるんですよ。イヤホンしたまま無言でセルフレジで済ませた方が、自分のスタイルで買い物ができるんですけど。そんな空間があればいいなぁ、と思います。

渡辺:声もかけられたくない?

相馬:そうですね。「外では極力知らない人とは会話したくない」っていう私の性格からなのかもしれないですけど。

渡辺:みんなコンビニで声をかけられたくない?

一同:イヤです。

相馬:そういう意味で、もっと増やしてほしい機能だなと思います。

渡辺:おじいちゃん、おばあちゃんは、声かけてほしいらしいんですよ。

Column 渡辺広明氏著『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋

コンビニを高齢者の集会場にする

当然ながら、主力客となった高齢者を無視することはできません。 詳しくは後述しますが「宅配サービス」や「過疎地域への進出」など、すでに高齢者を意識した取り組みを開始しています。 買いやすい環境を用意することは、経済を活性化する1つの方法です。いまの高齢者が受け取る年金額は、新入社員の給与よりも高いというケースも少なくありません。それならば、高齢者でも購入しやすい環境を整え、消費を促すようなリズムを構築していくべきなのです。

コンビニの品揃えに関しても、今後は高齢者が好むものが増えていくでしょう。 その上で注意すべきは、ポスト高齢者の50代です。実はいまの60代と50代の間には 大きな隔たりがあります。いまの60代は、コンビニの品揃えに対して素直に感心してくれる人が多いのです。

しかし、いまの50代は違います。小売業の歴史でも説明しましたが、コンビニは 1980年代後半から若者とともに成長してきました。このときの若者がいまの50代なのです。長年、コンビニに親しんできた彼らはコンビニを見る目が肥えています。 知恵を絞っていかないと、満足してもらえない。これは大きな課題です。

一方、品揃え以外で重視すべきは接客です。しかも、これまでコンビニが苦手としてきた〝コミュニケーションを交えた接客〟です。 今後、セルフレジの導入が進めば、多くのお客様はそちらに流れていくでしょう。 しかし、最後まで有人レジに並ぶのは高齢者です。若者に比べてキャッシュレスに移行しづらいという理由もありますが、それ以上に彼らは会話を求めているのです。

単身高齢者が日常的に人と交流できる場所として、コンビニは最適なのです。老人会などの集まりが毎日あるわけではないし、仮にあったとしても、入っていけない孤独な高齢者も増えていくはずです。だからこそ、気軽に人と触れ合える場所をコンビニが提供するのです。高齢者の集会場の役目を果たすのです。そうなると、 イートインコーナーはコンビニの標準設備になるかもしれません。 集会場の提供は、高齢者のみのメリットではありません。これは、主力客を獲得するための集客戦術です。接客で多くの高齢者を呼び込むことができれば、販売拡大につながるのです。

相馬:そうですよね。スーパーとかで見ているとそうだなと思います。

渡辺:セルフレジはこれから増えてくると思うんで大丈夫だと思いますよ。実は、ローソンのレジは、お客さま側に向きを変えるとすべてセルフレジになるのです。

Column 渡辺広明氏著『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋

セルフレジの導入で、接客の価値を高める

この命題は、セルフレジの導入と相反するように思えるかもしれませんが、これは大きな間違いです。

コンビニに来るお客様は「淡々と会計してくれる事務的な接客を求めるタイプ」と「密なコミュニケーションを求めるタイプ」の2通りなのです。 前者のお客様は、セルフレジを導入すればそちらに流れる可能性が高い。しかし、 後者のお客様は、高い確率で有人レジに並びます。とくに、超高齢社会を迎えたことで、そうした接客を望む高齢者が増えていくはずです。そこで、セルフレジの導入によって生まれた時間的余裕を、より丁寧な接客を行う時間に充てるのです。

第4回へ続く

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