■若者にも魅力的な新しいコンビニのあり方とは? どんな方向へ?

本当に高齢者向けだけでいいの? 若者にも楽しいコンビニの方が、皆さんにとって魅力的じゃない?

もちろん、現状のコンビニのメイン客層は40~50代となっていて、高齢化社会に、寄り添った施策が人口動態とともに多くなっているのは、昨年末に発刊した、渡辺広明氏の最新作『コンビニが消えたなら』で述べてきた。でも…。

自身らも50代コンビである、著者:渡辺広明氏&編集担当者は、本書では書ききれなかった新たな命題、「以前は、何があるんだろうって、もっとドキドキワクワクしてコンビニ行ってなかった?」「今の若者感性の品揃えにも注力すれば、さらに魅力的になっていくのでは?」という仮説に気づいてしまったのです。

そこで、若者研究マーケティングアナリストの第一人者、原田曜平先生に対談をオファー。原田先生が率いる20代のインターン研究員5人も参加して、様々なアイデアを練ってみました。

昨年末に発刊した『コンビニが日本から消えたなら』を自ら否定するわけではありません。ただただ素直に、その先がどうしても見たくなってしまったのです。デジタル版でのスピンオフ企画で、この欲求を補完してみました。

最終回となる今回では、驚きの生な意見も飛び交い、白熱!!

■コンビニってどんな存在? スタッフさんのイメージは? バイトする場としては? 自分がオーナーだったらどうする? そして未来のコンビニは?

佐藤:何でも屋さん。メルカリの受け取りもできるようになって便利。小腹が空いたらコンビニ、イートインスペースができたから。行けばなんとかなるかなって。

原田:なんでも揃ってるという価値はギリギリ残ってるんだけど、他にもいい店がもっとできちゃってるから、そっちへ流れちゃうって感じか。ベースとなる品揃えはあって、付加価値のあるスイーツが出れば、それは買うけどと。

渡辺:イートインが、今そんなに充実しないんだよね。税率が変わっちゃったから。コロナで閉鎖もあるし。

一同:あ~っ。

渡辺:みんな、イートイン脱税してしまってない?

宮本:私、10%で食べてますよ。

一同:え~っ。

宮本:私、ちゃんとイートインするんでって言ってます。

渡辺:申告するの忘れてしまってるお客さま多いよね。個人的には、コンビニのイートインはお店で配膳とかしているわけではないので、軽減税率の8%で良いと思っています。

■レジに立ってる、あの40~50代の男性は?

佐藤:働いているスタッフさんのイメージは、高校生もしくは40代、50代の日本人と20代~30代の外国人。

原田:40代~50代の日本人て、男性それとも女性?

佐藤:男性ですね。

渡辺:きっと店舗のオーナーですよ。

佐藤:オーナーさんなんですか? ユニフォーム着ていたのでアルバイトの方かと思っていました。

相馬:えっ、あの人オーナーなんですか?

渡辺:はい。おそらくオーナーです。

一同:え~っ???

佐藤:本当に私たち世代の若者ってコンビニで働いていないなって。あと、コーヒーマシーンがあったり、配達機能があったり、いろんなこと覚えなきゃならないっていうのがキツいと思います。

渡辺:覚えなきゃいけないこと1200タスクくらいあります。

一同:え~っ!

佐藤:あと、Twitterで店員さんがお客さんに謝罪を迫られている映像を見たことがあって、働くの大変だなと思います。

原田:コンビニってどの業態より店舗数が多くて、悪い例っていうのもその数に比例して出てきちゃうから。誰もが行く店だから、ネガな要素が出回りやすくて、その分マイナスイメージが強くなっているって感じか。

渡辺:僕は月に1、2回コンビニのレジに入っているんですよ。年々機嫌の悪いお客さんが増えていってます。

一同:うえ~っ!

渡辺:お客様に対してスタッフというのは圧倒的に立場が弱いから、攻撃されないってわかっているから。

大人しそうな女性の中に時々感じの悪い方が潜んでいるパターンによく遭遇します。お支払い方法は? とお伺いした時、何の電子マネーか教えてくれない(汗)。

一同:アハハ

渡辺:男性の場合は、横柄そうな見かけの人がまんま横暴な場合が多い。僕は月に1、2 回しかレジに入らないから段取り悪いじゃないですか、すると日に何度も「チッ」て発せられる。心が折れそうになる瞬間が…。

佐藤:ですよね。だから働きたくないなって。

渡辺:でも、僕は自分の子供たちにコンビニで働かせたいよね。そういう世の中だって、現実を体感できるから。

■元アイドルのスタッフさんがいるコンビニも

佐藤:都内のスターバックスみたいに、スタッフをイケメン、美女にする。

原田:でも、20代、30代が働いてないイメージの所なのに、それ無理じゃない?

佐藤:それをなんとか頑張っていただいて。一度、ローソンにすごいイケメンスタッフがいたんですよ。

お客さん、みんなのテンションがすごく上がっていて。

渡辺:相模原にある、とあるローソンでは、元ご当地アイドルがスタッフとして夕方に入ってるんですよ。

一同:へ~っ。羨ましい。すごい!!

渡辺:アイドルのファンが買いに来るから、盛り上がっているらしい。

佐藤:そうなると、お客さんの人柄が良くなりますね。次に、健康を重視した品揃えにしてほしい。PARIYAっていう健康的なおかずを使ったお弁当ご存知ですか? 調味料に気を使ったお弁当を仕入れてみたり、パッケージはインスタ映えするランチボックス型にしたりと、こんな感じのお弁当を仕入れてみたりとか。そして、店内空間は白と黒を基調としたシックなムードにしたいと思います。

宮本:コンビニって、私にとっては、あって当たり前という存在です。コンビニならあの商品あるでしょ、という安心感。急に必要となったものが買える場所。

ATMを利用できる場所。コンビニが消えたらとても困ります。でも、積極的にこれが欲しいから行きたいという場所ではない。妥協点という場所。アルバイトする場所としては、外国人留学生、フリーターのおじさんと、というのはちょっと…。

原田:またまた、オーナーはフリーターだと思われているんだ。

宮本:ごめんなさい。そんなイメージが強くて、同学年の女の子とかがいないと働く気になれないのです。

原田:身の周りで、コンビニで働いている友達がいました。さて、みんなとしてはどんな印象なの?

宮本:大変だな、頑張ってるなって。

伊藤:他でやればいいのに。

原田:イケイケでバイトしているイメージがないんだ。

じゃあ、イケイケな可愛い子やイケメンがバイトしていたらどう思う?

宮本:なんでコンビニでバイトしてるんだろうって。

原田:う~む…。バイトのイメージアップがまずは急務かもしれませんね。

宮本:でも、よく俳優目指している人が働いてるって話も聞きます。

渡辺:夢を追いかけている人にとっては、うまくシフトを敷ければ、自分の時間を作ることもできる。だから、お笑い芸人目指している人とか、スポーツ選手とか、時々バイトしていますよね。あと高校生のファーストバイトとして、近所のコンビニでというケースは多いです。

原田:じゃあ、いけてない人が「私、コンビニでバイトしてます」って言ったら、どう思う?

一同:あ、そうかなって。

渡辺:ものすごい~。コンビニ、ディスられてるじゃないですか~(参った)。

一同:なるほどね~って思っちゃう。

原田:それこそ、セルフレジとか、省人化を進めて、その分の付加価値をイケメンや美女を雇うのに時給を上げるとかに投資すれば、道は開けるかもと。

渡辺:相模原の、とあるローソンの例のように、そういう動きあるかもしれない!!

宮本:意外と、本棚はいらないかなとも思います。

伊藤:『ジャンプ』の立ち読みに必要です。

内山:『Sho-Comi』が欲しいので必要です。

渡辺:それ、『ジャンプ』と『Sho-Comi』だけが欲しいという話ですよね…。

■夜中でもホッとする場所、コンビニは心の拠り所。だからコンビニは消えない

内山:私にとってコンビニの存在は、心の拠り所ですね。何か日常で困ったことがあればコンビニに行けば何とかなるかなって、安心感があります。あとは緊急事態の時、すごく頼りになります。夜中に熱を出した時に親がコンビニへ冷えピタを買いに行ってくれて、安心した思い出が…。夜中でも買いに行ける場所、人がいる場所がある環境はとても大事なので、あったかい空間だと感じますね。今回の新型コロナの状況下でも開けてくださっていて、本当に本当に感謝しています。

渡辺:いいこと言うな~(感心)。

内山:あと、未来のコンビニは、ほぼ外国人の方が店員になったり、セルフレジ、顔認証の無人コンビニ等も増えていくと思っています。

渡辺:外国人店員ばかりになるっていうのは、そうはならないですね。

内山:そうなんですか?

渡辺:外国人留学生に、コンビニでのアルバイトに関してヒアリングしてみると、「今後、経済が落ちていく日本で働くメリットを感じられない。今だけでしょう日本がいいのは。近い未来に誰も来なくなるよ、きっと」とささやき始めています。

一同:そうなんだ~(ため息)。

内山:個人的にコンビニでバイトすることは、自分にとってメリットがあると私は感じています。高校1年生の時、近所のサークルKサンクスでアルバイトをしていたんですけど、初めてのアルバイトとしては最適だと思いました。業務内容がルーティンで覚えやすいし、基本的な接客も学べる。もし自分がオーナーだったら、「行っても楽しい・働いても楽しい」をモットーにしますね。明るい空気感はもちろん大事ですし、何より人間関係、働いている側がコンビニって楽しいと思えば、スタッフによる接客も自然と良くなると思います。教育制度も高めていけば、お客さんに喜んでいただけると思います。あとは女性の味方になれるようなお店にします。ダイエットコーナーを設置し、カロリー抑えめコーナー、簡単レンチンコーナー、アメニティも豊富にしたい。無人レジも投入したいです。無人レジを多くしすぎると万引きが多くなりそうですが、お客さんにとっても、スタッフさんにとっても効率は上がるはず。そして、店員さんに見られたくない生理用品の購入等もストレスフリーになりますよね。24時間営業は近頃問題にもなっているけど、みんなの心の拠り所になると思うから、エリアで1軒輪番制でも良いので、開いていると安心するかなって。人がいるお店があるとホッとする人って多いと思います。

伊藤:コンビニは消えないと思います。未来のコンビニは省人化へ進むと思います。高層ビルの上階など、企業オフィスの中に出店するコンビニが増えてくると思います。住民向けだけでなく、企業で働く時間のない人にとって便利という道を切り開くのではないかなと思います。コンビニでのバイトは、叔父から単調だぞって言われていたので、考えたことはありませんでした。

渡辺:みなさん、よく観察しているし勉強されていますね。ただ、一つだけ異論を言わせてもらうと、コンビニの仕事は単調ではないよ。相当いろんなタイプのお客さんが来るから。怒られたり、感謝されたり。僕が今でも月に何度かレジに入っているというのは、商品開発の仕事に活かしたいという理由からなのです。日本のマーケットの縮図を見られるのがコンビニなのです。マーケティングを目指している若者は、コンビニのレジに立った方がいいと思うよ。世代も様々、嗜好も様々、いろんなタイプの人の気持ちを知ることができるから。

伊藤:自分がオーナーになるなら オフィス街で、店舗面積は小規模にして、女性に向けてプチスイーツ。男性に向けて飲料とお弁当とパンとタバコのみに絞ります。スタッフは陳列担当とレジ担当の2名のみ。レジはキャッシュレスにします。

Column 渡辺広明氏著 『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋

コンビニの未来は?「セルフレジの省人化コンビニ」から始まっていく

日本では、エキナカコンビニを展開するNewDaysが、2019年7月30日からJR武蔵境駅で「無人コンビニ」を営業しています。 同店は、amazon goのようなAIセンサーではなく、セルフレジが置かれた省人化コンビニです。慣れていない利用者のために、しばらくの期間は店員を2人常駐させるそうですが、将来的には店員1人のワンオペか無人化で運営することも期待できます。同店の規模は、従来ならば通常2人で回しているお店です。ワンオペ体制が実現すれば、2倍以上の生産性が期待できるのです。 ほかにも、2018年9月に路面店として国内初の無人コンビニ「ロボットマー ト」が東京都の日本橋にオープン。同店は、ロボットの販売などを行う株式会社ロボットセキュリティポリスが運営していて、店内には接客ロボットとセルフレジを配備しています。 一方、大手3社では、ローソンが実験的に0時から5時まで無人営業を行う店舗を運営し、ファミリーマートでも足立区の店舗で0時から6時まで無人営業の実験店舗をオープン。セブン-イレブンも顔認証などの実証実験を進める予定で、各社とも無人化の本格運営に向けて準備を進めています。

相馬:私はコンビニでバイトすることへの気持ちはプラスに向いています。その理由は、『コンビニ人間』『ニーチェ先生』と、コンビニを題材とした本や漫画を読んだ時に、「あっ、楽しそうだな」と思ったんです。

原田:『コンビニ人間』を読んでコンビニにポジのイメージを抱くかね? 人間関係に悩んでいる人が、コンビニバイトで機械的に生活すると生きやすい、という話だよね?

相馬:コンビニでの経験があれば、それらコンテンツをより楽しむことができるんじゃないかなと思います。

原田:コンテンツでもっとコンビニが取り上げられたら、若者のコンビニへの関心が高まっていく可能性はあるよね。刑事ドラマ、医療ドラマ張りに。

相馬:それ、すごくいいと思います。

渡辺:昔、さんまさんがトレンディドラマでコンビニの商品開発担当役を演じた時、商品開発を目指した人が増えたそうです。

原田:そして、若者向けの店舗を作っていき、コンビニではない新しい店舗ネーミングも考えてみるとイメージは変わっていくかもしれないですね。ウィスキーがハイボールになった途端、若者たちが手を出したように。紙タバコはおじさんのイメージがあるけど、加熱式タバコにはそれが少ないように。従来のコンビニは我々世代向けの店舗として。一方、新しい名称で、新しい感覚で選んだモノをジェネレーションZを中心とした若者世代に広めていくのは「あり」かもしれません。

■まとめをしましょう。コスパとインスタ映えなどの付加価値、両面のバランスが取れた新たな形態のコンビニができるといい!!

原田:アメリカのTrader Joe’sのイメージが若者にフィットするのかもしれませんね。プライベートブランドの割合がすごく多いから、コストが安いし、おしゃれで美味しい。あれを日本で真似できるかってのは難しいのかもしれないけど、コストとインスタ映えっていう付加価値という部分ですごくバランス取れていると思う。トートバッグも日本で高価格で売られているし(価格.comで550円~6790円)。みなさんが求めているのはそういうイメージなんだろうなって。高度なレベルでバランスが保たれているコンビニを欲しているのでしょう。もしくは、基本的にはプライベートブランドの比率をものすごく高めて、スイーツや健康志向の食品だけは多少高くてもインスタ映えしたり付加価値を付けてあげる。そんなイメージなのかなと…。今のコンビニは、店内の雰囲気、商品のパッケージにしても、若者向けのお店じゃなくなっちゃったんで、それはメーカーさんも含めてなんだけど、君らがインスタだったり、言の葉に載せるものが著しく少なくなってしまったというのが現状で、この点についてはともかく改善すべき。これって今の中年にとってマイナスとなることではないと思うんだよ。今の中年って気分は若い。人口ボリュームは少ないけど、ぜひとも若者基準でも商品開発、店舗開発がされるべきだと感じましたね。

渡辺:コンビニは、小売業としては世界最強だと私は思っています。都会での話が今回は多かったと思うんですけど、24時間、いつでも、どこでも、みたらし団子が食べられる国って世界で日本だけなんですよ。そして、弁当と呼ばれる中食の味のレベルがすごく高いんですよ。ただし、先ほどの外国人労働者のことだったり、社会の課題と向き合わなくてはという段階に来ているのも事実。コンビニでのサービスがどんどん増えていけばみなさん満足していくんだけど、やる方がこなせなくなっているという点に悩みがあるんです。ただし原田先生がおっしゃったように、シニア層が多くなっているんで、シニア向けの商品が多いんですよ。それで、若者っていう存在をコンビニは忘れてしまっているんですよね。元々は若者向けが強かったのに、今は若者だけ狙ってしまうと、彼らはコスパ意識も強いし、人口数も少ないし、そこを狙って開発しても勝てないとなっているんです。でも、若者向けを狙っても、上の世代の人たち嫌がらないであろうなと、今回の対談で私は感じたから、もう一度開発にトライしてみたいと思いました。

原田:若者の感性と渡辺さんの知識で、この座組みで、コンビニと一緒に組ませていただき、新しい形態の店舗開発の取り組みに参加させていただきたいですよね。

一同:やりたいです!! やりましょう!!

原田:人口的には、今の学生世代が減ってきているんだけど、そこがSNSをやっている最大多数になっているんで、拡散という面では最も機能しているのは事実だし、親子仲も良くなっていってる社会傾向があるので、親世代への波及効果が必ずあるはずです。

渡辺:確実にありますね。今回のSNSでのつぶやきが引き起こしたトイレットペーパー騒動なんて一番わかりやすい例で。実は若い子たちがSNSでトイレットペーパーがないっていうのはデマだよと、イチ早く真実を伝えていた。デマ騒動に振り回されて買い占めしてしまった人たちはシニア層で、SNSを普段見ていない人々がいきなり行動しちゃってたようです。これは負のスパイラルとして噴出したケースだから、これを機に反省して正のスパイラルに持っていきたいですね。

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