皆さんこんにちは! 茨城県でヨガのインストラクターの傍ら、新米猟師をしているNozomiです。前回は猟犬の種類や特性などについて綴らせて頂きましたね。
さっそくですが、貴方は狩猟を行う上で必要なものと言えば何を思い浮かべますか? 銃? 罠? 狩猟免許? ナイフ?
実は……車も重要です。大抵の猟場は山の中ですし、いろいろな荷物も運ぶ必要が出てきます。獲物が取れればそれを持ち帰るのにも使いますし、そもそも狩猟免許の試験会場が射撃場を兼ねた山奥の施設だったりします。グループ猟なら車載無線を使うこともありますし、何より猟期は冬。車の暖房が何よりもありがたいと思う事もあります。狩猟マンガの「山賊ダイアリー」でも、主人公はオートバイしか持ってないですが、狩猟のシーンでは大抵誰かの車に乗ってますし、初の獲物が穫れた時は狩猟仲間に車での救援を頼んでいます。ちなみに私の知り合いのおじぃちゃん罠猟師(80代)も、オートバイのみで活動しています。罠はオートバイについているカゴに入れて運んでいますが、どうやって80代のおじぃちゃんが大きな獲物を運んでいるのでしょうか? それは簡単です。長年の地域貢献と、持ち前の素晴らしいコミュニケーション能力で、獲物が捕れていた場合、電話一本で私達のような若い衆が駆け付けます(笑)
今でこそ、そんなスタイルのおじぃちゃんですが、ちょっと前までは獲物が取れた場合は、大きければ現場である程度捌いて運んだり、獲物が小さければオートバイに括り付けて運んでいたそうですよ。
さぁ、そんな『絶対に必要では無いけれど、狩猟をするならば、あったほうが便利で絶対に欲しくなる車』はどんなものが狩猟に向いているのでしょうか。分類別にするのが難しかったのですが、現役の先輩猟師さん約50名の意見を参考にしながら、いくつか例を上げて説明します。
【RV車・SUV車 】
RV:Recreational Vehicle(レクリエーショナル・ビークル=休暇・楽しみのための車)、SUV:Sports Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル=スポーツ用多目的車)の略で、定義としてはあまり厳密なくくりでは無いですが、ちょっと車高が高くて、後ろに予備のタイヤが付いてたりするアウトドア趣味向けの車の総称です。最近は大きくて高級な車種が多く出ていますが、これは「軽いアウトドア・レジャーも楽しめる」くらいのもので、自身の狩場にもよりますが、狭い山道や砂利道・泥道を走り回る狩猟にはあまり適さないことが多いです。猟場が広い場合や、普段乗りを重視して選ぶならアリだと思います。
<現役猟師さんが乗っている車>
トヨタ:ハイラックス、ハリアー、ランドクルーザープラド 三菱:デリカ、パジェロミニ スバル:フォレスターなど
【クロスカントリー 】
内容が被るのでRV車・SUV車の中に混ぜようと思ったのですが、あえて別でピックアップしました! Cross country という名前通り、道なき道を突っ切る為の車です。クロカンと略したりもします。高い車高に頑丈な車体、強靭な足回りを持っています。その分車内は少し狭い車種もあります。雪や泥にハマった時用に電動ウインチが付いている(後付できる)ものがありますが、これは大型の獲物の引き出しには最強級の武器になります。車のお尻にヒッチキャリア(物によっては違法になりますので注意……)という後付の荷台を取り付ければ、車内を汚さず獲物や荷物を運ぶことも出来ます。近年のキャンプ・アウトドアブームで人気が出ており、軽やコンパクトタイプのクロカンは射撃場などでも良く見かける車種の一つです。
<現役猟師さんが乗っている車>
トヨタ:ランドクルーザー スズキ:ジムニー 三菱:パジェロ ジープ:ラングラーなど
【軽バン・軽ワゴン 】
小さな車体に広い車内、4人乗り。そして何より価格が安い。山に入るとどうしても垂れた枝や跳ねた石で車体が傷だらけになります。いろんな道具を車内に置いて放置もできるので(銃はダメです)、普段遣いとしても結構便利に使えます。乗用のワゴンと商用のワゴンがありますが、内装や外装の違いだけでは基本構造は同じだったりします。近年の軽ワゴンはシートが完全フラットに倒せる車種もあるので、車中泊用としても人気があります。
<現役猟師さんが乗っている車>
スズキ:エブリイワゴン ホンダ:Nバン ダイハツ:ハイゼットカーゴなど
【軽トラック】
農家のマストアイテム、軽トラック。農道・山道どんとこい! 猟場でも一番見かけるのが軽トラです。獲物も荷台に載せられますし、何ならそのまま解体台としても使えます。猟犬もケージごと荷台に乗せられます。荷台がむき出して雨が気になると言う方は、荷台用のシートを取り付けるといいでしょう。
<現役猟師さんが乗っている車>
スズキ:キャリイトラック、スーパーキャリー ホンダ:アクティトラック
ダイハツ:ハイゼットジャンボ スバル:サンバートラックなど
【デッキバン・オープンデッキ 】
軽トラと軽バンのいいとこ取り。バンの4人乗りに、後ろの荷室部分だけトラックの荷台を付けたような外観です。荷物は車内に、獲物は荷台に、と器用に使うことが出来ます。軽トラだと大きめのカバン一つ車内に置いたら、実質一人乗りになっちゃいますからね……。問題はこの車種の車がほとんど無いので、選択肢がほぼなくなってしまう所。流通してる台数が少ないうえに猟師の間でも人気なので、中古でも結構なお値段がしたりします。
<現役猟師さんが乗っている車>
ダイハツ:ハイゼット デッキバン スバル:サンバーオープンデッキなど
【番外編 高級セダン・オートバイ】
猟場ではほとんど見かけないですが、射撃場となると急に多くなるのが高級セダンです。レクサスLSやベンツSクラスからロマンスグレーの素敵なおじさまが、トランクから気品のある革張りのガンケース取り出す光景を良く目にしますね! また、最初にも話しましたがオートバイの方も結構多いです。動きやすくて狭い道もすんなり入れるのがいいですよね。
<現役猟師さんが乗っているオートバイ>
ホンダ:ハンターカブ、クロスカブ、XR250、SL230など
ちなみに、私たちの車はエブリイワゴンとアクティトラック、師匠はランドクルーザーとアクティトラックです。また、車選びの際の4WDについてですが、これは自分の猟場との相談になります。ほとんど舗装された道路だけを走るのでしたら必要ありませんし、逆に未舗装の林道をガンガン上がっていったり、雪道を走る必要があるなら必須になります。私が行く猟場の一つは砂利道になっているんですが、一部土が露出している部分があり傾斜もそこそこある為、雨が降った翌日は4WDの軽トラでないと通れなくなってしまいますね……。
■終わりに。貴方の夢を乗せて走る狩猟車如何でしたでしょうか。今回は狩猟車について、現役猟師さんの話を参考にしながらまとめさせて頂きました。これから狩猟車を購入しようと悩んでいる貴方はもっと悩んでしまったはず。こういった道具選びの正解・不正解は他人が決める事ではありません。極論、他人から見て、げんなりするほど狩猟にそぐわない車種類を選んでしまったとしてもあなたが満足しているならばそれで良いのです。だってその車は、貴方だけの夢を乗せて走る車なのだから。
次回は猟友会について綴らせて頂こうと思います。