ここのところわが国の凋落を如実に示すようなニュースが相次いだ。杉田水脈の人権侵犯認定、エセ保守界隈の新党結成、デマ工作員「Dappi」の正体発覚。
■日本は依然として闇の中
2016年、杉田水脈がフェイスブックに「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさん」と写真付きで投稿した問題で、大阪法務局は人権侵犯と認定。すでに札幌法務局も投稿が人権侵犯だと認定していた。これが国会議員。杉田は「日本国の恥さらし」などとブログやフェイスブック、ツイッターに投稿していたが、「日本国の恥さらし」は杉田である。
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杉田は保育所の待機児童問題に関し、産経新聞のコラムでデマを流したりもしている。もっとも世の中には一定の割合で杉田のようなおかしな人物は存在する。それはそれで仕方がない。一番の問題は、このような人間を再び政界に呼び込み、「適材適所」などと言って擁護してきた異常な組織である。
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ジャーナリストの櫻井よしこは、ネット番組で、杉田についてこう語っている。
《安倍(晋三)さんがやっぱりね、「杉田さんは素晴らしい!」って言うので、萩生田(光一)さんが一生懸命になってお誘いして、もうちゃんと話をして、(杉田は)「自民党、このしっかりした政党から出たい」と》
杉田という最底辺のネトウヨレベルの人物を比例単独候補に押し込んだバカが、7年8カ月も総理大臣をやっていたのだから、国が傾くのも当然。
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杉田がどういう人物なのか明らかになっているのに、第2次岸田改造内閣で総務大臣政務官に。杉田を任命した責任を問われた岸田文雄は「任命責任については、この人事は適材適所ということであります」と答弁。最終的に杉田は辞任したが、これが自民党。
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札幌法務局で人権侵犯が認定された後、自民党は杉田を党環境部会長代理に充てる人事を決めた。いよいよ自民党は組織をあげて国民にケンカを売ってきた。
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この連載ですでに述べたが、ネトウヨライターの百田尚樹と、デタラメだらけの百田の“事故本”「日本国紀」を編集した有本香が「日本保守党」なる新党を立ち上げたとのこと。お下劣。北方領土の主権の放棄、急進的な移民政策、日米地位協定の維持……。戦後レジームからの決別を唱えながら戦後レジームを確定させ、アメリカ属国化を進め、財界や政商にひたすら媚び、統一教会などの反日カルトやジャパンライフなどの詐欺組織の広告塔だった安倍という究極の売国奴を礼讃してきたのがこの類の連中である。
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連中は日本の歴史を歪め、せこい愛国ビジネスにはげんできた。百田は結党宣言で「神話とともに成立し、以来およそ二千年、万世一系の天皇を中心に、一つの国として続いた例は世界のどこにもありません。これ自体が奇跡といえるでしょう」と述べていたが、万世一系に学術的根拠はない。
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安倍晋三や麻生太郎といった特定の政治家が有利になる情報を流してきた工作員「Dappi」の正体がついに明らかになった。IT関連企業「ワンズクエスト」社長の小林幸太である。「Dappi」が流した近畿財務局職員に関するデマについては裁判になっていたが、東京地裁は「(前略)被告小林の指示の下、被告会社の従業員あるいは被告小林によって行われたものと認めることができる」と認定。問題は誰が小林を動かしていたかである。
自民党は同社の主要な販売先のひとつだった。自民党東京都支部連合会からは「テープ起こし」などの名目で同社にカネが支払われている。「しんぶん赤旗」日曜版の取材により、自民党本部の事務方のトップである元宿仁が小林の親類であることは特定されているが、同社は岸田文雄や甘利明が代表取締役を務めていた自民党関連企業とも取引関係があった。
■三島は愛国心を嫌った
ネット上で、百田と三島由紀夫を並べて評価する変なおばさんもいたが、そもそも百田は三島をほとんど読んでいない。本人がそうツイートしている。
《三島由紀夫って、ほとんど読んでない^^;
面白いのがあっるなら、逆に教えてほしい》(2018年3月18日)
《なぜだか、三島由紀夫と太宰治は苦手です。
というツイートに対しては、百田は《私は4人とも苦手》と答えている。
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百田の対極にあるのが三島である。三島は愛国心を嫌った。
《実は私は「愛国心」という言葉があまり好きではない。何となく、「愛妻家」という言葉に似た、背中のゾッとするような感じをおぼえる。この、好かない、という意味は、一部の神経質な人たちが愛国心という言葉から感じる政治的アレルギーの症状とは、また少しちがっている。ただ何となく虫が好かず、そういう言葉には、できることならソッポを向いていたいのである》《愛国心の「愛」の字が私はきらいである。自分がのがれようもなく国の内部にいて、国の一員であるにもかかわらず、その国というものを向う側に対象に置いて、わざわざそれを愛するというのが、わざとらしくてきらいである》(「愛国心」)
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三島はご都合主義の「愛国者」を軽蔑した。三島は「低開発国の貧しい国の愛国心は、自国をむりやり世界の大国と信じ込みたがるところに生れるが、こういう劣等感から生れた不自然な自己過信は、個人でもよく見られる例だ。私は日本および日本人は、すでにそれを卒業していると考えている」(「日本への信条」)とも述べていたが、この部分に関しては見通しが甘かったようだ。
チープな愛国ビジネスにコロっと騙される連中は依然として少なくないのである。
(後編に続く)
文:適菜収