大阪は心斎橋にある「OSAKAMUSE」で8月30日、「村西とおるトークライブ第11回男塾祭~ありがとう、松ちゃん~」が開催、現在活動休止中の松本人志に多くの著名人がエールを送った。最初に登壇したのは「ありがとう、松ちゃん」応援委員会の発起人であるAV監督の村西とおる氏、続いてセクシー女優の「地面師たち」(Netflix)に出演中の美乃すずめさん、大阪出身でお笑い好きの吉高寧々さんの2人。
■松本人志に対する「名誉毀損は成立する」
村西:皆さんが知りたいのは、裁判の行方です。先生はどのような見解でしょうか。
徳永:書籍にも書きましたが、名誉毀損は成立すると考えています。報道した側は、当然「告白者を信じるにつきる相当な根拠がありました」という風に言うんだろうけれども、そもそも記事を読んでて「強制がどこにあんねん?」と違和感を感じましたね。
見出しは「強制的に、犯罪的な何かをやったんだ」という風に読める。記事を実際に読んでみると、ホテルに呼ばれてパーティーに参加して、そこに松本人志が現れた。ところがなぜかだか分からないけど、部屋では2人だけになってる。そこは問題ないよね。どんな経緯で2人だけになったのか、という状況が分からんから、みんな勝手に(想像で)補って読む訳なんだけど。「やらしてくれ」と言ってお願いしてるんでしょ。
松本人志は芸能界の中で権力を持った人間で、それにすり寄ったのか。これが松本が仕切っている番組にアシスタントで出ている関係で、お願いされて断れなかったと言うんだったらまだ想像で補えるけども、見る限りではどうやら初対面だ。何かを期待していたのかも書かれていないし、断ったらどうなるかも書いてない。
文春は評価しているところもあるんです。ジャニーズの報道でもよく頑張ったとも思っている。報道機関の使命感に基づいて、(事実を)公にして少しでも風通しの良い社会になったならば文春に「頑張って」と僕は言えるけれども、それがこの記事では見つからない。むしろ芸能人のプライバシーについて考るきっかけとして捉えるべきかなと僕は思ってる。裁判どうこう言う前に、この記事では社会的な問題提起にすらなってない。人権侵害。
村西:先生、もっと話してくださいよ。
徳永:人は「公」というものをそれぞれ持っていて、社会生活だって公の一つですよね。プライベートな内容を(報道という形で社会に)公開するなら、限られた場所で言ってくれよと。人に公開されたくない、嫌だなというものが必ずある。言論の自由を振りかざして、侵入できる領域がどこまでなのか。SNSでみんなが発信者になれる時代において、報道機関の方がルールを作り上げていかないと事故が山のように起きる。
その責任はまさに公の世界で発信し続けて、それを職業として訓練を受けている記者の方々の背中にかかっているんだ、と僕は思っています。
村西:先生、素晴らしいですね。(女性陣2人に向かって)寝室にご一緒したくなったでしょ。先生、どちらがお好みですか?
徳永:私はなんでも…そういうことを言うとね、また色々と書かれるから。
村西:分かりました。
徳永:あとでこっそりとお話ししたいと思います(笑)。この後、質問コーナーとなって来場者からいくつかの質問が相次いだ。
■1円でも賠償が認められれば勝ち
来場者:今後の裁判の行方にあたって勝ち負けの基準が分からない、それと、どうすれば(松本さんは)復帰できるのでしょうか。
徳永:何をもって勝ちと見るべきかですよね。5億5000万を請求しているわけですが、100万円認められたらどうなのか。訴訟費用で言えば5億分の100万だから随分と少ないですよね。でも、名誉毀損の裁判は賠償金の相場が50万から300万ぐらいなんです。
離婚の訴訟でもよくあるんだけどもね。相手が浮気してそれで結婚が破綻した、というような場合だって、せいぜい2、300万が相場です。でも「1億は請求してほしい」という場合は1億でやります。その場合印紙代で裁判所に3、40万納めなきゃいけないんだけども。
結局、1円でもとったら名誉毀損の裁判は勝ちなんです。真実でないということ、あるいは真実と信じる上で合理的な理由はないんだ、ということが認められたら、慰謝料が出てくるわけです。で、その金額が例え10万であろうが20万であろうが勝ちは勝。報道機関はそれが負け。
今回5億で請求してるけども、今の請求の仕方だったら、やっぱり2、300万が限度でしょうね。裁判官が踏み込んで判断しても、400万か500万。でも、それは覚悟の上でやってるはずです。名誉毀損の裁判は、被害の具体的な立証がなくても、名誉を毀損する発言があったという立証をして慰謝料を求める、という裁判なんですよ。
もちろん被害を立証できたら5億だって請求できる。本当はそういう裁判にして欲しかった、という気持ちは一人の法律家としてはあるんだけれども、物凄く時間が掛かる。それは担当弁護士が考えることで、僕らが言うことじゃないんです。
村西:今こちらに新聞社の方もいらっしゃっておりますけど、松本人志くんの件に関してはみんなでメディアスクラムを組んでですね、週刊文春の言った通りだと、彼を犯人扱いにして叩いたわけです。
第四の権力であるべき、私たちのよりどころであるべきメディアに対して、私たちはもっと憤らなきゃいけない。私たち民衆のパワー、私たちのそれぞれの声は最後の砦ですよ。この最後の砦に、先生にも、皆さんにもご参加いただいた。これがまかり通らなくなったらね、誰も立ち向かうことできない。権力と化した直木賞、芥川賞を主催してる文藝春秋はモンスターだからと。
私の友人に色々と物を書いてる文学青年がいます。彼にね、「今回の件で書いてくれ」と言ったら「勘弁してくれ」「週刊文春を発行する文藝春秋に嫌われたら商売成り立たない」と言われたんです。そんなのばっかりなんです。
今回のイベントに関してもね、二百数十社のメディアにお話をしました。でも「はい、分かりました」と来ていただいたのは、何社もない。この体たらくなの。
指原(莉乃)さんがね、この問題について何と言ったと思います?「松ちゃんの問題をうんぬんかんするのは、セカンドレイプだ」と。
言うべきことを言って、こういう場にわざわざ出てきた徳永先生なんか希少な存在なの。「勇気を持って言うべきだ」という、こういう野武士みたいな方が今の日本ではほとんど見当たらない。皆さんの良心、皆さんの勇気というものは私たちの最後の砦なんだと、私は訴えたい。
構成・撮影:加藤慶
後日公開のイベントレポート第2回はタレントの小原ブラスさんが登場。